記事
低血糖に気づかない?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約10分28秒で読めます.
3,847 ビュー. カテゴリ:無自覚低血糖
低血糖を起こしても気付かない患者がいるという。
糖尿病性の神経障害を合併している患者では特にその傾向がみられる。
血糖値が60mg/dL以下にもかかわらず低血糖症状がない場合は、無自覚低血糖とよばれ、日常生活上においても極めて危険な状態であることを薬剤師も知っておくべきである。
無自覚低血糖では突然、異常行動や痙攣、意識低下など重症の中枢神経症状を呈することがある。
また、長期の罹患歴がある例や、何度も低血糖を繰り返している例で認められることが多いため、そのような場合は頻回に血糖自己測定(SMBG)を行うことで血糖値を確認させ、低血糖を起こさないような慎重なコントロールを指導する。
そうすることで、低血糖が出現した場合にもすみやかに発見し、遅れずに対処することができる。
低血糖になったらわかる?
健常人の血糖値は空腹時でも70mg/dL以下になることはほとんどないが、インスリン製剤や経口糖尿病治療薬を使用中の患者や、その他の薬剤による副作用として、血糖値が70mg/dL未満となる低血糖を生じることがある。
低血糖の症状は、頻脈、発汗、蒼白、低体温、皮膚湿潤などの交感神経症状と、意識障害、異常行動、痙攣などの中枢神経症状の2つに大別される。
血糖値が70mg/dL未満になると、まず自律神経症状を自覚し、さらに下がって50mg/dL未満になると中枢神経症状が表れるのが一般的。
ただし、血糖が穏やかに低下した場合や、低血糖を何度も生じている患者、乳幼児、高齢者では、交感神経症状を呈することなく、中枢神経症状を生じることがある。
血糖値 | 症状 |
---|---|
80~110mg/dL | コントロール良好 |
60~70mg/dL | 空腹感、あくび、悪心 |
50mg/dL | 無気力、倦怠感、計算力減退 |
40mg/dL | 発汗、冷や汗、動悸、頻脈、震え、顔面蒼白、紅潮 |
30mg/dL以下 | 意識不明、異常行動、痙攣、昏睡 |
低血糖の感じ方
低血糖の経験がないと話す患者さんの中にも、低血糖を起こしていることに気がついていないだけの人というのもいるようです。
一般的に低血糖の症状は、飢餓感を感じるほどの空腹感や吐き気、あくび、頻脈、ふるえなどといわれてます。
しかし、実際には患者ごとに感じ方は異なります。
食前や食事の間隔が空いたときに、服薬後感じる「変な感じ」が低血糖、と説明したほうが理解されやすい。
低血糖の症状の表れ方は人によって異なる。
そのため、自分に表れやすい症状を知ってもらうことが大切。
「冷や汗」と一口で言っても「全身にじんわり嫌な汗をかく」「お尻のところにびっしょり汗をかく」など様々。
糖尿病より低血糖が怖い?
低血糖の説明は非常に大事ですが、必要以上に低血糖の説明をすると、患者さんが怖がって、それを自然に回避しようとして食べてしまうこともあります。
低血糖が起こると、血糖値を上げようとするホルモンも一緒に出てくるので、そのリバウンドで低血糖後に高血糖が起こることがよくあります。
それを繰り返しているうちにだんだん血糖値も上がってきてしまうことがあります。
神経質な人に低血糖の話をしてしまうと、低血糖ではないのに症状を起こしてしまう。
低血糖の多くは交感神経の症状なので、「低血糖になる」と思って緊張しただけで冷や汗が出てくる。
少しでも空腹を感じると、これは低血糖だと思って、実際には低血糖でもないのに食べてしまう。
インスリン注射をしている人で、どうしてもお腹がすいてしまうという人は、まず血糖値を測ってもらうといい。
実はお腹がすいていただけで低血糖ではなかったということがわかれば、改めることができる。
【高齢者における低血糖の悪影響】
①低血糖が月1回以上であるとうつ症状が増える
②低血糖の頻度が多いと糖尿病負担感が増える
③低血糖の頻度が多いとWell-beingが低下
④低血糖が年3回以上であると転倒しやすい
⑤重症低血糖は認知症の危険因子
⑥重症低血糖は死亡を増やす(不整脈、自律神経異常、易血栓性を介する)
高血糖よりも低血糖のほうが危ない?
高血糖よりも低血糖のほうが危ない、好きなものを食べて死んだほうが本望、と言って糖尿病の薬を飲まない患者さんがいます。
確かに糖尿病自体で死ぬことは今はあまりありません。
インスリンが発見される前は、糖尿病性昏睡で死に至るケースが多かったようですが。
糖尿病で怖いのは合併症です。
怖い糖尿病の合併症
糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害が糖尿病の3大合併症と言われています。
網膜症で失明になり、神経障害で足を切断し、腎症で透析治療を受けることになります。
3大合併症は細小血管障害と言われ、細い血管に起こる障害ですが、それより怖いのは心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害です。
死亡原因の上位を占めます。
確かに症状が出たときは、低血糖のほうが高血糖よりも怖いですが・・・何事もバランスです。血糖値をコントロールすることが大事です。
厳格な血糖管理と低血糖
2008年に海外にて高齢の糖尿病患者に対して厳格に血糖を管理して予後を評価したACCORD、ADVANCE、VADTが発表された。
いずれも予後の改善に至らず、ACCORD試験では厳格に血糖コントロールをすることで心血管病そのものは低下したが、特に罹病期間が長く、動脈硬化が進展した症例で重症低血糖が発生した場合には死亡率が高まってしまうことが明らかになり、厳格な血糖コントロールの際にいかに低血糖を回避させるかということが大きな課題として注目された。
重症低血糖が増えている
糖尿病治療薬による低血糖という問題は以前より存在していたが、近年糖尿病患者に対してより厳格な血糖コントロールが推奨されるようになったこともあり、糖尿病治療薬による重症低血糖の患者数が年々増えてきている。
重症低血糖とは、「血糖値が50mg/dL以下で意識障害をきたし、受診・治療に第三者の援助を必要とする低血糖」と定義されることが多い。
低血糖による脳障害は、血糖値改善後、しばらくして意識が改善する可逆的な脳障害と血糖値改善後も意識障害が残る不可逆的な脳障害の大きく二つに分けられ、臨床現場で遭遇する低血糖症はほとんどが前者であるが、後者の中には意識障害が遷延し植物状態に至る重篤な後遺症を残す症例や肺炎などを併発し死亡する症例も存在する。
重症低血糖患者の大半はSU薬を内服している高齢者である。
しかし、その現状は糖尿病治療の現場でまだ十分に認識されていないように思われる。
低血糖の症状
低血糖の早期に現れる症状のほとんどは、急激な血糖降下に反応した交感神経の刺激症状です。
この時点で適切な処置をとらないと、低血糖状態が長引き、酸素と同様にブドウ糖が脳に供給されず不足するため、脳細胞が正常に活動しなくなり、次第に中枢神経系が機能低下に陥ります。
そして、疲労感、集中力の低下、健忘、嗜眠などの症状が現れ、ひどくなると意識障害、痙攣、異常行動が起こり、やがて昏睡になり死に至ります。
なお、低血糖症状として頭痛や霧視など、自律神経症状とも中枢神経症状ともいえない症状が現れることがあります。
交感神経刺激症状は、血糖を回復させようとするフィードバック機構の現れであり、「糖質を取りなさい」と促す警告信号です。
したがって、交感神経刺激症状が現れない場合は低血糖に気付かず、意識障害の出現に対応する暇もなく昏睡に陥るおそれがあります。
生体は通常、血糖低下に伴って階層的な反応を示す。
血糖値が80mg/dL付近まで低下すると、まずインスリン分泌が抑制され、70mg/dL以下になるとインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン、アドレナリン、ノルアドレナリン、成長ホルモンなど)の分泌が開始され、さらに60mg/dL前後になると、カテコラミンやアセチルコリンの分泌が増加し、自律神経症状(いわゆる警告症状)が発現するとされている。
血糖値が50mg/dL以下になると、中枢神経のグルコース欠乏症状が出現し、ついには痙攣や意識障害(昏睡)へと進行する。
低血糖症状が始まる血糖値は症例により異なるが、一般的には60mg/dLを下回ると種々の症状が発現することから、60mg/dL以下を低血糖とみなすことが多い。
「お腹が空いた。これは低血糖の症状だ!」といって間食バクバクしてたら、糖尿病の治療はできません。
かといって低血糖症状を我慢する行為は危険。
数字だけで判断することも危険。
低血糖を「○mg/dl以下」というように数字で定義してしまいがちですが、低血糖は数字ではありません。
症状をきたすほど血糖値が低くなったものを低血糖と言います。
症状をきたしている低血糖には必ず対応しなければなりませんが,低めの血糖値に対してどこまで対応するかはケースバイケースです。
数字だけで判断すると対応を誤る危険があります。
低血糖の症状は二つに分けられます。
一つはブドウ糖不足のために中枢神経機能が低下した状態で、中枢神経症状と言われます。もう一つは、中枢神経を守るために血糖値が自律的に反転上昇しようとしている反応で、それに伴う一種の副作用を低血糖症状として感じています。これが警告症状、自律神経症状と言われるものです。
警告症状の出る血糖値は個人・体調によって変わってきます。低血糖が数字で定義できない所以です。
警告症状の出始めた時、血糖値の上昇を少し手助けするつもりでブドウ糖10gを服用すれば中枢神経症状の出現は予防することができます。この段階で対応して後遺症が残ることはありません。我慢する、様子をみるということは非常に危険なことです。
血糖値の変動の激しい患者で、「眠気が高血糖によるものか、低血糖によるものかわからない」という患者もいた。
低血糖の対応は難しく、一筋縄ではいかないと感じる。
患者自身が低血糖の感覚を認識し、適切な対応を取れているか、チェックする必要がある。
高齢者は欠食が多い?
高齢者が「食べられない」というのは、、夏バテなどもありますが、よく経験するのが欠食です。
「今日は食べたくない」「面倒くさいから食べない」「昼を抜いてしまう」など、高齢になると欠食が多くなります。
たとえば朝遅く起きて、10時近くに朝食を食べて、それから夜まで何も食べないようなことはよくあります。
服薬指導では食事の指導も兼ねることが必要です。
特にSU薬の場合、食事と食事の間隔が長くなってしまうとどこかで血糖が下がって、無自覚性の低血糖を起こしている可能性もあります。
低血糖に慣れる?
低血糖症状には、血糖が50~70mg/dL程度に下降した場合に出現する自律神経刺激症状と、中枢神経系のグルコース欠乏症状とがある。
自律神経症状は、低血糖に対する対処を促す警告症状と考えられる。
しかし、何度も低血糖を繰り返す例では、自律神経刺激症状が出現せず、40~50mg/dL以下まで下降してから初めて中枢神経系のグルコース欠乏症状を来す場合がある。
この症状は、初期は認識力や集中力が低下する程度だが、さらに進行すると行動異常、せん妄、けいれん、傾眠傾向などが出現し、対処が遅れると意識障害から昏睡に至ることもある。
自分では低血糖状態であることが自覚できないことが多く、発見が遅れると低血糖性昏睡も来す非常に危険な状態である。
無自覚低血糖の原因は、頻回の低血糖発作と糖尿病性自律神経障害にあると言われている。
低血糖を頻回に繰り返すと低血糖の応答の閾値が下方にセットされ、拮抗ホルモンの分泌も自律神経系の症状も通常よりさらに血糖が下降しないと起こらなくなる。
また、糖尿病性自律神経障害は自立神経刺激症状を減弱させる。
インスリン治療が必要な1型糖尿病患者だけでなく、罹病期間の長い2型糖尿病の患者にも無自覚低血糖は起こることがあり、高齢で低血糖症状がはっきりしない例や神経障害が強い例などでは注意が必要である。
重症低血糖を未然に発見するためには、低血糖が起こりやすい時間に定期的な血糖測定を行ったり、仕事や家事、運動、食事などの生活スケジュールを総合的に考慮していかなければならないと考えられる。
低血糖と動悸
低血糖状態でも動悸が生じる。
低血糖状態では、副腎の髄質からはアドレナリンが分泌され、α受容体またはβ受容体が優位な器官では、交感神経の興奮が起こり、機能亢進が始まる。
不足している糖の動員をかけるべく、β受容体を介して、肝臓でのグリコーゲンの分解(糖新生)が促進され、ブドウ糖が遊離される。
心臓はβ受容体を介して興奮し、機能が亢進する。
その結果、心拍数が増え、心臓の収縮力も増し、血圧を上げようとするため、動悸や頻脈を感じることになる。
アドレナリンの分泌は、それ自体が不安感やイライラ感を起こす。
α受容体が興奮すると血管は収縮し、顔色は蒼白になり、ふるえが起こる。
交感神経が興奮することで発汗が増え、特に、額、手のひら、脇の下などに冷や汗として感じることが多い。
悪心や脱力感を覚える人もいる。
夏は低血糖が多い?
夏は夏バテで食欲不振とか、エネルギー消費も増えるため、血糖値は比較的下がる傾向がみられる。
また、汗をかいて塩分が抜けるため、血圧も下がり気味。
そういった理由で、薬が変更になる患者さんもみられる。
過去2~3ヵ月の平均血糖値を示すヘモグロビンA1Cは、3月にピークになって、9月に一番低くなるという疫学研究が日本にも米国にもあります。
3月ピーク説は、クリスマス、お正月などの不摂生と冬場の運動不足が影響すると考えられています。
寒冷地では、雪かきをするので、逆に低血糖がみられることもあります。
単なる食生活の変化や運動不足ではなく、動物が本来持つ性質、冬場にエネルギーを蓄えるという、冬眠プログラム的な遺伝子の役割が関係しているのではないかという指摘があります。
いつもと同じように運動も食事制限もがんばっている患者さんに向かって、「年末年始はハメを外しちゃいましたか?」的なことを言うのは間違っている可能性もある。
寝汗は低血糖症状?
夏の暑い時期、寝苦しい日々が続きます。
健康な人でも寝汗はかくので、「たかが寝汗」と思いがちですが、糖尿病の患者さんでは、危険な状態が隠れている場合もあるので注意が必要。
夜間の低血糖は危険。
夜間に低血糖、昏睡、治療が遅れ、死に至る。
血糖値が、約65~70mg/dLに低下すると、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始める。
アドレナリンの大量放出により、大量の冷や汗をかくわけだ。
寝ている間は無自覚で、目が覚めたときに、布団がぐっしょり濡れていることに気付く。
冬場の寝汗は異常に気付くであろうが、夏場の寝汗はただ単に暑いからと思いがち。
寝汗が続くようであれば、目が覚めたときに血糖自己測定を行い、低血糖が起きていないか確認する必要がある。
インスリンや血糖降下薬の減量が必要になることも。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。