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キス病にペニシリンは禁忌?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約2分28秒で読めます.
3,033 ビュー. カテゴリ:キス病
キス病という名前を聞いたことがあるだろうか。
キスでうつる感染症。
伝染性単核球症、またはEBウイルス感染症とも言う。
EBウイルスの正式名称は、エプスタイン・バール・ウイルス。
EBウイルスは唾液に生息するため、唾液を介さない行為では感染しない。
つまりキスで感染する。思春期以降は唾液を介するディープキスによって伝染することがほとんどのためキス病と言われる。
感染する年齢によって症状の現れ方が異なり、乳幼児期では不顕性感染(病原菌に感染しても症状が現れない)が多く、思春期以降では感染者の約半数に症状がみられる。
伝染性単核球症
伝染性単核球症は、思春期から若年青年層に好発する。
主にエプスタイン・バーウイルス(EBV)の初感染による急性熱性疾患である。
EBVはヒトヘルペスウイルス科γ亜科に属するウイルスである。
ヘルペスウイルスの性質上、ひとたび宿主に感染すると一生潜伏し、免疫抑制状態下で再活性化する性質を有する。
国内では、乳幼児期に70~90%がEBVに初感染しているが、ほとんどが不顕性感染であり、発症しても非定型であるとされる。
主な感染経路はEBVを含む唾液を介した感染である。
EBVの既感染者の15~20%は唾液中にウイルスを排泄しており、感染源となり得る。
思春期以降にEBVに感染した場合に伝染性単核球症を発症することが多く、「キス病」とも呼ばれる。
4~6週間の長い潜伏期を経て、臨床症状は発熱、咽頭熱、頸部リンパ節腫脹を3主徴とし、その他に全身倦怠感、発疹、肝腫、脾腫などを示す。
血液検査では異型リンパ球の出現、肝機能障害の有無、EBVに対する抗体価などにより診断される。
発熱は高頻度に認められ、38℃以上の高熱が1~2週間、倦怠感は数か月持続することがある。
脾腫は他の臨床症状が軽快した後もしばらく続くとされ、2~3か月は安静が必要で、本格的な運動開始は6か月後が望ましいともいわれる。
EBウイルス感染症とアミノペニシリン
サワシリンの添付文書の禁忌に、
伝染性単核症の患者[発疹の発現頻度を高めるおそれがある。]
と書かれている。
サワシリンはキス病に禁忌である。
同様に、アモリン、オーグメンチン、クラバモックス、パセトシン、ビクシリン、ペングッド、ユナシンなどでも禁忌となっている。
つまりペニシリン系で禁忌なのです。
でもバイシリンGでは禁忌ではない。
キス病に禁忌なのは、ペニシリン系の中でも「アミノペニシリン」というグループに属する薬剤です。
バイシリンGはベンジルペニシリンというグループに属する。
アミノペニシリンに属するのが、アンピシリンやアモキシシリン。
ちなみに、ランサップやボノピオンなどのピロリ菌の除菌薬にもアモキシシリンが含まれているので、キス病には禁忌です。
でも、キス病にバイシリンGやセフェム系なら安心して使えるのかというと、似たような系統なので、避けるべきである。
しかし、キス病かどうかの鑑別診断というのは難しいので、そもそも論から言えば、安易な抗生物質の使用は避けるべきである。
ペニシリン系を飲んで薬疹が出たという人は、ただの風邪ではなく、キス病だったのかも知れない。
その場合、ペニシリンによる薬疹ではないので、服用可能かも知れないが、代替薬はあるので、あえて危険なトライはしない。
サワシリンカプセル250㎎ 8カプセル
1日4回毎食後と寝る前 7日分
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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