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キサラタンで目の色が変わる?虹彩色素沈着の副作用と中止の判断
公開. 更新. 投稿者:緑内障/白内障.この記事は約2分13秒で読めます.
4,006 ビュー. カテゴリ:プロスタグランジン系点眼薬と虹彩色素沈着

緑内障や高眼圧症の治療に広く用いられているプロスタグランジン系点眼薬(例:キサラタン)。この点眼薬には、「虹彩色素沈着」という独特な副作用が知られています。
この副作用について、「重大な副作用」として添付文書にも明記されていますが、実際にはどのような影響があるのか、中止すべきかどうか悩ましいケースもあります。
虹彩色素沈着とは、虹彩(黒目の周りの色のついた部分)にメラニン色素が沈着し、目の色が変化する現象です。キサラタンなどのプロスタグランジンF2α誘導体を長期使用すると、虹彩の色が徐々に濃くなることがあります。
これは非可逆的(元に戻らない)な変化で、点眼を中止しても色素は消えません。ただし、進行はゆるやかであり、投与を中止すればそれ以上悪化することはないとされています。
添付文書では、「虹彩色素沈着があらわれた場合には、臨床状態に応じて投与を中止すること」とありますが、必ずしもすべてのケースで中止が必要というわけではありません。
特に日本人のような褐色系の虹彩を持つ人では、色の変化が目立ちにくく、臨床的に問題となることは稀です。欧米人のような青い目の場合、変化が顕著に見えるため、より慎重な対応が必要になります。
以下のような場合には、医師と相談のうえ、継続・中止を検討するとよいでしょう。
・片眼のみの治療で、左右の目の色に差が出てしまうのが気になる場合
・眼科検査で虹彩が暗くなり、眼底などが見えづらくなる場合
・審美的な理由で本人が強い違和感や不快感を訴える場合
点眼薬の副作用には、まぶた(眼瞼)に生じる色素沈着もありますが、こちらは可逆的です。点眼を中止すれば、新陳代謝によって徐々に元に戻ります。
一方で虹彩は新陳代謝のサイクルがないため、一度起きた色素沈着は消えません。点眼後すぐに洗顔しても予防できるものではなく、投与開始時点であらかじめ説明し、納得してもらう必要があります。
虹彩認証システムへの影響
近年は、虹彩のパターンを使って本人確認を行う「虹彩認証」システムが、空港や銀行ATMなどで導入される動きがあります。
このような認証では、虹彩の形や色のパターンが登録されるため、キサラタンのような薬で虹彩の色や模様が変化した場合、認証が通らなくなる可能性も考えられます。
もちろん、現時点ではそのようなトラブルの事例は確認されていませんが、将来的には注意が必要になるかもしれません。
キサラタンには、虹彩色素沈着という非可逆的な副作用があります。
黒目が濃くなるだけで、臨床的な問題がなければ必ずしも中止は必要ではありません。
見た目の左右差や視認性への影響、審美的要因によっては、中止や他の治療薬への変更を検討するのがよいでしょう。
虹彩認証など今後の技術にも、多少なりとも影響する可能性はあります。
目薬の副作用は、ただの「色の変化」で済まされる問題ではない場合もあります。点眼治療を始める前には、副作用の特性とリスクについてしっかり説明し、患者と共有しておくことが大切です。