記事
妊婦が飲んではいけない花粉症の薬は?
公開. 更新. 投稿者:花粉症/アレルギー.この記事は約7分25秒で読めます.
9,250 ビュー. カテゴリ:目次
妊婦に使える花粉症治療薬は
花粉症の季節、妊婦にアレルギーの薬が処方されることもしばしばあります。
国内外での使用経験から、妊婦に使用しても安全であると考えられている薬に、ポララミンがあります。
海外では第一選択薬として、クラリチンとジルテックが使用されてます。
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬のなかには、ジフェンヒドラミンのように催奇性のある薬剤や動物実験で催奇性が報告されている薬剤があります。
ほとんどの薬は妊婦への投与に関する十分な調査成績がなく、明確なエビデンスに乏しいのが現状です。
リスクとベネフィットを妊婦とともによく考える必要がある。
抗アレルギー薬、あるいは抗ヒスタミン薬ではマレイン酸クロルフェニラミンの安全性が相対的に高いといわれる。
妊娠初期には一層の慎重投与が望まれる。
花粉症や蕁麻疹などのアレルギー疾患は非常にありふれたものである。
つらい症状を伴うため、妊娠中であっても薬剤の使用を希望する女性は多い。
アレルギー疾患の治療に使用する主な薬剤としては、抗ヒスタミン薬(第1世代、第2世代)、メディエーター遊離抑制薬、トロンボキサンA2合成阻害薬・受容体拮抗薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などがある。
第1世代の抗ヒスタミン薬は、効果発現が早く薬価が安いなどのメリットがある。
一方で、眠気や倦怠感、口渇などの副作用を伴う。
妊娠中の使用については、添付文書上に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい」との旨が記載されている薬剤が多く、妊娠中に使用する際には十分な情報提供が必要と考えられる。
なお、添付文書上の記載表現は、薬剤によって若干異なっている。
第1世代の抗ヒスタミン薬は古くから使用されている薬剤であり、ヒトでの安全性に関する情報も多く報告されてい
る。
代表的な研究によれば、妊娠中に抗ヒスタミン薬を服用した約20万人の妊婦において、先天異常の発生頻度の増加は認めなかった。
妊娠中に催奇形性のリスクのある薬剤を使用することで、先天異常の発生が増加することは大きな問題であり、当然回避しなければならない。
一方で、そのリスクを過剰に心配するあまり、問題となることも多い。
ジフェンヒドラミンと妊婦
妊娠中に使用した研究が複数報告されている。
代表的なものは約600人の服用例を含んだ研究で、いずれの研究においても先天異常の発生頻度の増加は認めなかった。
ヒドロキシジン塩酸塩と妊婦
妊娠中に使用した研究が複数報告されている。
代表的なものは約1000人の服用例を含んだ研究で、いずれの研究においても先天異常の発生頻度の増加は認めなかった。
セレスタミンと妊婦
第1世代の抗ヒスタミン薬については、妊娠中の服用例において先天異常のリスクの上昇は認められていない。
薬剤によって情報量に差はあるものの、全体として安全性は高いと考えられる。
眠気などの副作用が日中に問題となる場合も多いが、これについては、夜問に使用量を多くすることなどで対応できる場合もある。
ただし、注意すべき薬剤もある。
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩とベタメタソンの配合薬(セレスタミン)である。
かぜや鼻炎、花粉症などに安易に使用される例が見受けられる。
さらに、短期間の使用にとどまらず、漫然と長期にわたって使用されているケースもある。
妊娠中に使用した場合には、ステロイドの影響が懸念される。
セレスタミン配合錠のベタメタゾンの含有量は1錠当たり0.25mgと少ないが、ベタメタゾンはプレドニソロンに比べ胎盤透過性が高い。
そもそも、こうした配合薬にステロイドが含有されていることを知らずに服用している患者もおり、後になって妊娠中に使用したことを後悔する例もある。
妊婦だけでなく妊娠を希望する女性に適切なアドバイスをすることが必要である。
つわりに抗ヒスタミン薬?
欧米では、抗ヒスタミン薬がつわりの薬として使用されている。
つわりは、妊娠6~12週に妊婦の80%以上に起こるとされる。
食事療法などで改善する例もあるが、薬物治療が行われることもある。
その治療薬の1つに抗ヒスタミン薬も含まれ、中でも第1世代の薬剤は妊婦に汎用されてきたため、使用に関する情報も多い。
米国では、1956年に抗ヒスタミン薬のドキシラミンとビタミンB6(ピリドキシン) の配合薬が使われるようになり、その後、83年までに、全妊婦のうち25%以上が使用したとも報告されている。
しかし、60年代後半~70年代には、抗ヒスタミン薬と催奇形性との関連を危惧する報告がなされ、やがて訴訟問題にまで発展。
83年には、同薬を製造・販売する製薬会社が、採算が合わなくなったとして市場から撤退した。
薬が使えなくなった結果、つわりで入院する妊婦が増えてしまったともいわれており、米国ではそれまで1000人当たり7人だった入院数が、15~16人に倍増したと報告されている。
実は、訴訟の最中にも、抗ヒスタミン薬と催奇形性との関連を否定する報告が幾つも示された。
にもかかわらず、催奇形性に対する懸念が社会の中でどんどん膨らみ、最終的には、つわりに対する薬物治療が行えなくなり、入院する妊婦が増える結果となってしまった。
リスクを恐れるあまり妊婦に悪影響が及んでしまったエピソードとして、教訓にしなければならない。
先天異常発生のベースラインリスクに対する認識が十分でなかったことも、催奇形性の懸念が増幅した要因と考えられる。
今もなお、乳幼児に何らかの悪影響があった場合、妊娠中に使用した薬が原因と考える女性は多く、ベースラインリスクについて正しく理解してもらうことが重要である。
訴訟問題以降、米国でのつわり治療薬の承認は30年以上なかったが、2013 年4月、ドキシラミンとピリドキシンの配合薬であるDiclegisが、妊婦の悪心・嘔吐の治療薬として米国食品医薬局(FDA)により承認された。
妊婦に禁忌の抗アレルギー薬
花粉症で使いそうな、アレルギー性鼻炎に適応のある薬の中で、妊婦に禁忌の薬を挙げると、
アレギサール 禁忌
・動物実験(ラット)で大量投与により,胎児発育遅延が報告されている。
リザベン 禁忌
・マウスに大量投与した実験で,骨格異常例の増加が認められている。
セルテクト 禁忌
・動物実験(ラット)で口蓋裂、合指症、指骨の形成不全等の催奇形作用が報告されている。
妊婦に注意の抗アレルギー薬
他にも、「投与しないことが望ましい」とされている薬には、
レスタミン
ベネン
・抗ヒスタミン剤を妊娠中に投与された患者群で、奇形を有する児の出産率が高いことを疑わせる疫学調査結果がある。
ピレチア
ヒベルナ
アリメジン
ホモクロミン
プロコン
・妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。
クラリチン
・妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。また,動物試験(ラット,ウサギ)で催奇形性は認められないが,ラットで胎児への移行が報告されている。
ゼスラン
・妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。
タリオン
・妊娠中の投与に関する安全性は確立しておらず、また、動物実験で胎児への移行が認められている。
これら以外の薬でも、
アレジオン
・妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。また、妊娠前及び妊娠初期試験(ラット)では受胎率の低下が、器官形成期試験(ウサギ)では胎児致死作用が、いずれも高用量で認められている。
アゼプチン
・動物実験(ラット)で大量投与(臨床用量の370倍以上)による催奇形作用が報告されている。
キプレス/シングレア
・妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。海外の市販後において、妊娠中に本剤を服用した患者から出生した新生児に先天性四肢奇形がみられたとの報告がある。これらの妊婦のほとんどは妊娠中、他の喘息治療薬も服用していた。本剤とこれらの事象の因果関係は明らかにされていない。
セレスタミン
・動物実験(マウス)で催奇形作用が報告されており,また,新生仔に副腎不全を起こすことがある。
プレドニン
リンデロン
コートリル
メドロール
デカドロン
レダコート
コートン
・動物試験で催奇形作用が報告されており,また,新生児に副腎不全を起こすことがある。
などの文言が添付文書に記載されており、注意が必要です。
禁忌じゃなければ疑義照会まではしないけど、不安に思っている妊婦さんは、産婦人科医から処方してもらったほうが安心かと。
セルテクトは妊婦に禁忌
セルテクトの添付文書には、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験(ラット)で口蓋裂、合指症、指骨の形成不全等の催奇形作用が報告されている。]
と書かれています。
実際に上記の試験は、臨床用量の50倍にあたる量をラットに投与したものです。同量をウサギに投与した場合では異常が認められませんでした。
またヒトにおいても現在のところ催奇形性の報告は国内外ともにありません。
これらのことから、奇形発生の頻度や危険度が上昇するとは考えられないので、仮に絶対過敏期にセルテクトを服用したとしても、ヒトでの奇形発生の確率が上昇すると考える根拠はない旨を説明することが必要です。
薬を使う場合は点眼薬・点鼻薬が第一選択
点眼薬・点鼻薬は、母体血中への移行はごくわずかであるため、通常の使用法である限り、胎児への影響を考慮する必要はほとんどなく、長期に使用することができる。
これら局所で用いる薬剤を使用してもなお症状が治まらない場合に、経口薬の使用を考慮する。
クロルフェニラミンは妊婦に対する使用実績が長く、経口薬の第一選択として考えられる。
クロルフェニラミンでは眠気が強すぎるという場合は、第二世代の抗ヒスタミン薬の使用を検討するが、なかでもロラタジンは複数のコホート調査において催奇形性との関連は認められておらず、
妊娠中でも安全に使用できると考えられている。
クロルフェニラミンやロラタジンなどある程度安全性が確立された薬があるため、添付文書中に「妊娠中は使用しないこと」もしくは「妊娠中は投与しないことが望ましい」との記載がある薬物は、その薬物が不可欠という場合以外は使用しないほうが安全である。
ただし、妊娠中の薬物使用の危険性を完全に否定することは難しいため、内服薬を使用する場合は長期にわたって漫然と使用するのではなく、症状が強いときのみに最小限の使用にとどめたほうがよい。
妊娠中の薬の使用に関しては、「実践 妊娠と薬(じほう)」が参考になる。
参考書籍:調剤と情報2011.10、日経DI2016.5
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
3 件のコメント
半年前から慢性蕁麻疹に悩まされ、皮膚科で治療を続けています。
タリオンを朝と晩、一日二回をひたすら飲み続けて、
お薬を飲んでいれば症状は落ち着いているのですが、先生に相談して一日一回晩だけに減らすと、とたんに蕁麻疹が出るので、結局お薬を減らすことができずに、一日二回にもどすしかない状態でいます。
ただ蕁麻疹の治療と向き合うだけなら、これほど頭を悩ますほどの苦痛はありませんが、私は現在35歳で、一年前に結婚し、主人も私も妊娠・出産を強く希望しています。年齢的な時間制限を考えると、今すぐにでもできることなら出産を考えていきたいのですが、お薬をちっとも減らすことができない今の状況に、強いあせりを感じています。
何度も、お薬を減らす事に挑戦し成功しないので、半年飲み続けてきた『タリオン』から、今日はじめて『ロラタジンOD』というお薬に変わり、一日一回晩に2錠で処方されました。
この半年間、お薬をやめてからの妊娠を望んで 蕁麻疹の治療に向き合ってきましたが、このまま時間ばかりがたってしまうのが怖いし、だからといって、このようなお薬を長い期間のみ続けているので、赤ちゃんへの影響を考えると、やはり、このまま蕁麻疹の治療を続けるしかないのかと思っています。
一週間前に、一年ぶりの婦人科検診に行った際、婦人科の先生に蕁麻疹の話をしたところ、『お薬をやめてからの妊娠が好ましいが、妊娠が分かったらお薬をやめればいい。』とのお話だったので、少し安心したのですが、私の場合 長くお薬を飲んでいることと、お薬を減らす事に何度も失敗しているので、妊娠後にお薬を一切飲まなくできるのかも、気になります。
妊娠・出産への不安で、よけいに蕁麻疹も良くならないでしょうか?
息詰まってしまった私に、いいアドバイスをくださいませんか。
コメントありがとうございます。
妊娠・出産を考えると、薬を飲み続けることに不安を持つこと、よくわかります。
うちの奥さんも、精神系の薬や甲状腺疾患の薬を飲みながら、妊娠しました。
精神系の薬は止めましたが、そのせいか不安定になることもしばしば。
でも今は落ち着いています。
子供に何か影響が出ないか、不安が無いと言えば嘘ですが。
薬を飲んでも飲まなくても、3%くらいの割合でなんらかの異常を持って生まれてくると言います。
薬の影響か、別の要因か、なんて結果的にはわからないので、最終的には運命として受け入れるしか無いだろうな、と思いますが。
妊娠や出産をすると体質が変わるとも言います。
もしかすると、妊娠したら蕁麻疹が治るかも。
うちの奥さんのバセドウ病も治るといいな。
アドバイスにも何もなっていないかも知れませんが。
お返事ありがとうございます。
実際に同じような思いをもっておられる方や、気持ちが分かってもらえる方の話が聞けると、少し気持ちが和らぎます。
出産への年齢的なあせりと、お薬の影響を考えるとすべての心配はぬぐうことは簡単ではありませんが、
妊娠・出産を機に良い方に体質が変わってくれるということを信じたいです。
お薬をやめられたとしても、子作りを始めてすぐに赤ちゃんを授かれるのかも分からない事なので、少しの可能性を信じて、やはり、あきらめたくないと思います。
同じような悩みを持ちながら、無事に出産してみえる方も実際にはたくさんいらっしゃるだろうし、
お薬を飲まない健康な方であっても、元気な赤ちゃん
の顔を見られるまで 絶対の安心はない事でしょうから。
心配をしだすときりがないし、あまりに悩みすぎて気持ちが疲れてしまうので、あまりお薬のことばかりに神経質になり過ぎないよう意識したいと思います。
奥様もお元気になられるといいです。
お返事ありがとうございました。