2024年11月22日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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下剤を連用しちゃダメ?

下剤を毎日飲んじゃダメ?

下剤を連用すると、腸が刺激に慣れて服用量を増加しないと薬が効かなくなってしまいます。
一般的に、刺激性下剤は耐性が現れやすく、塩類下剤は耐性ができにくいと言われています。

塩類下剤をベースに飲んで便を出しやすくし、それでも出ない場合は刺激性下剤を頓服で使って排便を促すように、上手に使い分けるようにする。

便秘の薬は便秘の治療には不可欠であり、基本的には副作用はほとんどなく、上手に使うことで、排便習慣の確立に役立つ。
ただし一般的に、急性腹症、器質的便秘、腸狭窄や閉塞などでは禁忌となる。
腸管穿孔の危険性がある。

同一製剤の長期連用は習慣性を生じるため種類を変えるか、または作用機序の異なるものを併用する。
正常の排便リズムが回復すれば薬剤は漸減、中止する。

大腸刺激薬は骨盤内充血をきたすので、痔疾患患者、骨盤内臓器の炎症、月経時には通常使用しない。
強力な下剤の連用による脱水、低K血症に注意する。

塩類下剤は習慣性が少ないので長期使用されるが、まれに高Mg血症がみられるので、とくに腎障害時には注意する、などの配慮が必要である。

センノシドの連用と大腸メラノーシス

プルゼニド(センノシド)など刺激性の下剤を長年常用していると、大腸の粘膜に色素が沈着して黒くなってきます。これを大腸メラノーシスといいます。

内視鏡検査や手術時などに偶然発見されることが多い。
メラノーシス自体はただ、黒くなるだけで大腸癌の原因になったりということはありません。

しかし、下剤を長期連用しているという証拠なので、下剤が効きにくくなっている状況であることは想像がつきます。

原因としては、アントラキノン系下剤の連用、慢性便秘や消化管出血、慢性消耗性疾患、大腸癌などによる腸管通過障害などの状態において生じやすいと言われているが詳しい発生機序はわかっていない。

下剤による場合、色素沈着の程度が用量依存的で、服用期間が長いほど色素沈着も強い傾向があるとの報告もある。
女性に多いとも言われ、投与中止により、4~12ヶ月で色素沈着が消失すると言われている。

アントラキノン系薬剤は長期に連用すると消耗色素が大腸粘膜に沈着して、内視鏡にて黒色の粘膜を呈する。色素は粘膜固有層のマクロファージに取り込まれたもので上皮への沈着ではない。下剤中止後1年程度で正常化する可逆的で良性の病態であるが、長期に経過すると上皮細胞への障害や腸管神経叢の機能障害が生じる可能性も指摘されている。

下剤の耐性と直腸型便秘

下剤使用時に特に問題とされるのは、大腸刺激性下剤の連用による耐性の発現で、ピコスルファートナトリウム以外の大腸刺激性下剤の添付文書には、「重要な基本的注意」の項に「連用による耐性増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避ける」旨が記載されています。

また、浣腸や坐剤の連用は、直腸を頻回に刺激することになり、粘膜が過敏となったり、逆に感受性が低下して、排便反射が得られず、直腸性便秘の原因となったりすることがあります。

下剤を頻回に使用しなければならない場合は、原則として、大腸刺激性下剤や坐剤などは避け、膨張性下剤、浸透圧性下剤をまず考慮することが望ましいとされていますが、膨張性下剤のカルメロースナトリウムは量が多くなると服用しにくく、大量の水分摂取が必要なこと、浸透圧性下剤のラクツロースは、小児の適応しか認められていないことなどの問題があり、これらの製剤が常用されることは多くありません。

塩類下剤は汎用されますが、効果が不十分な場合は、やはり大腸刺激性下剤が用いられ、服用が長期に及ぶ場合もしばしば見られます。

このような例に対しては、生活習慣の改善や食事療法を根気よくアドバイスし、薬剤が漸減できるようにサポートすることも大切と思われます。

下剤はクセになる?

下剤を長期に連用すると、腸の働きが鈍くなってきて、効果が無くなってくるといわれています。
しかし、下剤を大量に処方されて連用している患者さんは多いです。

「あまり使わないほうがいいですよ。」とか「生活習慣の改善が大切です。」などと薬剤師が言っても、余計なお世話と捉えられそうです。
患者さん本人が一番苦しんで、食生活や運動などできることはしているハズなので。

便秘も生活習慣病と考えたら、高血圧や糖尿病のように一生付き合っていく気持ちで対応しないとダメなのかも知れません。

浣腸はクセになる?

浣腸はクセになるとよく言われます。
下剤もクセになる、と言われる。

赤ちゃんの綿棒浣腸はクセにならない、とか育児本には書いてあります。

赤ちゃんの便秘と大人の便秘はまず違いますね。
赤ちゃんの便秘は離乳食の開始時期が多い。腸がミルクから離乳食に慣れるまでの一時的な便秘であることが多い。
だからクセにならない。

大人の便秘は生活習慣、食習慣によるもの。
なかなか変えられない。
薬がクセになっているのではなく、便秘がクセになっている、ということ。
だからなかなか止められない。

癖になりにくい下剤

酸化マグネシウムや水酸化マグネシウム(以上、無機塩類)、カルメロース(CMC)やプランタゴオバタ、寒天、小麦ふすま(以上、膨潤性瀉下薬)、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS:糞便中の水分増量とぬめりを与える湿潤性瀉下薬)、マルツエキス(麦芽糖)が癖になりにくい下剤です。

便秘の解消には、食生活を改善することが重要で、瀉下薬(便秘薬・下剤)の使用は一時的にします。

特にセンナやダイオウ、アロエ、ビサコジル、ピコスルファートナトリウムなどの大腸を刺激する瀉下薬は、常用すると腸管の感受性が低下し、効果が弱くなりますので、常用は避けます。

瀉下薬は少量から開始し、効かない場合は少しずつ増量し、硬くも軟らかくもない便が排泄できるように適量を設定します。

就寝前に服用して、朝起きたときや朝食後に排便があるのが理想的です。

瀉下薬や浣腸を乱用すると効きが悪くなり、体内のカリウムイオンの喪失から下痢と便秘を繰り返し、直腸粘膜が正常に反応しなくなります。

下剤を使わない排便方法

繊維を多く含む食品や乳製品、炭酸飲料、水分を多めに摂ることが大事です。

朝起きたときに牛乳や水をコップ一杯飲むことで大腸が刺激され、便意を催すことがあります。

できる限り朝食を摂るように心がけ、それに伴う排便反射があったときには我慢せず、すぐトイレに行くよう心がけます。

また、おなかをマッサージすることで便意を催すことがあります。

下剤の空振り

下剤を飲んでも便が出ない、という人がいる。
よくいる。

それでも毎日下剤を使っている。
それはちょっと悪循環に陥っている。

どんなに下剤を飲んでも、その人のリズムを壊してまで出すことはできない。
たとえば便秘4日目に飲んで5日目に出たとしたら、効いているのは4日目に飲んだ下剤だけ。

それ以前の下剤は無駄に腸を動かして、便秘を悪化させているとも考えられます。

しかし、以前聞いた話で、センナが腸内細菌の作用でレインアンスロンに代謝されて瀉下作用を発揮しますが、センナを代謝する腸内細菌の数を増やすために、エサとしてセンナを与え続けるという話も聞いたことがある。

生薬成分で自然なお通じ?

生薬成分のセンナを配合した下剤で、「自然なお通じ」「植物性」をアピールするものが多い。

まるで、センナのほうがビサコジルやピコスルファートナトリウムよりも穏やかに効くとでもいうような。

センナだって大腸刺激性下剤で習慣性もあり、緩下剤というわけではない。

コーラックハーブのセンノシド含有量は、プルゼニドと同じ。

ハーブって効くと体に優しいイメージですが、連用には気をつけましょう。

大黄と便秘

大黄は瀉下作用とともに止瀉の効果ももっています。

タンニン・没食子酸が含まれ収斂作用があるため、単独で使用すると次第に瀉下効果がなくなり、かえって便秘を引き起こし腹痛が強くなることがあります。

そのため、甘草を配合して鎮痙作用により、大黄による大腸痙攣性腹痛を緩解し、激しい瀉下作用を弱めています。

さらに甘草は生津の効能をもち、抗利尿に働いて体内に水分を保持する作用があるため、大黄の利尿効果により、腸内水分が少なくなって瀉下効果が落ちるのを防止しています。

一般的には、頓服的に用いる方剤であり、いわゆる本質的な改善薬ではありません。

漢方医学は単に瀉下剤を加えるという治療は行わず、病態に応じて種々の方剤を用います。

「正気の虚」が本質的に回復していない状態では、便秘が再び発症する可能性が出てきます。

漢方薬特徴
大黄甘草湯常習性便秘にもっとも広く使用される。食欲不振、吐き気を伴う便秘に効果あり。
調胃承気湯体力中等度で腹部膨満感が強く、腹痛をともなう便秘に使用。
桂枝加芍薬大黄湯比較的体力低下した人で腹部膨満し、腸内の停滞感あるいは腹痛を伴う便秘に使用。
麻子仁丸体力中等度、それ以下の習慣性便秘で老人に使用。便は硬く、塊状の便秘に使用。
潤腸湯老人や胃腸機能の低下した人の弛緩性または痙攣性便秘に使用。
三黄瀉心湯体格・体力とも充実し、のぼせ気味で顔面紅潮した人の便秘に使用。
桃核承気湯体格・体力とも充実し、お血を伴い左下腹部に抵抗、圧痛がある人の便秘に使用。

マグミットは一包化に入れる?

便秘がちという方によく処方されるマグミット。
酸化マグネシウムは基本的に安全性は高い薬。連用してもほとんど副作用の心配はいらないだろう。

そんな酸化マグネシウムを含むマグミットやマグラックスの処方で、一包化を指示されてくることがある。
指示通りマグミットも朝昼夕に入れて渡すでしょうか。

これは薬剤師によって判断が分かれる事案かもしれませんが、私は必ず患者に確認してから一包化します。
基本的にはマグミットはシートのままお渡しする。
どうしても面倒だ、施設の人が管理しており自己調節が難しい、など患者サイドの要望があれば一包化に含めます。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

2 件のコメント

  • 金子元久 のコメント
         

    下剤は耐性化するので長期使用は避けるべきと言われます。パーキンソン病を発症すると、神経変性が生ずるので、便秘になるわけで、下剤を使わない様にすることが困難です。良い方法を教えて下さい。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    下剤は耐性化するので長期連用は避けるべき、ですね。そのため間隔を置いて服薬する、また、違うアプローチ(食事療法、運動療法、マッサージ、ストレス緩和法など)を組み合わせて個々の患者さんに合った方法を試していく必要があるかと思います。
    具体的な方法については主治医の先生とご相談することをお勧めいたします。

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職業:薬剤師
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生息地:雪国
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