2024年4月19日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ラジレスは使いにくい?

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ラジレスは糖尿病に禁忌?

ラジレスの処方をあまり見かけない。
一包化できないというのもあるが、錠剤は大きいし、ARBなどと併用しづらいのもある。

ノバルティスファーマは2月22日、同社の高血圧治療薬ラジレスについて欧州医薬品委員会(CHMP)からの指示を受け、添付文書を改訂すると発表した。CHMPが同剤および同剤の配合剤のリスクベネフィットに関する再調査を実施した結果によるもので、糖尿病患者および、または中等症から重症の腎機能障害を合併した患者で、ラジレスまたは同剤の配合剤とACE阻害剤またはARBとの併用を禁忌とするよう指示したもの。米FDAを含む各国の保健当局と協議を始めており、日本でも現在PMDAと協議中という。

添付文書の改訂の対象となる製品は、ラジレス、Sprimeo、Riprazo、Rasilez HCT、Sprimeo HCT、Riprazo HCT、Rasilamlo(ラジレスとアムロジピンの配合剤)、Rasitrio(ラジレス、アムロジピンとヒドロクロロチアジド〔HCT〕の配合剤)。

これは、ノバルティスが実施したALTITUDE試験の中間解析結果を受け、11年12月にノバルティスが試験中止を決定後、CHMPとの集中協議にもとづき改訂を決定したもの。CHMPのデータモニタリング委員会(DMC)による中間解析審査で、同試験に参加した患者で、ラジレスによる治療がベネフィットをもたらす可能性は低く、また同試験の対象となったハイリスク患者では、非致死性脳卒中、腎合併症、高カリウム血症、低血圧の発現頻度が高かったと結論づけられたことから、同試験の早期中止を決定。これをうけて、11年12月からCHMPによる同剤のリスクベネフィットに関する再調査が開始されていた。

これを受け、ノバルティスは11年12月から全世界の医師に向けて、2型糖尿病患者でラジレスをまたは同剤含有製剤とACE阻害剤またはARBを併用しないよう、書面で注意喚起を行ってきたという。なお、今回の改訂で、CHMPはラジレスまたはラジレスの配合剤とACE阻害剤またはARBの併用について、添付文書上で注意喚起を行う指示を受けたとしている。

ノバルティスの高血圧治療薬ラジレス 欧州で添付文書改訂へ 日本はPMDAと協議中 国内ニュース ニュース ミクスOnline

日本の添付文書では、重要な基本的注意のところに、

「レニン-アンジオテンシン系阻害剤併用時、腎機能障害及び糖尿病の患者、高齢者等では血清カリウム値が高くなりやすく、高カリウム血症が発現又は増悪するおそれがあるので、血清カリウム値に注意すること。」

と書いてありますね。

ラジレスってどのくらい処方されてるのかな。

糖尿病に禁忌ってなると使いにくそう。

ラジレスと糖尿病患者

2型糖尿病患者は心血管イベントの発症リスクも高いことが知られている。

心血管イベント発症リスク低減のためにRA系阻害薬アリスキレンの投与試験が行われたが、ACE阻害薬またはARBを投与中の糖尿病患者に投与すると高カリウム血症、低血圧、腎障害などの有害事象が多く報告された。
そのため、すでにACE阻害薬またはARBを投与中の糖尿病患者(ただしこれらを投与しても血圧コントロールが著しく不良な患者を除く)へのアリスキレンの併用は禁忌になっている。

ラジレスとARBは併用禁忌?

ラジレスとARBが併用されていると、レセコンで警告のメッセージが表示される。

 厚生労働省はノバルティスファーマの高血圧症治療「ラジレス」(一般名:アリスキレンフマル酸塩)について、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を投与中の糖尿病患者を「禁忌」とする添付文書の改訂を通知した。

 腎機能障害を伴う2型糖尿病患者を対象とした国際共同臨床試験「ALTITUDE」の中間解析で、有害事象の発現頻度が高まる結果が出たことを受けたもので、欧州では2月に同様の措置が講じている。

 厚労省は専門委員の意見も踏まえて添付文書を改訂する必要があると判断した。ただし、ACE阻害剤やARBを含む他の降圧治療で血圧コントロールが著しく不良な患者は禁忌から除く。また、腎機能障害のある患者への投与に対する注意も「重要な基本的注意」に追記する。

【厚労省】ACE阻害剤・ARB投与の糖尿病患者、ラジレス禁忌に設定 薬事日報ウェブサイト

糖尿病患者は腎機能低下しやすいから禁忌。

「ただし、ACE阻害剤やARBを含む他の降圧治療で血圧コントロールが著しく不良な患者は禁忌から除く。」

そもそも第一選択で使われているのかな。
処方自体あまり見たことないんで。

こういう文言が入っていると、結局医師の判断になるわけで、禁忌とは言えず、原則禁忌なわけで、薬剤師が何を言っても医師に押し切られます。

ラジムロ

ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:二之宮 義泰)は、3月24日に製造販売承認を取得した高血圧治療薬「ラジムロ®配合錠LD」(アリスキレン/アムロジピンとして150mg/2.5mg)、および「ラジムロ®配合錠HD」(アリスキレン/アムロジピンとして150mg/5mg)(以下、「ラジムロ配合錠」)の発売を取り止めることを決定いたしました。

これは、「ラジムロ配合錠」については一定の医療ニーズはあるものの、近年、配合成分であるアリスキレン(日本での販売名:「ラジレス®錠150mg」)の世界的な処方量減少に伴い、「ラジムロ配合錠」の世界的な処方量においても当初の予定に届かず、今後も期待できない状況であることや、本剤は配合剤であるため、代替えとして単剤の併用療法が存在することなどを総合的に考慮した結果に基づくものです。

なお、日本における「ラジレス」の供給は、今後も確実に継続してまいります。

「ラジムロ配合錠LD」および「ラジムロ配合錠HD」の発売取り止めについて:ノバルティス ファーマ株式会社

ラジレスとアムロジピンの配合錠。
販売する予定だったことも知らなかった。

そもそもラジレスの処方が少ないから、配合錠出しても売れないと。
賢明な判断かな。

レニンアンジオテンシン系

レニン・アンジオテンシン系(RAS)はおもに血圧の調節や電解質バランスの維持に関わっています。

RASの中でも一番の悪者とされるのが、血圧上昇に関わっているアンジオテンシンⅡと呼ばれるペプチドです。アミノ酸が8個くっついています。これができるとアンジオテンシンⅡの受容体にくっつき、血管を収縮させたり、水・ナトリウム(Na) を再吸収したりして血圧を上昇させます。

一方、レニンは腎臓の傍糸球体細胞から分泌される酵素で、アンジオテンシンⅡがつくられる過程で重要な役割を果たしています。
アンジオテンシンⅡをつくるおおもとは、肝臓で産生されるアンジオテンシノーゲンというタンパク質です。
アンジオテンシノーゲンはレニンによってアンジオテンシンIというペプチドに切断され、さらに全身に存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE) などによりアミノ酸が二つはずれて、アンジオテンシンⅡになります。

レニンがなぜ重要かというと、アンジオテンシンⅡの産生量を規定する因子であると考えられているからです。
アンジオテンシノーゲンは肝臓の中で大量につくられますが、この中の1000個に1個か2個がアンジオテンシンIになり、それがそのままアンジオテンシンⅡになるといわれています。
ですから、レニンが少し頑張ると1000個のうち10個も20個もアンジオテンシンⅡができてしまいます。
したがって、血液中のアンジオテンシンⅡの産生量を規定する律速因子としては、レニンが最も重要と考えられています。

アンジオテンシンは悪者か?

RASで悪さをするアンジオテンシンⅡが増えすぎると困るので、体内にはその量を制御する調節機構があります。なかでも一番強力なのが、アンジオテンシンⅡが増えて受容体にくっつくとレニンの産生か減るようになっていることです。
これをネガティブフィードバック機構といいます。
アンジオテンシンⅡが増えるとネガティブフィードバック機構がかかり、レニンが減ってアンジオテンシンⅡも減ります。

このようにして、アンジオテンシンⅡの量は体内で厳密にコントロールされています。
なぜそれほど厳密にコントロールされているのでしょう。
そもそも生物は進化する過程で、海水から淡水へ、淡水から陸上へと上がってきました。
陸上生活で塩の摂取が困難な環境になったとき、体の根幹となる塩(Na) をいかに体内に保持するかが問題で、そのためにできあがったシステムがRASです。
現代でも、アマゾン川流域に住む原住民のヤノマミ族は1日の塩分摂収量が1g以下と極端に少ないことが知られています。彼らはRASが非常に活性化されていて、アンジオテンシンⅡも血液中に大量にあります。
RASはもともと、少ない塩を有効利用するために獲得した、人間にとってとても重要なシステムだったのです。
RASが厳密にコントロールされているのも、そのためと考えられます。
ところが、現代人ではRASはすっかり悪者になってしまいました。
塩分過多、カロリー過多の現代人に、実はRASはあまり必要のないシステムなのです。
RASには、塩を摂るとレニンの量が減って、アンジオテンシンⅡも減るという訓節機構もあり、それで塩
分とRASのバランスがとれていました。
ところが、現代人は塩の摂りすぎによって、これ以上レニンが下がらないというレベルになってもアンジオテンシンⅡがつくられてしまうという状態になっています。
さらに、塩を摂りすぎるとRASの調節機構が壊れてしまい、RASが不活性化されなくなることもわかってきました。

例えば、若い高校生が運動して汗を大量にかくと塩分が体から抜けます。
このときRASが活性化されて血管を収縮したり、塩分が体から出ていかないように調節したりするので、脱水で倒れ
なくて済みます。
ところが、私たちが診ている患者さんは暴飲暴食の結果、病気になっている人が多いです。
そうした生活習慣をずっと変えずに来た結果、RASの訓節機構が壊れてしまっていると考えられます。
本来ならば悪い生活習慣を修正すればよいのですが、私たちは塩分をたくさん摂る生活や、おいしいものを食べる生活からなかなか抜け出せません。
そうであるならばRASの活性化を薬で抑える必要があるというのが、RAS阻害薬の一番の狙いです。

RASはこれまで、循環血液中の調節機構と考えられていました。
ところが、近年の基礎研究で、脳、心臓、腎臓などの臓器の中にもRASがあり、それぞれ別々に制御されていることがわかってきました。
循環血液中の全身循環系RASに対して、これを組織局所系RASといいます。
組織局所系RASでは、それぞれの臓器の組織や細胞レベルでアンジオテンシンⅡの発現調節が行われ、その局所で産生されたアンジオテンシンⅡが、高血圧、糖尿病、肥満などさまざまな病態下における臓器障害に関与していることが明らかになっています。
したがって、RAS阻害薬は全身循環系RASを阻害するばかりでなく、組織局所系RASも阻害すると考えられます。
RAS阻害薬に臓器保護作用が期待できるのは、このためなのです。

組織局所RASについてはまだ詳しいメカニズムはわかっていませんが、いろいろな臓器障害が起こっている患者さんでは、その臓器の中のRASが活性化されていることがわかっています。
例えば、心筋梗塞が起こると心臓に血液が流れなくなりますが、そうすると心臓のRASが活性化され、それが心臓を悪くする原因になっている、あるいは少なくとも一部は悪化に関与しているのではないかといわれているのです。動物実験ではそのことがすでに証明されています。
組織局所系RASは、全身循環系RASとは調節機構などのメカニズムも異なります。

全身循環系RASは塩分を摂取するとレニンが減ってアンジオテンシンⅡも減りますが、組織局所系RASでは必ずしもそうでないケースがあります。
また、全身循環系RASではレニンが律速因子でしたが、臓器の中ではそうとは限りません。
研究では、腎臓ではアンジオテンシノーゲンが律速囚子と考えられます。

レニンは腎臓でつくられますから、腎臓の中にはレニンがたくさんあります。
一方、アンジオテンシノーゲンは肝臓で産生され、腎臓の中にはなかなか入っていきません。ところが、糖尿病の状態になると腎臓でアンジオテンシノーゲンが大量につくられ、もともとたくさんあったレニンと一緒になってアンジオテンシンⅡが大量にできると考えられます。

組織局所系RASの研究が進む巾で、RAS阻害薬が心臓病や腎臓病の発症を抑制する予防薬としても有効な可能性が示唆されています。
多くの大規模臨床試験で、血圧は高くないが心臓が悪い患者さんにRAS阻害薬を投与すると、心臓の過剰なRAS活性が抑えられ、心不全の発症予防や予後改善に有効なことが証明されています。
最近はそこから一歩進んで、あらかじめ心臓や腎臓が悪くならないように、RAS阻害薬を予防薬として投与しようという考え方も出てきました。
例えば、「臓器連関」という言葉がありますが、心臓が悪いと腎臓も悪くなるという患者さんはたくさんいます。
心臓だけ、腎臓だけ悪い患者さんよりも、両方悪い患者さんのほうがはるかに治療は難しいのです。
さらに「脳心腎・代謝連関」といって、糖尿病や高脂血症の人は心臓と腎臓と脳血管が同じように悪くなることがよくあります。
その場合も治療が厄介です。
そういう患者さんに対して、早めに予防を兼ねて治療を開始すれば、いずれ悪くなるかもしれない臓器を守ることができます。

今までは心臓が悪いと心臓をよくする目的でRAS阻害薬を投与していました。
今後はさらにその先を見据えて、腎臓や脳を守るためにRAS阻害薬を投与することを考える時代になってくるでしょう。
脳を守るということでは、RAS阻害薬はアルツハイマー病にも有効性が期待されています。
動物実験で、アルツハイマーモデルのマウスにRAS阻害薬を投与するとアルツハイマーが改善したこと、米国の保険会社の疫学調査で、RAS阻害薬を服用している高血圧の患者さんはアルツハイマー病になっている人が有意に少ないことが根拠になっています。
アルツハイマー病になるリスクが高いのは糖尿病、喫煙、肥満などです。
今後はそういう人が高血圧になったとき、RAS阻害薬が第一選択薬になっていくかもしれません。
現在、臨床で使用可能なRAS阻害薬は、ACE阻害薬、 ARB、直接的レニン(DRI)、それに加えてRASの下流囚子であるアルドステロンを抑えるアルドステロン拮抗薬の四つです。

RASの活性化を抑えるという作用機序から考えるとどれを使っても同じですが、作用機序だけでなく、薬がどこに行って、どこに効くかを考える必要があります。
例えば、ARBはアンジオテンシンⅡの受容体にくっつくことを阻害するので、受容体が多い場所に効きます。
悪者のアンジオテンシンⅡをブロックするという意味では、ARBが一番強力だと考えています。
ACE阻害薬は、アンジオテンシンⅡの産生抑制以外にも、いろいろな効果が期待できます。
なかでもよく知られているのが、ACEを阻害すると血管内皮細胞から産生される一酸化窒素(NO) が増えることで
す。
動脈硬化を起こしたでは内皮細胞の機能が低下し、NOの産生か低下することが知られています。
NOには血管拡張作用(降圧作用) や内皮細胞の機能をよくする作用などがあります。
例えば、狭心症の患者さんは血管がギュッと収縮して苦しくなりますが、その血管の収縮に関わっているのが内皮細胞です。
内皮細胞にはアンジオテンシンⅡの受容体があまりないので、血管保護作用という憲味ではACE阻害薬はARBよりも有効と考えられています。

DRIはまだ新しい薬です。
動物実験で腎臓に多く集積することが証明されており、腎臓の悪い患者さんの治療に非常に期待されていました。
ところが、腎機能障害を伴う糖尿病患者を対象として、ACE阻害薬やARBを含む標準治療にDRIを追加した群と、プラセボ追加群を比較した臨床試験(ALTITUDE試験) で、DRI追加群で高カリウム(K) 血症や、低血圧な
どの発症頻度が増えたとの中間報告がなされ、試験は途中で中止になりました。
現在は糖尿病腎症の患者さんには使うことができなくなっています。
今後は副作用の出ない臨床デザインを工夫しながら、この薬が本当に必要な患者さんに使えるように考えていかないといけないでしょう。
アルドステロンが尿細管でのNa再吸収を亢進して高血圧を生じることは昔からよく知られていますが、最近になって慢性腎臓病(CKD) 発症にも関与していることが明らかになってきました。
一般に、RAS阻害薬を服用しているCKDの患者さんにアルドステロン拮抗薬を併用すると、血圧には影響しないものの有意なタンパク尿の減少を認めることが観察されます。
これらのRAS阻害薬をどのような病態に、どのように使い分けていけばよいかは、まだ明確な答えは
出ていません。
各臓器障害と組織局所RASとの関連について、今後さらに解析を進めていくことが必要でしょう。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

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yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
SNS:X(旧ツイッター)
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