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通院してるのに通院困難?
公開. 更新. 投稿者: 303 ビュー. カテゴリ:薬局業務/薬事関連法規.この記事は約8分42秒で読めます.
目次
通院困難とは?

薬局で在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導を算定するための条件の一つに、「通院が困難」というものがある。
「通院困難」と聞くと、寝たきりで病院にも薬局にも行けない患者をイメージする。
しかし、薬局の待合室を見渡してみると、
「この患者さん、一人で来るのは大変そうだな」
と思う患者は意外と多い。
杖をついてゆっくり歩いてくる患者。
娘さんに支えられながら来局する患者。
家族の車で送ってもらい、車椅子で入ってくる患者。
こうした患者は実際に「通院している」。
では、
通院しているのに「通院困難」として、薬剤師が在宅訪問することはできるのだろうか?
「通院困難」=「一度も通院できない」ではない
在宅患者訪問薬剤管理指導料について、厚生労働省は、
在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なもの
を対象としている。
そして重要なのが、その具体的な考え方である。
厚生労働省は、在宅患者訪問薬剤管理指導料について、継続的な訪問薬剤管理指導を必要としない患者や、通院可能な患者に安易に算定してはならないとしている。
そのうえで、算定できない例として、
少なくとも独歩で家族又は介助者等の助けを借りずに来局ができる者等
を挙げている。
つまり、
「薬局に来たことがある患者は在宅不可」
とは書かれていない。
むしろ、
一人で歩いて、誰の助けも借りずに容易に来局できる
という状態を、通院困難ではない患者の代表例として示している。
ここから考えると、「通院困難」は「絶対に外出できない」という意味ではないことがわかる。
通院しているのに通院困難?
たとえば80歳の患者がいる。
一人での外出は難しく、病院へ行く日は娘が仕事を休む。
娘の車で病院まで行き、駐車場からは車椅子。
診察が終わると、同じように薬局まで連れてきてもらう。
この患者は確かに「通院している」。
しかし、
「一人で問題なく通院できる患者」
とは言い難い。
家族の送迎と介助があるからこそ、何とか通院できているからである。
「実際に通院している」という事実だけで、「通院困難ではない」と判断するのは適切ではないだろう。
家族と来局していれば通院困難?
逆に、
家族と一緒に来局している=通院困難
でもない。
夫婦で病院へ行き、そのまま二人で薬局に来ている。
本人は普通に歩けるし、一人で買い物にも出かけている。
単に夫婦で一緒に行動しているだけであれば、家族同伴というだけで通院困難とはいえない。
つまり確認したいのは、
「家族と一緒に来たか」ではなく、「家族の助けがなければ来られないのか」
という点である。
「付き添い」と「介助」は似ているようで意味が違う。
「来局できるか」だけで判断するものでもない
では、杖を使えば一人で来局できる患者はどうだろう。
タクシーなら一人で病院へ行ける患者は?
100mなら歩けるが、1km先の薬局までは歩けない患者は?
このあたりになると、○×を簡単につけることは難しい。
厚生労働省も「○m歩けなければ通院困難」「要介護○以上なら通院困難」というような、一律の基準を示しているわけではない。
重要なのは、疾病や負傷などによって通院による療養が困難なのかを、患者ごとに判断することになる。
だからこそ、グレーゾーンが生じる。
「大変」と「困難」は違う
ここで注意したいのが、
「通院が大変」=「通院困難」
とは限らないことである。
「病院で1時間待って疲れた」
「薬局まで行くのが面倒」
「家まで薬を持ってきてもらえたら楽」
「車を運転するのが億劫になった」
という理由だけで在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定できるわけではない。
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、薬の配達料ではない。
厚生労働省も、
通院可能な患者に対して安易に算定してはならない
としている。
「薬局に行くより届けてもらった方が便利」という患者と、疾病・負傷などによって通院が困難な患者は分けて考える必要がある。
「通院困難」だけでも足りない
さらに重要なのは、
通院困難なら、誰でも在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定できるわけではない
ということだ。
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、定期的に薬剤師が訪問し、訪問薬剤管理指導を行ったことを評価するものである。
薬剤師は医師の指示に基づいて薬学的管理指導計画を策定し、患家を訪問して、
- 薬歴管理
- 服薬指導
- 服薬支援
- 服薬状況の確認
- 薬剤の保管状況の確認
などの薬学的管理指導を行い、その結果について医師へ必要な情報提供を行う。
したがって、
「歩くのが大変だから薬を届けてあげよう」
だけでは、在宅患者訪問薬剤管理指導とはいえない。
「通院困難」と「訪問の必要性」を分けて考える
在宅導入を考えるときは、2段階に分けるとわかりやすい。
① 通院困難なのか
まず、
患者が疾病・負傷等によって、一人で容易に通院・来局できる状態なのか
を確認する。
たとえば、
- 車椅子を使用している
- 歩行に介助が必要
- 一人で外出できない
- 家族の送迎がなければ受診できない
- 認知機能低下などにより単独での通院が難しい
といった事情が判断材料になる。
ただし、一つ該当すれば自動的に「通院困難」になるという意味ではなく、患者の状態を総合的に見る必要がある。
② 自宅で継続的に薬学的管理をする必要があるのか
次に、
薬剤師が患者宅を訪問する薬学的な必要性
を考える。
たとえば、
- 飲み忘れが多い
- 残薬が大量にある
- 一包化しても服薬管理できない
- 家族が毎回薬をセットしている
- 薬の保管状態に問題がある
- 多剤併用で服薬管理が複雑
- 自宅で実際の服薬状況を確認する必要がある
といった問題がある。
「通院困難」と「訪問薬剤管理の必要性」の両方が揃えば、薬剤師が訪問する意味がより明確になる。
医師から「訪問してください」と言われたら算定できる?
医師から、
「この患者さんは通院が大変なので、薬剤師さんに訪問してもらえませんか」
と依頼されることもある。
医師からの指示は在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するうえで重要な要件である。
しかし、
医師の指示がある=自動的に算定可能
ではない。
薬局側でも、患者が本当に通院困難なのか、継続的な訪問薬剤管理指導が必要なのかを確認する必要がある。
実際、厚生労働省の個別指導関係資料でも、通院が困難でない患者に対して在宅関係の点数を算定することは不適切な例として挙げられている。
「先生に頼まれたから大丈夫」ではなく、薬局側でも算定根拠を説明できるようにしておきたい。
薬局に来ている患者の中にも在宅候補はいる
ここまで考えると、普段薬局に来ている患者の見方も少し変わる。
たとえば、
「いつも娘さんに支えられて来ているな」
「家族が車椅子を押しているな」
「薬局に来るだけでかなり疲れているな」
という患者がいたとする。
その患者に、
「病院へ行くときも、ご家族の送迎が必要ですか?」
「お一人で外出することはできますか?」
「ご自宅ではお薬をどなたが管理していますか?」
などと聞いてみる。
すると、
「娘が仕事を休めないと病院にも行けない」
「一人では外に出られない」
「家では薬が余ってしまっている」
という状況がわかるかもしれない。
こうした患者は、現在薬局に来ているというだけで、在宅訪問の対象から除外する必要はない。
必要性があるなら、医師やケアマネジャーなどと相談し、訪問薬剤管理につなげることも考えられる。
医師は外来、薬剤師は在宅でもよい?
もう一つ疑問になるのが、
「通院困難なのに、どうして医師の診察には行けるの?」
という点である。
これも矛盾するとは限らない。
「通院困難」は「絶対に通院できない」という意味ではない。
家族が車で送迎し、車椅子で介助することで、月1回だけ何とか医療機関を受診している患者もいる。
そのような患者について、
医師:外来で本人を診察
薬剤師:自宅を訪問して継続的に服薬管理
という組み合わせもあり得る。
在宅患者訪問薬剤管理指導料の要件にも、指示を出す医師自身が訪問診療を行っていなければならない、という条件はない。
「医師が訪問診療をしていないから薬剤師も訪問できない」というわけではないのである。
居宅療養管理指導でも「通院困難」
要介護・要支援者について介護保険で行う薬局薬剤師の居宅療養管理指導でも、基本的な考え方は同じである。
算定基準には、
「在宅の利用者であって通院が困難なもの」
と規定されている。
そして医師または歯科医師の指示に基づいて薬学的管理指導計画を策定し、患者宅を訪問して薬学的管理指導を行う。
したがって、
医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導
介護保険の居宅療養管理指導
のどちらについても、「通院困難」は重要なキーワードになる。
通院困難をどう記録する?
グレーゾーンの患者ほど、薬歴等に「なぜ通院困難と判断したのか」を具体的に残しておいた方がよい。
たとえば、
「高齢のため通院困難」
だけでは、第三者には患者の状況がよくわからない。
それよりも、
下肢筋力低下により単独での屋外歩行が困難。外来受診時には長女による自家用車での送迎および車椅子介助を要する。服薬忘れと残薬が認められ、自宅での継続的な服薬状況確認および服薬支援が必要。
などとすれば、
なぜ通院困難なのか
と、
なぜ薬剤師が訪問する必要があるのか
がわかる。
在宅訪問を「薬の配達」にしないためにも、この2点を意識しておきたい。
「通院している」だけでは判断できない
「通院困難」という言葉から、
病院にも薬局にもまったく行けない人
を想像してしまう。
しかし、実際にはそう単純ではない。
家族の送迎がなければ通院できない人もいる。
介助されながら何とか薬局まで来ている人もいる。
一方、家族と来局していても、一人で問題なく外出できる人もいる。
だから、
「来局したことがあるから×」でもなければ、「家族が付き添っているから○」でもない。
重要なのは、
「この患者は、家族や介助者の助けなしに容易に通院・来局できるのか?」
そして、
「薬剤師が自宅を訪問して継続的に薬学的管理を行う必要があるのか?」
という視点である。
薬局の窓口には、「通院しているけれど、実は通院困難」という患者がいるのかもしれない。
在宅患者を探すというよりも、普段の投薬時に、
「この患者さん、ここまで来るのは大変ではないだろうか?」
と考えることが、必要な在宅医療につなげる最初のきっかけになるのではないだろうか。



