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頭痛の原因は血管の拡張?収縮?
公開. 更新. 投稿者: 93 ビュー. カテゴリ:頭痛/片頭痛.この記事は約4分46秒で読めます.
目次
頭痛の原因は血管の拡張?収縮?

頭痛は誰しも経験する身近な症状ですが、その原因については「血管が拡張するから起こる」「いや、収縮するからだ」といった説明が耳に入ることがあります。実際、薬剤師として患者さんから「コーヒーを飲んだら頭が楽になった」「薬を飲んだらズキズキが止まった」などの声を聞くと、血管の状態と頭痛が深く関係していることを実感します。
では本当に、頭痛の原因は「血管の拡張」なのでしょうか、それとも「収縮」なのでしょうか。
頭痛の種類と血管の関係
頭痛は大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。二次性頭痛は脳出血や腫瘍など原因が明確なものを指し、今回は除外します。ここでは一次性頭痛の代表である片頭痛と緊張型頭痛、そして群発頭痛を中心に、血管の拡張・収縮との関係を見ていきます。
片頭痛(migraine)
・特徴:ズキズキと脈打つような痛み。しばしば吐き気や光過敏を伴う。
・メカニズム:脳の血管が拡張し、その周囲を走る三叉神経が刺激されます。三叉神経から放出されるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの炎症性物質がさらに血管を拡張し、炎症と痛みの悪循環を引き起こします。
・まとめ:片頭痛は「血管の拡張」が主因と考えられています。
緊張型頭痛(tension-type headache)
・特徴:頭全体を締め付けられるような鈍い痛み。肩こりやストレスと関連。
・メカニズム:首や肩の筋肉の緊張によって血流が悪くなり、脳や頭皮の血管が収縮傾向になります。その結果、酸素不足や代謝産物の蓄積によって痛みが生じます。
・まとめ:緊張型頭痛は「血管の収縮」や「筋緊張」が関与します。
群発頭痛(cluster headache)
・特徴:目の奥をえぐられるような激痛。決まった時間に集中的に出現。涙や鼻水を伴うことが多い。
・メカニズム:詳細は不明ですが、視床下部と自律神経の関与、血管拡張による三叉神経刺激が示唆されています。
・まとめ:群発頭痛も血管拡張が関与すると考えられています。
血管と薬の関係 ― 治療薬の作用から考える
頭痛治療薬がどのように作用するかを見ると、血管の状態が痛みにどのように結びついているかが見えてきます。
① カフェイン
・作用:アデノシン受容体をブロックし、脳血管を収縮させます。
・効果:頭痛薬に配合されることがある(エクセドリンなど)。片頭痛の初期に有効なことも。
・ポイント:拡張した血管を収縮させる方向に働き、頭痛を改善。
② NSAIDs(アスピリン、イブプロフェンなど)
・作用:COX阻害によりプロスタグランジン産生を抑制。プロスタグランジンは血管拡張と炎症に関わるため、それを抑えることで頭痛を和らげます。
・効果:片頭痛や緊張型頭痛の第一選択薬。
・ポイント:炎症性の血管拡張を抑えることで効果を発揮。
③ トリプタン系薬(スマトリプタンなど)
・作用:5-HT₁B/₁D受容体作動薬。脳血管を直接収縮させ、さらに三叉神経からのCGRP放出を抑える。
・効果:片頭痛発作時の特効薬。
・注意点:血管収縮作用があるため、虚血性心疾患・脳血管障害のある患者には禁忌。
・ポイント:拡張した血管を収縮させる作用が中心。
④ 予防薬
・β遮断薬、抗てんかん薬、Ca拮抗薬などが片頭痛予防に用いられる。
・特にCa拮抗薬は血管拡張作用を持ちますが、「血管の安定化」「神経興奮性の抑制」によって片頭痛発作を減らすと考えられています。
血管拡張=悪、血管収縮=悪 ではない
ここで重要なのは、「血管が拡張すると必ず頭痛」「収縮すると必ず頭痛」という単純な話ではないということです。
・片頭痛:拡張が主因 → 収縮させる薬が有効
・緊張型頭痛:収縮や血流低下が主因 → 筋肉をほぐす、血流を改善するのが有効
・群発頭痛:拡張が関与 → 100%酸素吸入やトリプタンが有効
つまり「どちらが原因か」は頭痛の種類によって異なります。
患者指導におけるポイント
薬剤師として服薬指導や生活指導を行う際、次のような点を意識すると患者理解が深まります。
「片頭痛では血管が拡張してズキズキする。だから収縮させる薬が効く」
「緊張型頭痛では筋肉の緊張で血流が悪くなる。だからストレッチや入浴が効果的」
「同じ頭痛でも原因が違うから、薬の選び方や生活改善のポイントも異なる」
このように説明すると「血管の拡張か収縮か」という疑問が整理され、患者さんの納得感も高まります。
まとめ
・頭痛の原因は「血管の拡張か収縮か」で一律に説明できるものではなく、頭痛のタイプごとに異なる。
・片頭痛・群発頭痛 → 血管拡張が関与
・緊張型頭痛 → 血管収縮や筋緊張が関与
・治療薬の多くは「拡張を抑える」あるいは「血流を改善する」作用を通じて効果を発揮する。
おわりに
頭痛は単純な「血管の拡張・収縮」だけで説明できるものではありませんが、血管の状態は重要な鍵となっています。薬の作用や頭痛のタイプを理解することで、薬剤師として適切な指導ができるだけでなく、患者自身も「なぜこの薬を飲むのか」「なぜ生活習慣を整えるのか」を理解しやすくなります。
「頭痛の原因は血管の拡張?収縮?」――その答えは「どちらも正しい。ただし、頭痛の種類によって異なる」というのが結論です。



