記事
アクトスは膀胱がんのリスクを高めるのか?
公開. 更新. 投稿者: 55 ビュー. カテゴリ:糖尿病.この記事は約4分49秒で読めます.
目次
アクトスは膀胱がんのリスクを高めるの?

糖尿病の薬のひとつである
アクトス(一般名:ピオグリタゾン)について、
「膀胱がんのリスクがあると聞いたことがある」
という方は少なくありません。
実際、この話題は10年以上前に大きく取り上げられ、
今でも不安に感じている方がいらっしゃいます。
では、今の医学的な評価はどうなっているのでしょうか。
まず結論からお伝えします
現在の考え方を一言でまとめると、次のようになります。
アクトスを使うことで、膀胱がんが少し増える可能性は完全には否定できません。
ただし、「はっきりと原因になる」と断言できるほど強い証拠もありません。
そのため、
・誰にでも使ってはいけない薬ではありません
・しかし、使う人はきちんと選ぶ必要がある薬
という位置づけになっています。
日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでも、
「注意しながら使う薬」として今も使われています。
どうして「膀胱がんの話」が出てきたの?
2010年前後、海外で行われた大規模な調査で、
・アクトスを長く使っている人
・アクトスをたくさん使っている人
に、
膀胱がんが少し多いかもしれない
という結果が出ました。
このため、
・アメリカ
・ヨーロッパ
・日本
それぞれの国の医薬品を管理する機関が、
「注意が必要かもしれない」と発表しました。
この時期にニュースなどで取り上げられたため、
「アクトス=膀胱がん」という印象が強く残ったのです。
では、その後どうなったの?
それから10年以上が経ち、
より多くのデータが集まりました。
その結果、わかってきたことは次のような点です。
リスクがあるかもしれない、というデータはある
いくつかの研究では
「使っていない人より、少しだけ膀胱がんが多い」
という結果が出ています。
しかし、関係がはっきりしない研究も多い
別の研究では
「差は見られなかった」
という結果もあります。
つまり、
研究によって結論が分かれている
というのが正直なところです。
なぜ結論がはっきりしないの?
ここがとても大事なポイントです。
膀胱がんは、
・喫煙
・年齢
・職業(化学物質など)
・糖尿病そのもの
など、いろいろな要因で起こる病気です。
アクトスを使っている人は、
・糖尿病が重い
・他の薬が使いにくい
・体の状態が複雑
ということも多く、
「薬のせいなのか」「もともとの体質なのか」
をはっきり分けるのが難しいのです。
そのため、
「関係がありそうだ」と言うことはできても、
「原因です」と言い切ることはできない、
という状況が続いています。
海外では使われていないの?
いいえ、今も使われています。
アメリカ・ヨーロッパの考え方
現在、欧米の医療機関では次のように考えられています。
・膀胱がんが今ある人 → 原則使わない
・膀胱がんにかかったことがある人 → 慎重に検討
・血尿(赤い尿)が原因不明で出ている人 → まず検査
これらに当てはまらない人では、
メリットがあれば使用してよい
とされています。
つまり、
「危ないからやめた薬」ではなく、
「使う人を選ぶ薬」
という扱いです。
「少し増えるかも」とは、どれくらい?
ここで大切なのは、数字の見方です。
研究で言われているのは、
「1.2倍」「1.3倍」などの相対的な増え方です。
これは、
・もともと膀胱がんになる人がとても少ない場合
・その中で、少し増えた
という意味です。
そのため、
ほとんどの人にとって、急に大きな危険が生じるわけではありません。
ただし、
・喫煙している
・血尿が出たことがある
・膀胱の病気をしたことがある
といった人では、
慎重に考えた方がよい、
ということになります。
実際にアクトスを使うときのポイント
患者さん向けに、特に大事な点をまとめます。
① 使い始める前に確認すること
・膀胱がんにかかったことがあるか
・原因のわからない血尿がないか
これらがある場合は、
必ず医師に伝えてください。
② 使っている間に気をつける症状
次のような症状が出たら、
すぐに受診してください。
・尿が赤くなる
・排尿時の痛み
・急にトイレが近くなった
多くの場合は別の原因ですが、
念のため調べることが大切です。
③ 「不安だからやめたい」と思ったら
自己判断でやめるのではなく、
「こういう話を聞いて不安です」
と、医師や薬剤師に相談してください。
アクトスには、
・インスリンの効きを良くする
・血糖値を安定させる
という良い面もあります。
他の薬に替えた方が良い場合もあれば、
「今のままで大丈夫」と判断されることもあります。
まとめ:今の時点で言えること
最後に、もう一度整理します。
アクトスと膀胱がんについては
「少し増えるかもしれない」という可能性が指摘されている
しかし、
はっきりした原因だと断言できる証拠はない
そのため、
・膀胱がんのある人・疑いのある人では使わない
・それ以外の人では、注意しながら使う
というのが現在の考え方
不安があるときは、
「やめる」ではなく「相談する」ことが大切
薬剤師・医療者の立場からひとこと
この薬は、
「怖いから全部ダメ」でも
「問題ないから気にしなくていい」でもありません。
その人にとって、使う意味があるかどうか
を考えて選ぶ薬です。




