服にくっつけてはいけない薬とは？塗り薬による衣類の変色・変質に注意

服にくっつけてはいけない薬

塗り薬を使用する際、「肌に塗る」ことばかりに意識が向きがちですが、実は「その後の服への付着」にも注意が必要です。一部の外用薬は、衣類に付着することで色が変わったり、繊維が傷んだりと、変質・変色の原因になることがあります。特に高価な衣類を着用している患者にとっては、トラブルの種にもなりかねません。

薬が服につくとどうなる？

塗り薬の多くは、皮膚にとどまり作用することを目的としていますが、その使用後に衣類に付着することで、以下のような問題が起こることがあります：

・衣類の油染み、べたつき
・色素沈着による変色（特に白い服）
・脱色作用による色落ち
・素材の劣化や硬化

一般的な白色ワセリンやヒルドイドなどの保湿剤であれば、油染み程度で済む場合が多いですが、一部の薬剤では化学的変化により生地の色や風合いを損なうケースもあります。

特に注意すべき塗り薬の例

以下は、添付文書から、衣類への付着に注意が必要とされている主な塗り薬です。

医薬品名	添付文書の記載
ルリコンクリーム	衣類に付着すると黄色に着色することがあるので注意すること。
ゼスタックローション	化繊、絹、皮革、ゴム、アクセサリー等に付着すると変質することがあるので注意すること。
ツムラ紫雲膏	衣類に付着すると赤紫色に着色し、脱色しにくいので、注意すること。
インテバン外用液	黄色の薬液が衣類、皮革、装身具、家具等に付着すると、変色・変質することがあるので注意すること。
スチックゼノールＡ	合成樹脂、塗料(家具、塗装床、アクセサリー等)、化繊、絹、皮革等に付着すると変質することがあるので注意すること。
スミルスチック	塗料 (家具、塗装床、アクセサリー等)、化繊、絹、皮革等に付着すると変質することがあるので注意すること。
ベピオゲル	本剤は漂白作用があるので、髪、衣料等に付着しないように注意すること。
ベピオウォッシュゲル	本剤は漂白作用があるので、髪、衣料等に付着しないように注意すること。
エピデュオゲル	本剤に含まれる過酸化ベンゾイルは漂白作用があるので、髪、衣料等に付着しないように注意すること。
ボチシート	本剤（軟膏）が、衣服 、皮革、装身具、家具等に付着すると、変色・変質することがあるので注意すること。
リバオール液	本品が衣類に付着すると黄色に変色し、脱色しにくいので注意すること。

これらの薬剤を使用する際には、塗布後に肌表面を十分乾燥させたり、薬剤が触れないようなインナーを使用するなどの対策が必要です。

ベピオゲルと脱色：寝具への影響

特に注意が必要なのが「ベピオゲル（過酸化ベンゾイル）」です。にきび治療薬として広く使用されている本剤ですが、酸化作用が非常に強く、白い衣類やタオル、枕カバーなどを脱色させてしまうことが知られています。

使用者の声：

「白いパジャマの肩口だけ薄くなったと思ったら、ベピオを塗った部分だった」
「枕カバーの色が部分的に変色してしまった」

このような報告は多数あり、メーカーも添付文書上で「衣類や寝具に付着しないように」と明記しています。

期待される新製品：ベピオウォッシュゲル

このような問題点に対する解決策として、2025年6月16日に新たに「ベピオウォッシュゲル」が発売される予定です。

ベピオウォッシュゲルの特徴：

・過酸化ベンゾイル含有ながら、洗い流すタイプ
・洗顔料に近い形で使用し、皮膚に残らない設計
・衣類や枕への色移りリスクを軽減

これにより、脱色トラブルの回避や使い勝手の改善が期待され、患者満足度の向上にもつながると考えられます。

トラブル防止のための対策

薬剤による衣類汚損を避けるため、以下のような対策が有効です。

・塗布後、肌が乾いてから服を着る
・白や淡色の衣類を避ける
・寝具や衣類に直接触れないようインナーを着用
・洗い流し可能な薬剤を選択（医師と相談）
・初めて使用する薬は添付文書の「使用上の注意」を必ず確認

また、薬局での服薬指導時に「変色の可能性があります」と伝えることで、患者との信頼関係を築くうえでも大切な一言になります。

まとめ

塗り薬は皮膚に使うものであっても、衣類にまで影響を及ぼすことがあります。とくに酸化作用や色素を含む薬剤では、脱色・変色・べたつきといった副次的なトラブルが生じることがあります。患者さんが安心して治療を続けられるよう、薬剤の性質を理解し、適切な使用法や予防策を伝えることが医療従事者の役割でもあります。

衣類や寝具への薬剤付着を防ぐことも、服薬アドヒアランスの一環ととらえ、丁寧な説明を心がけましょう。