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初回・導入時にしか使わない薬の規格・包装一覧
公開. 更新. 投稿者: 160 ビュー. カテゴリ:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約9分59秒で読めます.
目次
初回にしか使わない薬

薬局で在庫を発注するとき、前回と同じ薬を次回分として用意しておくことがある。
しかし、
「初回に出た規格が、次回も出るとは限らない薬」
には注意が必要だ。
例えばアリセプト錠3mg。
アリセプトは通常3mgから開始するが、3mgは有効用量ではなく、消化器系副作用を抑えるための導入量である。
そのため原則1~2週間後には5mgへ増量する。電子添文にも「3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しないこと」と明記されている。
つまり、
アリセプト3mgが処方されたから、次回分も3mgを発注しておこう
と考えると、次回には5mgへ変更されている可能性が高い。
このような「初回・導入時に使われ、その後は別規格へ移行する薬」を調べてみる。
初回・導入時に注意したい規格・包装一覧
| 医薬品 | 導入時に注意する規格・包装 | 導入時 | その後の基本的な用量・包装 |
|---|---|---|---|
| アリセプト | 3mg | 3mg/日 | 1~2週後に5mg/日 |
| リベルサス | 3mg | 3mg/日 | 4週以上後に7mg/日 |
| ラジカット内用懸濁液 | 35mL瓶 | 第1クール:35mL×2瓶 | 第2クール以降:50mL瓶 |
| テクフィデラ | 120mg | 120mg×1日2回 | 7日後240mg×1日2回 |
| メマリー | 5mg | 5mg/日 | 1週ごとに5mg増量→20mg |
| マンジャロ | 2.5mg | 2.5mg/週 | 4週後5mg/週 |
| ゼップバウンド | 2.5mg | 2.5mg/週 | 段階的に増量、通常10mg/週 |
| パリンジック | 2.5mg | 2.5mg週1回 | 段階的に増量し通常20mg/日 |
また、「初回・導入時にしか使わない」というタイトルではあるが、すべてが文字どおり「初回以外には絶対に使用しない」という意味ではない。
副作用による減量や再導入、患者の状態などによって低規格を再使用する場合がある。
ポイントは、
「この規格が処方された患者の次回処方は、同じ規格ではない可能性が高い」
ということである。
アリセプト3mg
アリセプト(ドネペジル)には、
- 3mg
- 5mg
- 10mg
がある。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症では、通常、
3mg/日から開始
↓
1~2週間後
5mg/日
とする。
さらに高度アルツハイマー型認知症では、5mgを4週間以上投与した後、10mgへ増量することができる。
ここで重要なのが、
3mgは有効用量ではない
という点である。
電子添文には、
「3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的」
と明記され、原則1~2週間を超えて使用しないことになっている。
つまり3mgは、まさに導入のための規格である。
新規患者に3mgが処方されたからといって、次回分として3mgをもう1箱発注しておくと、次回来局時には5mgになっている可能性が高い。
今回取り上げる薬の中でも、最も分かりやすい例の一つである。
リベルサス3mg
リベルサス(セマグルチド)には、
- 3mg
- 7mg
- 14mg
がある。
通常は、
3mgを1日1回
↓
4週間以上
↓
7mgを1日1回
と増量する。
効果不十分なら7mgを4週間以上投与した後、14mgまで増量できる。
ここで重要なのは、アリセプトと同様に、
3mgは維持用量ではない
ということである。
したがって、
「リベルサス3mgを飲んでいる患者がいるから、来月分も3mgを用意しておこう」
という発注は注意したい。
順調なら次回は7mgへ移行するからである。
アリセプト3mgとリベルサス3mgは、
「最低規格=少量で維持するための規格とは限らない」
ということをよく表している。
ラジカット内用懸濁液35mL
規格ではなく、包装容量そのものが初回と2回目以降で変わる珍しい例がラジカット内用懸濁液2.1%である。
ALSに対しては1回5mLを投与する。
しかし第1クールと第2クール以降では投与日数が違う。
第1クール
14日間連日投与
↓
14日間休薬
第2クール以降
14日間のうち10日間投与
↓
14日間休薬
となる。PMDAでも現在、ラジカット内用懸濁液2.1%の電子添文・適正使用情報が公開されている。
必要量を計算すると、
第1クール
5mL×14日
=70mL
=35mL瓶×2
となる。
一方、第2クール以降は、
5mL×10日
=50mL
=50mL瓶×1
となる。
つまり、
35mL瓶→第1クール
50mL瓶→第2クール以降
と非常にきれいに対応している。
この薬で特に注意したいのが、
「前回35mLだったから今回も35mLを発注」
という判断である。
前回が第1クールなら、次回は50mL瓶になる可能性が高い。
今回の記事のテーマを最もよく表す「包装」の例である。
テクフィデラ120mg
多発性硬化症治療薬のテクフィデラ(フマル酸ジメチル)には、
- 120mg
- 240mg
がある。
投与開始時は、
120mgを1日2回
↓
7日間
↓
240mgを1日2回
と増量する。
つまり通常なら、120mgを使用するのは最初の1週間である。
さらに120mgの14カプセル包装なら、
120mg×1日2回×7日=14カプセル
となり、導入1週間分ときれいに対応する。
ただしテクフィデラ120mgは、アリセプト3mgほど「初回専用」ではない。
潮紅や消化器系副作用などが認められた場合には、患者を観察しながら1か月程度120mgを1日2回へ減量できるからである。
したがって、
通常:導入1週間で使用
例外:副作用時の一時的な減量でも使用
と覚えておきたい。
メマリー5mg
メマリー(メマンチン)は、少し面白い漸増方法をとる。
通常、
第1週:5mg/日
第2週:10mg/日
第3週:15mg/日
第4週以降:20mg/日
となる。
つまり、
1日5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ増量して、20mgを維持量とする。
一見すると、
メマリー5mg=初回1週間用
に見える。
しかし、これは少し注意が必要である。
メマリーには5mg、10mg、20mgがあるため、15mgという用量を作る場合にも5mg錠を使用できる。
また、腎機能など患者の状態によって通常とは異なる用量になる場合もある。
そのため、
5mgという「用量」は第1週の導入量
だが、
5mgという「規格」が初回にしか使われないわけではない。
アリセプト3mgやリベルサス3mgより「初回専用度」は低いと考えたほうがよい。
マンジャロ2.5mg
マンジャロ(チルゼパチド)には、
2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg
という多数の規格がある。
通常、
2.5mgを週1回
↓
4週間
↓
5mgを週1回
と増量する。
その後さらに血糖コントロールが必要なら、少なくとも4週間同じ用量を投与してから2.5mgずつ増量する。
つまり2.5mgは、
チルゼパチド治療を開始するための導入規格
という性格が非常に強い。
2.5mgを4週間処方された患者なら、順調に治療が進めば次回は5mgになる。
マンジャロは高額でもあるため、
「次回も2.5mgだろう」と先行発注しない
という在庫管理上の意識は重要だろう。
ゼップバウンド2.5mg
ゼップバウンドも成分はマンジャロと同じチルゼパチドである。
ただし、ゼップバウンドは肥満症などに使用する製品である。
通常は、
2.5mgを週1回から開始
し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量する。
肥満症では通常、
2.5mg
↓
5mg
↓
7.5mg
↓
10mg
と増量し、10mgを維持用量とする。
患者の状態に応じて5~15mgで調節するため、2.5mgは基本的に導入規格と考えられる。
マンジャロ2.5mgと同じく、
「2.5mgの患者=次回も2.5mg」とは限らない
という認識を持っておきたい。
パリンジック2.5mg
今回の一覧の中でも特に特殊なのが、フェニルケトン尿症治療薬のパリンジック(ペグバリアーゼ)である。
パリンジックには、
- 2.5mg
- 10mg
- 20mg
がある。
治療開始時は非常に少ない量から慎重に増量する。
基本的には、
2.5mgを週1回
から開始し、その後患者の状態を確認しながら段階的に投与頻度・投与量を増やし、
通常20mgを1日1回
へ移行していく。
つまり2.5mg製剤は、
治療導入初期に使用するための規格
という性格が強い。
ただしパリンジックは、忍容性などを確認しながら患者ごとに投与スケジュールを調整する薬である。
単純に、
「4週間経過したから2.5mgはもう絶対に使わない」
とは考えないほうがよい。
それでも、維持療法が20mg/日で安定した患者のために2.5mg製剤を発注する可能性は通常低くなる。
使用患者も限られる薬なので、在庫管理上は特に注意したい規格といえる。
「初回専用」と「導入時に多い」は違う
今回取り上げた薬を整理すると、大きく3段階に分けられる。
ほぼ導入専用と考えやすい
アリセプト3mg
リベルサス3mg
ラジカット35mL
この3つは特に分かりやすい。
アリセプト3mgは電子添文で原則1~2週間を超えて使用しないことまで明記されている。
リベルサス3mgも開始用量であり、通常は7mgへ移行する。
ラジカット35mL瓶は第1クールの70mLという必要量に対応しており、第2クール以降は50mL瓶に切り替わる。
原則導入用だが、再使用する可能性がある
テクフィデラ120mg
マンジャロ2.5mg
ゼップバウンド2.5mg
パリンジック2.5mg
通常は導入時に使用する低規格だが、副作用、忍容性、用量調節などによって再使用する可能性がある。
したがって、
「初回以外は処方ミス」
などと判断してはいけない。
低用量から開始するが、規格自体はその後も使いやすい
メマリー5mg
が代表例。
5mg/日は開始用量だが、5mg錠自体は10mg錠などと組み合わせて15mgを作ることもできる。
この違いは重要である。
なぜこんな少量から始める?
そもそも、なぜ最初から維持量を使わないのだろうか。
理由は薬によって異なる。
例えばアリセプト3mgは、
消化器系副作用を抑えるため
の導入量である。
テクフィデラでは潮紅や消化器症状が問題になりやすい。
メマリーも副作用を抑えるため、5mgから段階的に増量する。
マンジャロやゼップバウンドでも悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状が問題となるため、低用量から段階的に増量する。
一方、パリンジックは過敏症反応などにも注意しながら慎重に導入する必要がある。
つまり「初回用規格」は単なるお試し用ではなく、
患者を維持量へ安全に到達させるための規格
なのである。
発注するときは「今回」ではなく「次回」を見る
調剤薬局で今回の知識が役立つのは、処方鑑査以上に在庫管理かもしれない。
慢性疾患の患者なら、
「今回30日分出たから、次回来局用に同じ薬を1箱注文しておこう」
と考えることがある。
ところが導入規格では、この考え方が通用しない。
例えば、
アリセプト3mg
→次回5mgかもしれない
リベルサス3mg
→次回7mgかもしれない
マンジャロ2.5mg
→次回5mgかもしれない
ゼップバウンド2.5mg
→次回5mgかもしれない
ラジカット35mL
→次回50mLかもしれない
ということになる。
特に、
高額薬・使用患者が少ない薬・返品できない薬
では、1箱の発注ミスがそのまま不動在庫になりかねない。
最低規格を見たら「導入量?」と考える
今回挙げた薬に共通するのは、
一番小さい規格だからといって、少量で長期間使用するために存在するとは限らない
ということだ。
アリセプト3mgのように副作用を避けるためだけに存在する規格もあれば、マンジャロ2.5mgのように維持量へ到達するまでの導入規格もある。
薬局であまり見慣れない最低規格の処方箋を受けたら、
「この規格は維持量なのか、それとも導入量なのか?」
を電子添文の用法・用量で確認しておく。
さらに在庫を発注するときには、
「この患者の次回処方も同じ規格なのか?」
まで考える。
初回・導入用規格を知っておくことは、適正使用だけでなく、不動在庫を減らすという意味でも役に立ちそうだ。



