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「かもしれない調剤」と「だろう調剤」
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約3分2秒で読めます.
4,739 ビュー. カテゴリ:「かもしれない運転」と「だろう運転」
「かもしれない運転」と「だろう運転」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
運転免許の更新時の講習などで聞いたことがあるかもしれない。
交通事故を防止するための心構えに関する用語である。
「かもしれない運転」とは、例えば歩道に子供や高齢者がいたら、「横断するかもしれない」、「飛び出すかもしれない」と危険を予測しながら運転することで、万が一、飛び出し等があっても、すぐに適切な運転操作をすることができ交通事故を未然に防止することができるような運転のことである。
反対に「だろう運転」とは、「横断しないだろう」、「大丈夫だろう」と自分に都合が良いように予測をして運転する、交通事故につながるような運転のことである。
これらの安全運転に関する心構えは、調剤にも当てはまると思いながら講習を聞いている。
・運転に慣れてくると、いつの間にか「だろう運転」に変わってしまいます。
・常に「見えないところに危険が潜んでいるかもしれない」という気持ちを持って、慎重な運転をすることが必要です。
・自己の運転を過信せず、速度超過や無理な追越しなどをしない。
・疲れると注意力が散漫になり、その影響は目に最も強く現れてきます。
調剤事故というか、あらゆる仕事上のミスにも共通すること。
普段、以下のような楽観的な考えで調剤をしていないだろうか?
「医師は処方を間違えないだろう」
「患者は言われた通り薬を飲んでるだろう」
「疑義照会しなくても問題ないだろう」
「ジェネリックに変えても問題ないだろう」
「併用禁忌は出てないだろう」
「大丈夫だろう」ではなく、「ダメかもしれない」という、ある意味ネガティブなほうが、危機回避ができる。
「薬が間違ってるかもしれない」
「処方が間違ってるかもしれない」
「用法が間違ってるかもしれない」
「規格が間違ってるかもしれない」
「事務が入力ミスしているかもしれない」
「薬の期限が切れているかもしれない」
「違う薬が混ざっているかもしれない」
「処方箋の期限が切れているかもしれない」
「処方日数が間違ってるかもしれない」
様々な「かもしれない」というリスクを考えると、調剤事故やミスを未然に防止することができるようになる。
また、
「患者は薬を飲んでいないかもしれない」
「副作用が出てるのかもしれない」
「他にも薬を飲んでるかもしれない」
といったことを考えながら、投薬に臨むことで、目的を持った患者聴取ができる。
調剤過誤の法的責任
調剤過誤の際、薬剤師や薬局が負う法的責任は不法行為責任(民法709条)と言い、この発生要件は、①権利侵害、②過失又は故意、③因果関係、④損害、であり、この要件がすべてそろって損害賠償請求権が発生する。
調剤過誤を犯しても、間違った薬を服用せず、健康被害が発生しなければ、法的な損害は無いため、損害賠償請求権は発生しないことになる。
このほか、薬局は患者に対し契約責任(民法415条)も負っていますが、この責任においても損害がなければ損害賠償義務は発生せず、同様に金銭の支払い義務などはないことになる。
患者が服用したが健康被害がなかった場合
患者が薬を服用してしまったが、健康被害がない場合。
この場合も、基本的には、健康被害がないので損害がないという前提で、同様の対応をしていくことになる。
ただし、間違った薬を服用してしまっている以上、患者の適切な医療を受ける権利を害したとも考えられますので、服用していない場合よりは慎重な対応が必要になると考えられる。
仮に、健康被害の有無の確認のために受診などをすれば、その費用や交通費は薬局が負担することになる。
自覚症状を訴えている場合
患者が自覚症状として、「体がだるくなった」など抽象的な症状を訴えている場合には、言われるがままに対応するのではなく、本当にそれが誤投薬との因果関係があるのかを判断する必要がある。
そのためには、受診をしてもらい、医師の判断を待って因果関係の有無を判断する必要があると考えられる。
金銭的な支払いをするにあたっては、言われるがままに支払うのではなく診断書や領収書など客観的な資料の提出を受けて、支払いの有無を判断していくという意識が重要になる。
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