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薬が効かなくなるメカニズム―抗菌薬以外の薬でも耐性はできる?
公開. 更新. 投稿者: 45 ビュー. カテゴリ:癌/抗癌剤.この記事は約5分47秒で読めます.
目次
薬が効かなくなるメカニズム―抗菌薬以外の薬でも耐性はできる?

「耐性」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは「耐性菌」ではないでしょうか。
・抗生物質が効かない菌
・MRSA
・薬が効かなくなる感染症
ニュースなどでもよく取り上げられています。
そのため、
「耐性=抗菌薬の問題」
というイメージを持っている人がほとんどです。
しかし実は、耐性は抗菌薬だけの話ではありません。
抗がん剤、抗ウイルス薬、ホルモン薬、鎮痛薬など、多くの薬で「効かなくなる現象」は起こります。
・なぜ薬は効かなくなるのか
・抗菌薬以外でも耐性はできるのか
・医療はどう対策しているのか
を、勉強していきます。
1.そもそも「耐性」とは何か?
まず、「耐性」という言葉を整理しましょう。
耐性とは、
→同じ薬を使い続けても、だんだん効かなくなる状態
のことです。
重要なのは、
❌ 薬が劣化した
❌ 体が弱くなった
のではなく、
→相手(菌・がん・ウイルス・体の仕組み)が変化した結果
だという点です。
つまり、耐性とは「生物の適応現象」なのです。
2.なぜ耐性菌がいちばん有名なのか?
耐性の中で、最も有名なのが「耐性菌」です。
理由は3つあります。
① 命に直結しやすい
感染症で抗菌薬が効かないと、
→直接、命に関わります。
そのため社会問題になりやすいのです。
② 目に見えないスピードで広がる
耐性菌は人から人へ広がります。
一人の問題が、社会全体の問題になります。
③ ニュースになりやすい
「新型耐性菌」「治療不能」など、インパクトが強く、報道されやすいのです。
その結果、
→「耐性=抗菌薬」
というイメージが定着しました。
3.耐性の基本原理はすべて同じ
実は、耐性菌も、がんも、ウイルスも、本質は同じ仕組みです。
共通する流れはこうです。
① 薬で多くの敵が死ぬ
② たまたま強い個体が残る
③ 残った個体が増える
④ 効かない集団になる
→これが耐性の正体です。
これは自然界の「進化」と同じ仕組みです。
生き残った者が増える。
ただそれだけなのです。
4.抗がん剤でも耐性は必ず問題になる
がん治療では、
「最初は効くが、途中で効かなくなる」
という現象が非常によく起こります。
これはまさに耐性です。
なぜがんは耐性を作りやすいのか?
理由は以下の通りです。
✔ 分裂が速い
✔ DNAエラーが多い
✔ 性質がばらばら
つまり、
→変化しやすい細胞の集団
なのです。
治療すると、弱い細胞が死に、強い細胞だけが残ります。
これが再発の正体です。
5.抗ウイルス薬でも耐性は起こる
ウイルスは、がん以上に変異しやすい存在です。
代表例:
・HIV
・インフルエンザ
・肝炎ウイルス
これらは、
→薬に強い型がすぐ生まれる
性質を持っています。
そのため、抗ウイルス治療では、
✔ 複数併用
✔ 飲み忘れ厳禁
が基本戦略になっています。
6.ホルモン薬・分子標的薬も例外ではない
乳がんや前立腺がんで使われるホルモン薬も、
最初はよく効きますが、数年後に効かなくなることがあります。
これを「ホルモン耐性」と呼びます。
分子標的薬も同様で、
→標的が変異すれば一気に無効
になります。
「ピンポイントで効く薬ほど、耐性に弱い」という側面があります。
7.鎮痛薬でも耐性はあるのか?
ここでよくある疑問です。
「痛み止めも効かなくなるの?」
答えは:
→種類によって違います。
● 麻薬性鎮痛薬(オピオイド)
これは明確に耐性ができます。
脳が慣れてしまうからです。
● 一般的な痛み止め(NSAIDsなど)
こちらは基本的に耐性はありません。
効かなくなる場合は、痛みが悪化しているだけです。
8.「耐性」と「病気の進行」は違う
ここは非常に重要です。
多くの人が、
「効かなくなった=耐性」
と考えますが、違う場合も多いのです。
例:
✔ がんが進んだ
✔ 炎症が悪化した
✔ 神経障害が進行した
これらは耐性ではありません。
→「病気が強くなっただけ」
です。
医師はこの見極めを慎重に行っています。
9.なぜ「中途半端な使用」が最悪なのか?
耐性を作る最大の原因は、
→不完全な治療
です。
代表例
❌ 抗菌薬を途中でやめる
❌ 飲み忘れが多い
❌ 自己判断で減らす
すると、
弱い敵だけ死ぬ
↓
強い敵が残る
↓
耐性完成
という最悪パターンになります。
これは抗菌薬だけでなく、
・抗がん薬
・抗ウイルス薬
・ホルモン薬
すべてに共通します。
10.医療は「耐性ありき」で進化してきた
現代医療は、耐性が出ることを前提に設計されています。
主な対策は:
① 併用療法
複数の薬で同時攻撃します。
② 切り替え治療
効かなくなったら別の薬へ。
③ 個別化医療
遺伝子検査で合う薬を選ぶ。
④ 新薬開発
耐性を突破する薬を作る。
すべて「耐性対策」です。
11.患者側ができる最大の耐性対策
実は、耐性対策の多くは、患者さんの行動にかかっています。
最重要ポイント
✔ 勝手にやめない
✔ 飲み忘れない
✔ 困ったら相談
✔ 自己調整しない
これだけで、耐性リスクは大きく下がります。
12.まとめ:耐性は「生き物の本能」
ここまでを整理すると、
✔ 耐性は抗菌薬だけではない
✔ がん・ウイルス・ホルモン薬でも起こる
✔ 進化の結果として生まれる
✔ 不完全な治療が最大の原因
✔ 医療は耐性前提で戦っている
ということになります。
おわりに:薬が悪いのではなく、生物が賢すぎる
薬が効かなくなると、
「薬が弱い」
「治療が失敗した」
と思われがちです。
しかし実際には、
→生物が生き残るために進化した結果
なのです。
耐性とは、生命のしぶとさの裏返しでもあります。
だからこそ、私たちは、
・正しく薬を使い
・医療者と相談し
・無理をしない
ことが大切なのです。
それが、未来の医療を守ることにもつながります。




