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アクトス・メトグルコ以外のインスリン抵抗性改善薬
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約8分52秒で読めます.
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インスリン抵抗性改善薬
インスリンが効きにくい体質(インスリン抵抗性)を改善する薬というのがある。
アクトスやメトグルコである。
しかし、糖尿病に用いられる薬以外にもインスリン抵抗性を改善する薬がある。
ミカルディスやベザトールである。
インスリン抵抗性
血中インスリン濃度に見合ったインスリン作用が得られない状態であり、インスリン受容体の減少、インスリン拮抗物質の存在、インスリン受容体からの細胞内へのシグナル伝達異常などが考えられる。
インスリン抵抗性には、内臓脂肪の蓄積が関与するといわれている。
ミカルディスとインスリン抵抗性改善作用
ミカルディス(テルミサルタン)は、2型糖尿病治療薬のうちインスリン抵抗性改善薬のアクトス(ピオグリタゾン塩酸塩)と同様に、チアゾリジン環を構造式の中に含んでいる。
チアゾリジン環を持つ物質は、核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に特異的に結合してこれを活性化し、遺伝子発現を調節することでインスリン抵抗性を改善すると考えられている。
ARBのうち、イルベサルタン(イルベタン/アバプロ)やオルメサルタンエmドキソミル(オルメテック)も同様にこのPPARγ活性化作用を持ち、インスリン抵抗性を改善することが確認されている。
PPAR
PPARとは、核内受容体ファミリーの一つ。
核内受容体とは細胞内タンパク質の一種であり、ホルモンなどが結合することで細胞核内でのDNA転写を調節する受容体である。発生、恒常性、代謝など、生命維持の根幹に係わる遺伝子転写に関与している。
現在までにα,γ,δ(β)の三つのサブタイプが報告されています。
最初に発見されたαサブタイプ(PPARα)がペルオキシソーム増殖剤であるフィブラート系薬剤により活性化されたことからその名が付いた。
炭化水素,脂質,タンパク質等の細胞内代謝と細胞の分化に密接に関与している転写因子群であるとされている。いずれのサブタイプもレチノイン酸Xレセプター(RXR)とヘテロ2量体を形成してAGGTCA配列が二つ繰り返したペルオキシソーム増殖剤応答配列(PPRE)に結合する.
PPARα
ベザトールやリピディルはPPARαを活性化する。
PPARαは肝臓や褐色脂肪組織、心臓、腎臓で強く発現しており,遊離脂肪酸やロイコトリエンB4などを生理的なリガンドとして活性化され,ペルオキシゾームの増生を通じて血中トリグリセリド濃度の低下を導く。外因性リガンドとしてはベザフィブラート,クロフィブラートなどのいわゆるフィブラート系の薬物、プラスチック可逆剤がある.標的遺伝子のほとんどは脂質代謝関連の遺伝子であり、高脂血症改善薬の主要な標的となっている。
PPARγ
アクトス、ミカルディスやイルベタンはPPARγを活性化する。
PPAR-γには3つのフォームが知られている。
PPAR-γ1は心臓、筋肉、結腸、腎臓、膵臓、脾臓を含む多くの組織、PPAR-γ2はPPAR-γ1よりも30アミノ残基だけ長く、主に脂肪組織、PPAR-γ3はマクロファージ、大腸、白色脂肪組織で発現している。15-デオキシプロスタグランジンJ2を生理的リガンドとして活性化され、脂肪細胞分化に必須の転写因子であり、筋肉でのグルコース取り込みを活性化する。
PPAR-γは組織のインスリン感受性を亢進させる糖尿病治療のターゲットの一つとなっているほか、免疫過程への関与も指摘されている。外因性リガンドとしてはロシグリタゾンやピオグリタゾンのようなチアゾリジン系の薬剤があり、これらの薬物によるインスリン抵抗性の改善に関与すると考えられている。
PPARδ
PPARδは調べられたすべての臓器で発現している。長鎖脂肪酸がリガンドとして作用することが報告されているが、その機能についてはよくわかっていない。
アクトスとPPAR
グリダゾン系薬の標的はPPARγと呼ばれる核内受容体ファミリーの一つです。
PPARγは他の核内受容体RXRと2量体を形成して転写因子として作用します。
グリタゾンはPPARγに結合してこれを活性化し、その結果、PPARγは特定遺伝子の転写調節領域に結合して遺伝子発現を誘導します。
PPARγにより調節を受ける遺伝子群としては解糖、脂肪酸β酸化などの糖・脂質代謝に関与するものが報告されています。
また、PPARγにはγ1,2,3の三種類が存在し、その中でもγ2は脂肪細胞に選択的に発現している特徴を有しています。
PPARγが前駆細胞から脂肪細胞への分化を促進する作用を有すること、γ2が脂肪細胞に選択的に発現していることなどに注目して、現在定説とされているグリタゾンの作用機序は、脂肪細胞に対する作用に焦点が絞られています。
グリタゾンは脂肪細胞のPPARγに作用してアジポネクチンの産生を増強し、その一方でTNFαと遊離脂肪酸の産生を低減することにより、肝臓や筋肉などの標的組織におけるインスリン抵抗性を改善するという説です。
TNFαと遊離脂肪酸はインスリン抵抗性を引き起こす因子ですので、その低減は標的組織のインスリン抵抗性を改善します。
一方、アジポネクチンもAMPキナーゼの活性化を介して糖輸送担体GLUT4の細胞膜への移行促進、脂肪酸のβ酸化促進などによりインスリン抵抗性を改善します。
この説はインスリン抵抗性の改善をよく説明するものですが、PPARγ1,3は脂肪細胞以外の組織でも発現しており、標的組織のPPARγに対する直接的なグリタゾンの作用も考慮することが必要であると考えられます。
アクトスとアディポサイトカイン
チアゾリジン薬であるアクトス(ピオグリタゾン)は、脂肪細胞に存在するペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPAR)γに作用して、肥大した脂肪細胞を小型の脂肪細胞に分化させる働きがある。
その結果、善玉アディポサイトカイン(アディポネクチン)を増加させ、悪玉アディポサイトカインを減らすことで、インスリン抵抗性を改善する薬である。
肥満を伴う2型糖尿病では、悪玉アディポサイトカインの過剰分泌によるインスリン抵抗性を示していることが多く、そうした場合にチアゾリジン薬は、特に大きな血糖低下作用を発揮する。
ベザトールとPPAR
フィブラート系薬は、核内受容体の一つであるペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPARα)に作用し、主に脂質代謝に関わる遺伝子の発現をコントロールすることで、脂質代謝を改善する。
また、ベザフィブラートは他のフィブラート系薬と異なり、インスリン抵抗性に関与するとされているPPARγにも働く。
このことから、PPARγの活性化を介してインスリン抵抗性を直接改善すると考えられている。
インスリンには、脂肪組織の血管内皮細胞表面に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性化を介して、血中トリグリセリドの脂肪細胞内への取り込みを促進する作用がある。
糖尿病やインスリン抵抗性があるとインスリンの作用不足によりLPL活性が低下し、高トリグリセリド血症を呈する一方、インスリン抵抗性を改善すると、このような代謝異常は是正される。
アディポサイトカイン
脂肪組織から分泌される多彩な内分泌因子を総称してアディポサイトカインと呼んでいます。
肥満、つまり脂肪蓄積状態においては、アディポサイトカインの産生・分泌が過剰あるいは過少となり、このバランスの破綻がメタボリックシンドロームの発症・進展に深く関わることが明らかになりました。
善玉アディポサイトカインと悪玉アディポサイトカイン
インスリン感受性を高め動脈硬化を抑制するアディポネクチンのような、いわゆる善玉アディポサイトカインもあれば、炎症性サイトカインとして知られるTNF-αやIL-6のようにインスリン感受性を低下させたり動脈硬化促進作用がある悪玉アディポサイトカインもあります。
肥満に伴って脂肪細胞のサイズが大きくなりますと(肥大化)、非肥満の状態における小さい脂肪細胞とは異なったアディポサイトカインの分泌パターンを示します。
メカニズムについては、全容が解明されたわけではありませんが、脂肪細胞の肥大化に伴ってマクロファージが脂肪組織に引き寄せられて活性化され、サイトカインを分泌するようになり、そのサイトカインにより悪玉アディポサイトカインが誘導されるといわれています。
脂肪は人体最大の内分泌臓器
脂肪というとアブラの塊、やっかいものといったイメージで、よくいってもせいぜい、エネルギーの貯蔵庫くらいの印象です。
しかし、実は人体最大の内分泌臓器なのです。
脂肪から分泌される生理活性物質は様々ですが、そのほとんどは、インスリン抵抗性を起こしたり、動脈硬化を促進させる悪玉因子としての働きを持つものです。
生理活性物質のなかで唯一、アディポネクチンは動脈硬化を抑制する働きがあるのですが、脂肪細胞が肥大化すると逆に分泌が低下してしまいます。
従来、脂肪細胞は余剰エネルギーを貯蔵するだけの細胞と考えられていました。
しかし、研究が進むにつれ、脂肪細胞由来のホルモンやサイトカインが見つかり、今では脂肪組織は生体の恒常性維持に不可欠な内分泌臓器として認知されています。
この脂肪細胞の集まりである脂肪組織は生体で15~30%の容量を占めることから、脂肪組織は生体最大の内分泌臓器といえます。
内臓脂肪と皮下脂肪の違い
内臓脂肪は落ちにくい、と勘違いしてました。
内臓脂肪は落ちやすいです。
皮下脂肪の方が内臓脂肪に比べて落ちにくいです。
内臓脂肪は脂肪が血液によって運び込まれたり、運び出されたりするので、付き易く、落ち易いといわれています。
体脂肪に比べて内臓脂肪の間には毛細血管がずっと多く通っているため、エネルギーとして脂肪が使われるときに皮下脂肪よりも運び出されやすいからです。
内臓脂肪は、有酸素運動で簡単に落ちます。ダイエット開始直後お腹がへこむのは最初に落ちやすい内臓脂肪が減るからといわれています。
それに比べて、皮下脂肪は頑固で落ちにくく、有酸素運動や筋トレ、食事制限を全て全力で立ち向わないと落ちません。お腹の上の摘める皮下脂肪はいつまで経っても頑固に残ります。
体重の5~7%の減少で内臓脂肪は20~30%減少し、糖・脂質代謝が改善します。
少しの減量でも効果的なのです。
洋なし型よりりんご型肥満のほうが危険?
肥満には「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」があり、内臓脂肪型肥満は心臓病や脳梗塞などの危険因子として注目を集めている。
内臓脂肪型肥満は「リンゴ型肥満」とも呼ばれ、腹部に脂肪がたまり皮下脂肪だけでなく内臓の周りにも脂肪がついている場合が多く、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が発生しやすいことが知られている。
一方、臀部や大腿部に脂肪がたまった皮下脂肪型肥満は「洋なし型肥満」と呼ばれ生活習慣病への危険性は少ないとされている。
お尻や太ももの肉より、お腹まわりの肉を気にしましょう。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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