2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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抗精神病薬で無月経?

抗精神病薬と高プロラクチン血症

抗精神病薬の副作用に高プロラクチン血症があります。

月経異常や乳汁漏出は、高プロラクチン血症の比較的早期に起こる明らかな副作用です。

男性では性欲低下、性機能異常ですが、こういった性に関する異変はとてもデリケートな話題なので、表面化しにくいということがあります。

しかし、密かに悩み、そのために薬を飲まなくなる患者さんもいるくらいですから、大きな問題です。

ドパミンはプロラクチンのブレーキ

プロラクチンは、下垂体前葉から分泌される蛋白ホルモンである。

プロラクチンの分泌は他の下垂体ホルモンと異なり、アクセル(放出ホルモン)ではなく、ブレーキ(抑制ホルモン)により調整されている。

プロラクチン抑制因子(PIF)の代表はドーパミンであり、プロラクチン放出因子(PRF)としてTRHやエストロゲンがあるが、調整の主役はドーパミンと考えられている。

血中プロラクチン値は、PIFの減少またはPRHの増加によって上昇する場合と、プロラクチンの分泌亢進により上昇する場合がある。

プロラクチン

定型薬は、血清プロラクチン濃度を5~10倍上昇させることがあります。
そして定型薬によるプロラクチンの上昇は、その用量と力価に相関するといわれています。

非定型薬のなかでは、セロクエルがプロラクチンの上昇を起こしにくいといわれています。

その理由は、この薬がドパミンD2受容体への結合が緩く、ドパミンD2受容体からの解離が速いために、プロラクチンを持続的に上昇させずに、投与後12~24時間で基準値に回復させるからだと考えられます。

エビリファイは、ドパミンD2受容体への結合は強いのですが、パーシャルアゴニストのため、ドパミンの神経伝達を完全に遮断することなく、シグナルを安定的に伝達する働きをするので、プロラクチン値も上昇させません。

リスパダールはプロラクチンが上昇しやすいタイプです。

ドパミンD2受容体との結合が強く、持続的に結合する特性があるからです。

錐体外路症状の発現とプロラクチン値の上昇をもっとも起こさない薬は、セロクエルとエビリファイといえます。

ドパミンの働き

脳内には4つのドーパミン経路があります。

中脳辺縁系、黒質線条体系、中脳皮質系、漏斗下垂体系です。

本来、抗精神病薬は、中脳辺縁系におけるドーパミンD2受容体だけを適度に遮断することで、抗精神病作用を得ることをねらいとして投与されているものです。

しかし、残念ながら中脳辺縁系のみならず、黒質線条体系や、中脳皮質系、漏斗下垂体系においてもドーパミンD2受容体を遮断してしまうことで、以下に示すような副作用が起きてしまうのです。

黒質線条体系という経路は、黒質から大脳基底核までをつなぐ経路です。

黒質線条体経路のドーパミン受容体が抗精神病薬によって遮断されてしまうと、運動に関連した神経伝達物質が伝わらず、大脳基底核が担っている運動の調整機能が作動しなくなってしまい、錐体外路症状が起こります。

同じように中脳皮質系のドーパミンD2受容体の遮断は、陰性症状や認知機能の低下に影響します。

漏斗下垂体系のドーパミンD2受容体の遮断は、この神経経路が果たしているプロラクチンの分泌調節機能を適切にはたらかなくさせてしまうことによって高プロラクチン血症を引き起こします。

A 中脳辺縁系
腹側被蓋野から側坐核へと向かう経路。
幻覚や妄想と関連する(快感や乱用薬による多幸感)。
遮断すると→抗精神病作用が得られる。

B 黒質線条体系
黒質から基底核へと向かう経路。
錐体外路系で運動を調節する。
遮断すると→錐体外路症状が出現する。

C 中脳皮質系
腹側被蓋野から辺縁系皮質へと向かう経路。
陰性症状、認知症状と関連。
遮断すると→陰性症状の悪化、認知機能の低下が起こる。

D 漏斗下垂体系
視床下部から下垂体前葉へと向かう経路。
プロラクチン分泌を調節している。
遮断すると→高プロラクチン血症が起こる。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

1 件のコメント

  • ゆみゅ のコメント
         

     薬の犠牲になった私の家族の話-。

    成人前になり、MIX型の発達障害だと判明。強度の2次障害があり、薬利用により、排卵障害の視床下部無月経に。薬で直る物ではないので、離脱させるのに大変でした。

    問題は、やはり、与える方。
    損傷した脳の回復には、『責任を追わない姿勢』

    また、受け皿の婦人科も同様。そもそもの知識すらない医師が大半。健康な不妊対象者以外の厄介そうな患者は受け取らず、患者自身の心を壊す発言すらする。

    また、下垂体の専門医が少なすぎる。

    人ホルモンは生き抜く上でまず、大切。そのホルモンを遮断する投薬(精神薬)は、劇薬。

    私自身は、人ホルモン重要性については食いついて自身で長々年管理しているから、通常人(医師ですら)とは知識が違う。

     回復への『誘導』すら、世の中的にも拡散してない。

    婦人科??さんは、対応したくないみたいですょ。
    と教えたい。
    それが、不妊治療に黒字になる要因になり、国にとっては、子供率激減の要因になってる理由を厚生省は理解されてるのだろうか?
    製薬会社と精神科医師の黒字だけ、裕福になっている

     複雑な発達障害が基礎にあるので、上記の関わった医師達より、尊厳や自尊心を奪われ、治療開始にかなりの月年数が経過してしまったが、FSHが上がりきっていないので、ギリギリセーフで下垂体治療的に受け入れ先が承諾してくれ、やっと相性が大丈夫な医師と出逢えた。
    誘導する闘いの道のりは、『富士山の登山並み』

     犠牲者を拡散させることなく、限りある卵を救って欲しい。

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