2026年2月13日更新.2,749記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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薬が効かなくなるメカニズム―抗菌薬以外の薬でも耐性はできる?

薬が効かなくなるメカニズム―抗菌薬以外の薬でも耐性はできる?

「耐性」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは「耐性菌」ではないでしょうか。

・抗生物質が効かない菌
・MRSA
・薬が効かなくなる感染症

ニュースなどでもよく取り上げられています。

そのため、

「耐性=抗菌薬の問題」

というイメージを持っている人がほとんどです。

しかし実は、耐性は抗菌薬だけの話ではありません。
抗がん剤、抗ウイルス薬、ホルモン薬、鎮痛薬など、多くの薬で「効かなくなる現象」は起こります。

・なぜ薬は効かなくなるのか
・抗菌薬以外でも耐性はできるのか
・医療はどう対策しているのか

を、勉強していきます。

1.そもそも「耐性」とは何か?

まず、「耐性」という言葉を整理しましょう。

耐性とは、
→同じ薬を使い続けても、だんだん効かなくなる状態
のことです。

重要なのは、

❌ 薬が劣化した
❌ 体が弱くなった

のではなく、
→相手(菌・がん・ウイルス・体の仕組み)が変化した結果
だという点です。

つまり、耐性とは「生物の適応現象」なのです。

2.なぜ耐性菌がいちばん有名なのか?

耐性の中で、最も有名なのが「耐性菌」です。

理由は3つあります。

① 命に直結しやすい
感染症で抗菌薬が効かないと、
→直接、命に関わります。

そのため社会問題になりやすいのです。

② 目に見えないスピードで広がる
耐性菌は人から人へ広がります。

一人の問題が、社会全体の問題になります。

③ ニュースになりやすい
「新型耐性菌」「治療不能」など、インパクトが強く、報道されやすいのです。

その結果、
→「耐性=抗菌薬」
というイメージが定着しました。

3.耐性の基本原理はすべて同じ
実は、耐性菌も、がんも、ウイルスも、本質は同じ仕組みです。

共通する流れはこうです。

① 薬で多くの敵が死ぬ
② たまたま強い個体が残る
③ 残った個体が増える
④ 効かない集団になる

→これが耐性の正体です。

これは自然界の「進化」と同じ仕組みです。

生き残った者が増える。

ただそれだけなのです。

4.抗がん剤でも耐性は必ず問題になる

がん治療では、
「最初は効くが、途中で効かなくなる」
という現象が非常によく起こります。

これはまさに耐性です。

なぜがんは耐性を作りやすいのか?

理由は以下の通りです。

✔ 分裂が速い
✔ DNAエラーが多い
✔ 性質がばらばら

つまり、
→変化しやすい細胞の集団
なのです。

治療すると、弱い細胞が死に、強い細胞だけが残ります。

これが再発の正体です。

5.抗ウイルス薬でも耐性は起こる

ウイルスは、がん以上に変異しやすい存在です。

代表例:
・HIV
・インフルエンザ
・肝炎ウイルス

これらは、
→薬に強い型がすぐ生まれる
性質を持っています。

そのため、抗ウイルス治療では、

✔ 複数併用
✔ 飲み忘れ厳禁

が基本戦略になっています。

6.ホルモン薬・分子標的薬も例外ではない

乳がんや前立腺がんで使われるホルモン薬も、

最初はよく効きますが、数年後に効かなくなることがあります。

これを「ホルモン耐性」と呼びます。

分子標的薬も同様で、

→標的が変異すれば一気に無効

になります。

「ピンポイントで効く薬ほど、耐性に弱い」という側面があります。

7.鎮痛薬でも耐性はあるのか?

ここでよくある疑問です。

「痛み止めも効かなくなるの?」

答えは:
→種類によって違います。

● 麻薬性鎮痛薬(オピオイド)
これは明確に耐性ができます。
脳が慣れてしまうからです。

● 一般的な痛み止め(NSAIDsなど)
こちらは基本的に耐性はありません。
効かなくなる場合は、痛みが悪化しているだけです。

8.「耐性」と「病気の進行」は違う

ここは非常に重要です。

多くの人が、

「効かなくなった=耐性」

と考えますが、違う場合も多いのです。

例:

✔ がんが進んだ
✔ 炎症が悪化した
✔ 神経障害が進行した

これらは耐性ではありません。

→「病気が強くなっただけ」
です。

医師はこの見極めを慎重に行っています。

9.なぜ「中途半端な使用」が最悪なのか?

耐性を作る最大の原因は、

→不完全な治療

です。

代表例
❌ 抗菌薬を途中でやめる
❌ 飲み忘れが多い
❌ 自己判断で減らす

すると、

弱い敵だけ死ぬ

強い敵が残る

耐性完成

という最悪パターンになります。

これは抗菌薬だけでなく、
・抗がん薬
・抗ウイルス薬
・ホルモン薬

すべてに共通します。

10.医療は「耐性ありき」で進化してきた

現代医療は、耐性が出ることを前提に設計されています。

主な対策は:
① 併用療法
複数の薬で同時攻撃します。

② 切り替え治療
効かなくなったら別の薬へ。

③ 個別化医療
遺伝子検査で合う薬を選ぶ。

④ 新薬開発
耐性を突破する薬を作る。

すべて「耐性対策」です。

11.患者側ができる最大の耐性対策

実は、耐性対策の多くは、患者さんの行動にかかっています。

最重要ポイント
✔ 勝手にやめない
✔ 飲み忘れない
✔ 困ったら相談
✔ 自己調整しない

これだけで、耐性リスクは大きく下がります。

12.まとめ:耐性は「生き物の本能」

ここまでを整理すると、

✔ 耐性は抗菌薬だけではない
✔ がん・ウイルス・ホルモン薬でも起こる
✔ 進化の結果として生まれる
✔ 不完全な治療が最大の原因
✔ 医療は耐性前提で戦っている

ということになります。

おわりに:薬が悪いのではなく、生物が賢すぎる

薬が効かなくなると、

「薬が弱い」
「治療が失敗した」

と思われがちです。

しかし実際には、
→生物が生き残るために進化した結果
なのです。

耐性とは、生命のしぶとさの裏返しでもあります。

だからこそ、私たちは、
・正しく薬を使い
・医療者と相談し
・無理をしない
ことが大切なのです。

それが、未来の医療を守ることにもつながります。

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生息地:雪国
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