2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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2倍飲んだら効果も2倍?非線形薬物一覧

線形と非線形

薬剤師

2錠飲んだら効果は2倍だよね?

大部分の薬は投与量を2倍にすると体内薬物量は約2倍になり、血中濃度も約2倍になります。
3倍にすると約3倍になります。

なぜなら通常の薬の体内からの消失速度は体内薬物量に比例するからです。
これを「線形薬物」あるいは「一次速度を示す薬物」と称します。

ところが、ごく一部なのですが、投与量比以上に血中濃度が上昇したり、投与量比どおりに上がらないで、頭打ちの血中濃度を示す場合があります。
これらを「非線形薬物」と称します。

どうしてこのようなことが起きるのでしょうか?
まず、投与量比以上に血中濃度が上昇してしまう非線形薬物の場合を考えてみましょう。

フェニトインが有名ですが、実はフェニトインばかりではなく、今はいろいろな薬が非線形を示します。
たとえば、SSRIのパロキセチン塩酸塩、不整脈用剤のプロパフェノン塩酸塩や抗真菌薬のイトラコナゾール、抗ウイルス薬の硫酸アタザナビルなどがあります。

非線形速度過程を起こす薬物
・アスペノンカプセル、パキシル錠、プロノン錠、ミカルディス錠、レイアタッツカプセル、レスクリプター錠

多くの薬が薬物代謝酵素によって代謝され、代謝物となって薬効を失い体外に出ていきます。
ところが、この代謝酵素に限界があって代謝が飽和に達し、それ以上代謝されなくなる場合があります。

さらに、薬の投与を続けると、血中に代謝されない未変化体がいっぱいになり、投与量比以上に血中濃度が上がるのです。
このように、血中濃度が投与量比以上に上がるのは、それまで一次速度過程で消失していたものが、代謝酵素が飽和に達し、ゼロ次消失速度に移行したことを示しています。

すなわち、非線形速度過程はゼロ次速度過程が生み出しているといえます。
血中濃度が上昇すると、患者さんに過剰な薬理作用が発現し、薬の副作用に曝されることになります。

したがって、非線形薬物が増量された場合には、特に注意深く患者さんを観察しなければなりません。

頭打ち現象

もう一方で、血中濃度の頭打ち現象が起こることもあります。

これは、薬に結合するアルブミンなどの血漿蛋白が飽和した時に起きる現象です。
したがって、蛋白結合率が高く、分布容積が小さい薬に起きやすいといえます。

分布容積とは「薬が分布する場所のみかけの大きさで、大きければ組織移行が大きい」ことを示す薬物動態値です。
薬は血中に蛋白と結合した薬として存在するか、結合しない遊離の薬として存在するのかのどちらかです。

薬が薬効を現したり、副作用を起こすのは遊離の薬の作用です。
蛋白結合が飽和するといったい何が起きるのでしょうか?

たとえばバルプロ酸(デパケン)です。
バルプロ酸は血中蛋白、特にアルブミンとの結合率が高く90%以上で、100μg/mL以上の濃度では結合が飽和するといわれています。

分布容積も0.1~0.4L/kg以下と小さく、ほぼ細胞外液に相当します。
添付文書にあるin vitroのバルプロ酸の蛋白結合率と血中濃度の関係をみると、バルプロ酸の濃度が高くなると蛋白結合率が下がっていきます。

つまり遊離型のバルプロ酸が増えていきます。
そうすると、遊離型のバルプロ酸は血液中から組織に移行しやすくなります。

その結果、血中濃度は投与量に比例して上昇しなくなります。
つまり血中濃度の上昇が頭打ちになります。

非線形の薬物の例

フェニトイン型
フェニトイン:アレビアチン、ヒダントール
フェンタニール:フェンタニスト、デュロテップ
パロキセチン:パキシル
フルボキサミン:デプロメール、ルボックス
テオフィリン:テオドール、テオロング
アプリンジン:アスペノン
シベンゾリン:シベノール
プロパフェノン:プロノン
テルミサルタン:ミカルディス
クラリスロマイシン:クラリス、クラリシッド

バルプロ酸型
バルプロ酸:デパケン
サリチル酸:バファリン
イブプロフェン:ブルフェン
ナプロキセン:ナイキサン
プレドニゾロン:プレドニン
ヒドロコーチゾン:ソルコーテフ、サクシン
ジソピラミド:リスモダン

パキシル20mgは10mgの2倍効く?

パキシルはフェニトインのような非線形薬物。

添付文書の薬物動態には、

健康成人(20~27歳)に本剤10、20又は40mgを単回経口投与した時の投与量で補正した最高血漿中濃度(Cmax)の平均値は10mg群と比較して20及び40mg群でそれぞれ1.98及び4.69倍であり、投与量の増加を上回った増加が確認された。また、40mg群の投与量で補正した血漿中濃度曲線下面積(AUC)は20mg群の2.48倍であり、Cmaxと同様に投与量の増加を上回った増加がみられ、薬物動態の非線形性が確認された。

と書かれており、非線形である旨が明示されている。

また、

本剤は主に肝臓のCYP2D6により代謝されることから、薬物動態の非線形性はCYP2D6による代謝の飽和と考えられる。
本剤がCYP2D6を阻害し、表現型がExtensive MetabolizerからPoor Metabolizer様へ変換することから、CYP2D6で代謝される薬剤との相互作用が考えられる。

とも書かれており、CYP2D6を阻害するような薬との併用は注意が必要。

人によっては投与量以上の効果を発揮してしまうことも考えられるため、増量時にはアクチベーションシンドロームなどに注意し、慎重に増量する必要がある。
増量時にパキシル5mgを使うのも有用かと思いますが、パキシル5mgは減量時にしか使えない。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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