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膀胱炎で発熱する?―熱があったら腎盂腎炎を疑う?
公開. 更新. 投稿者: 90 ビュー. カテゴリ:風邪/インフルエンザ.この記事は約5分15秒で読めます.
膀胱炎と腎盂腎炎

膀胱炎の患者に抗菌薬が処方されていたとき、服薬指導で何を確認するでしょうか。
「排尿するとき痛みますか?」
「トイレが近いですか?」
「血尿はありませんか?」
このあたりは典型的な確認事項ですが、もう一つ聞いておきたいのが、
「熱はありませんか?」
という質問です。
一般に、単純な膀胱炎では高熱は出ません。
一方、膀胱からさらに上へ感染が広がり、腎盂・腎実質まで炎症が及んだ腎盂腎炎では発熱が重要な症状になります。
そのため、
「膀胱炎+発熱」→本当に膀胱炎だけなのか?
と考えることが大切です。
膀胱炎ではなぜ発熱しない?
尿路感染症は、感染している場所によって大きく分けられます。
- 尿道炎
- 膀胱炎
- 腎盂腎炎
膀胱炎は、主として膀胱に感染が限局した下部尿路感染症です。
典型的な症状として、
- 排尿時痛
- 頻尿
- 尿意切迫感
- 残尿感
- 下腹部の不快感・痛み
- 血尿
などがあります。
一方で、発熱や悪寒などの全身症状は通常みられません。
もちろん微熱などを完全に否定することはできませんが、38℃以上の発熱や悪寒・戦慄を伴っているのであれば、「膀胱炎だから熱が出た」と簡単に考えないほうがよいでしょう。
腎盂腎炎では発熱する
腎盂腎炎は、細菌感染が腎盂や腎実質まで及んだ上部尿路感染症です。
多くの場合、尿道から侵入した細菌が、
尿道 → 膀胱 → 尿管 → 腎盂・腎臓
と上行することで発症します。
膀胱炎では局所的な排尿症状が中心ですが、腎盂腎炎では全身性の炎症反応が起こりやすくなります。
そのため、
- 発熱
- 悪寒
- 戦慄
- 倦怠感
- 悪心・嘔吐
- 側腹部痛
- 腰背部痛
などがみられます。
特に、
「発熱+腰・背中・脇腹の痛み」
という組み合わせは腎盂腎炎を疑う重要な手掛かりになります。
膀胱炎と腎盂腎炎の違い
大まかに整理すると次のようになります。
| 症状 | 膀胱炎 | 腎盂腎炎 |
|---|---|---|
| 排尿時痛 | ○ | ○の場合あり |
| 頻尿 | ○ | ○の場合あり |
| 尿意切迫感 | ○ | ○の場合あり |
| 血尿 | ○ | みられることがある |
| 下腹部痛 | ○ | みられることがある |
| 発熱 | 通常なし | ○ |
| 悪寒・戦慄 | 通常なし | ○ |
| 腰背部・側腹部痛 | 通常なし | ○ |
| 悪心・嘔吐 | 通常なし | みられることがある |
つまり、
膀胱炎=排尿症状が中心
腎盂腎炎=発熱などの全身症状+腰背部・側腹部痛
というイメージを持っておくと分かりやすいでしょう。
「膀胱炎+38℃の発熱」なら腎盂腎炎?
ここで注意したいのは、発熱だけで腎盂腎炎と確定できるわけではないことです。
発熱の原因は尿路感染症以外にも多数あります。
しかし、
典型的な膀胱炎では高熱は通常みられない
という点が重要です。
したがって、
「膀胱炎と言われました。排尿すると痛いです。でも39℃の熱もあります」
という患者であれば、
「膀胱炎だから熱が出ているのでしょう」
ではなく、
「上部尿路感染症ではないか?」
と考える必要があります。
特に悪寒・戦慄、腰背部痛、側腹部痛、悪心・嘔吐などを伴っている場合には注意が必要です。
「熱がないから腎盂腎炎ではない」とも限らない
反対方向の思い込みにも注意します。
腎盂腎炎=必ず発熱する
わけではありません。
特に高齢者では典型的な症状が出にくく、明確な発熱がみられない場合があります。
また、解熱鎮痛薬を使用していたり、すでに抗菌薬が開始されていたりすれば、受診時・来局時には発熱が目立たなくなっている可能性もあります。
したがって、
発熱がないことだけを根拠に腎盂腎炎を否定することはできません。
患者背景やその他の症状を含めて判断する必要があります。
膀胱炎から腎盂腎炎になることもある
膀胱炎と腎盂腎炎はまったく別々の感染症というより、尿路の異なる場所に起こった感染症として連続的に考えることができます。
膀胱内に存在する細菌が尿管を上行して腎臓まで到達すれば、腎盂腎炎を起こす可能性があります。
そのため、膀胱炎として治療を開始した患者についても、
「あとから発熱してきた」
という場合には注意が必要です。
例えば、
「昨日から膀胱炎の薬を飲んでいるけど、今日になって38.5℃の熱が出てきた」
という訴えであれば、単に「抗菌薬が効くまで少し時間がかかります」と説明して終わらせず、症状の悪化や上部尿路感染症への進展を考える必要があります。
薬局で「熱はありますか?」と聞く意味
膀胱炎に対する抗菌薬が処方されている患者では、薬剤師は薬の使い方だけでなく、現在の症状について確認しておきたいところです。
例えば、
「熱はありませんか?」
「寒気や震えはありませんか?」
「腰や背中、脇腹が痛くありませんか?」
「吐き気や嘔吐はありませんか?」
といった質問です。
これらは、単純な膀胱炎として矛盾しない症状なのか、それとも腎盂腎炎などを疑うべき状態なのかを考える材料になります。
特に、
発熱+悪寒・戦慄+腰背部・側腹部痛
があれば、薬局でも注意したい組み合わせです。
抗菌薬の処方からも考える
膀胱炎と腎盂腎炎では、同じ「尿路感染症」であっても治療の考え方が同じとは限りません。
感染部位や重症度によって、選択される抗菌薬、投与量、投与期間、場合によっては静注治療や入院の必要性も変わります。
そのため、処方箋に抗菌薬が記載されているからといって、
「尿路感染症ならこの抗菌薬で大丈夫だろう」
と薬だけを見るのではなく、
どこの尿路感染症を治療しているのか
という視点を持つことが重要です。
「膀胱炎」と聞いていた患者に高熱や腰背部痛があるのであれば、診断・治療方針と患者の現在の状態が一致しているのか確認する意味があります。
高齢者ではさらに判断が難しい
高齢者の尿路感染症では、典型的な排尿時痛や発熱がはっきりしないことがあります。
一方で、
- 食欲低下
- 元気がない
- ADLの低下
- 意識状態の変化
など、非特異的な症状が前面に出ることもあります。
また、高齢者では無症候性細菌尿も珍しくありません。
つまり、
「尿から細菌が出た=尿路感染症」
とも限りません。
若い女性の典型的な単純性膀胱炎と、高齢者の尿路感染症では、同じようには考えられない点にも注意が必要です。
まとめ
「膀胱炎では発熱しない、腎盂腎炎では発熱する」
これはかなり有用な覚え方ですが、厳密には、
「単純性膀胱炎では高熱などの全身症状は通常みられず、発熱があれば腎盂腎炎など上部尿路感染症を疑う」
と理解するのがよいでしょう。
逆に、腎盂腎炎でも必ず発熱するとは限りません。
薬局で膀胱炎の患者に抗菌薬を渡すときには、
「熱はありませんか?」
という一言が重要です。
さらに、
発熱、悪寒・戦慄、腰背部・側腹部痛、悪心・嘔吐
などがないか確認することで、「単純な膀胱炎として考えてよい患者なのか?」という視点を持つことができます。
処方箋に「膀胱炎」と書かれていなくても、抗菌薬の処方と患者からの聞き取りから尿路感染症が推測されることがあります。
そんなとき、
膀胱炎=排尿症状
腎盂腎炎=全身症状+上部尿路の症状
という違いを頭に入れておくと、処方鑑査や服薬指導にも役立つでしょう。



