記事
麻薬は二重扉ダイヤル式金属製重量金庫に保管しなきゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:癌性疼痛/麻薬/薬物依存.この記事は約8分47秒で読めます.
9,149 ビュー. カテゴリ:医薬品の管理と法律
麻薬を保管する金庫って何でもいい?
皆さんの薬局では麻薬は扱っていますでしょうか?
管理が面倒だし、小売業免許の更新手数料もかかるし、デッドストックになる可能性も高いので、経営的には麻薬は扱わないとしたほうが良いので、「うちの薬局では麻薬は取り扱っていないので他所でもらってください」としている薬局もあると聞く。
そんな麻薬の管理について。
麻薬は麻薬専用の金庫で保管しています。
その他、毒薬、覚せい剤原料、向精神薬などを鍵の付いた引き出しで保管していますが、これらの保管場所は法律に基づいた保管場所です。
日々当たり前のように行っている業務は、法律に基づいています。
「イチイチ鍵かけんのメンドクセー」と思う気持ちもわかりますが、法令違反になるので、万が一何かあったときに、もっと面倒なことになるので、根拠法を理解し遵守しましょう。
麻薬の管理
まず麻薬の保管について、「麻薬及び向精神薬取締法」に以下のように書かれている。
(保管)
第三十四条 麻薬取扱者は、その所有し、又は管理する麻薬を、その麻薬業務所内で保管しなければならない。
2 前項の保管は、麻薬以外の医薬品(覚せい剤を除く。)と区別し、かぎをかけた堅固な設備内に貯蔵して行わなければならない。
「かぎをかけた堅固な設備内」とはどのようなものか?
鍵の付いた薬品棚ではダメなのか?
厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の「薬局における麻薬管理マニュアル」 には、以下のように書かれている。
第3 管理・保管(法第 34 条)
(1) 麻薬小売業者は、その業務所における麻薬の譲受け、保管、交付等の管理を薬剤師である 麻薬小売業者(薬局開設者)が自ら行うか、若しくは管理薬剤師に行わせる必要があります。
(2) 麻薬小売業者が所有する麻薬は、薬局内に設けた鍵をかけた堅固な設備内に保管しなけれ ばなりません。 なお、「鍵をかけた堅固な設備」とは、麻薬専用の固定した金庫又は容易に移動できない金 庫(重量金庫)で、施錠設備のあるものをいいます。(手提げ金庫、スチール製のロッカー、 事務机の引き出し等は麻薬の保管庫とはなりません。)
(3) 麻薬の保管庫の設置場所は、薬局、調剤室、薬品倉庫等のうち、盗難防止を考慮し、人目に つかず、関係者以外の出入がない場所を選ぶことが望まれます。
(4) 麻薬保管庫内には、麻薬以外の他の医薬品、現金及び書類(麻薬帳簿を含む)等を一緒に入 れることはできません。(麻薬の出し入れを頻回に行う施設等にあって、1日の間の麻薬の 出し入れを管理するための書類を除く。)
(5) 麻薬保管庫は、出し入れのとき以外は必ず施錠し、鍵を麻薬保管庫につけたままにしない でください。
(6) 定期的に帳簿残高と在庫現品を照合し、在庫の確認を行ってください。
麻薬専用の重量金庫に保管する必要がある。金庫の鍵は出し入れの時以外は常に施錠しておく必要がある。
「麻薬及び向精神薬取締法」では、「麻薬以外の医薬品(覚せい剤を除く。)と区別し」と書かれているので、麻薬と覚せい剤は同じ金庫で保管することが可能だが、「麻薬管理マニュアル」には、「麻薬以外の他の医薬品を一緒に入れることはできません」と書いてある。
覚せい剤原料(エフピー、ビバンセ)は覚せい剤とは違う。
覚せい剤には、ヒロポン(メタンフェタミン)があるが、事実上取り扱える医療機関は限られており、普通の薬局には置いていない。
2018年(平成30年)現在、処方箋医薬品として「ヒロポン錠」「ヒロポン注射液」の二種類が製造されており、都道府県知事から施用機関の指定を受けた医療機関からの注文に対応している。また本薬品に関しては、製造業者から施用機関までの流通過程、施用した患者までが包装単位で記録保管されるなど、他の医薬品とは別格の厳しい管理がなされている。医師法第22条で、医師に処方箋の交付が義務化されているが、覚醒剤を投与するときには、例外的に処方箋を交付する必要がない。また、医師が自身に覚醒剤を自己処方することは禁じられている。
メタンフェタミン – Wikipedia
麻薬金庫については、「麻薬専用の鍵付き重量金庫」というだけでなく、保健所によってもっと細かい指定がされている。
新潟県福祉保健部医務薬事課の「麻薬・向精神薬・覚せい剤原料 取扱いの手引き」には以下のように書かれている。
(1) 麻薬保管庫は、次の基準に適合しなければなりません。
(ア)重量金庫又は固定された金庫であること。 なお、「重量金庫」とは、人が容易に移動することができない程度の重さを有する金庫をいう。 また、「固定された金庫」とは、床又は壁にボルト等により固定された金庫をいう。
(イ)金庫の扉は二重扉であり、各扉ごとに施錠できるものであること。 なお、重量金庫で扉が容易に破られない程度の厚さを有している場合には、「二重扉」と見なす。
(ウ)金庫の二重扉のうち一の扉は、ダイヤル式により施錠ができるものであること。 なお、暗証番号を入力すること等により施錠ができるものは、「ダイヤル式により施錠ができるもの」と同等と見なす。
注:一重扉の重量金庫にあっては、その扉にダイヤル錠とかぎによる施錠設備の 両方を有すること。
この基準を守って、私の薬局でも二重扉のダイヤル式金庫を麻薬金庫として使用していますが、ダイヤル式の開け閉めがメンドクセーことこの上ない。と当初思っていましたが、慣れればできないことは無い。
覚せい剤原料の管理
覚せい剤原料の管理については、「覚せい剤取締法」に以下のように書かれている。
(保管)
第三十条の十二 第三十条の七(所持の禁止)第一号から第七号までに規定する者(病院又は診療所にあつてはその管理者とし、飼育動物診療施設にあつてはその獣医師管理者とする。以下第三十条の十四において同じ。)は、その所有し、又は所持する覚せい剤原料をそれぞれ次に掲げる場所において保管しなければならない。
一 覚せい剤原料輸入業者、覚せい剤原料輸出業者、覚せい剤原料製造業者又は覚せい剤製造業者にあつては、その業務所若しくは製造所又は厚生労働省令の定めるところによりあらかじめ都道府県知事を経て厚生労働大臣に届け出た場所
二 覚せい剤原料取扱者にあつては、その業務所又は厚生労働省令の定めるところによりあらかじめ都道府県知事に届け出た場所
三 覚せい剤原料研究者又は覚せい剤研究者にあつては、その研究所
四 薬局開設者にあつては、その薬局
五 病院又は診療所の管理者にあつてはその病院又は診療所、往診医師等にあつてはその住所
六 飼育動物診療施設の獣医師管理者にあつてはその施設、往診のみによつて飼育動物の診療業務を自ら行う獣医師にあつてはその住所
2 前項の保管は、かぎをかけた場所において行なわなければならない。
「かぎをかけた場所」で保管すればよいので、麻薬ほど厳しくは無い。
愛知県が作っている「覚せい剤原料取扱いの手引き」には、具体的に以下のように書かれている。
鍵をかけた場所とは、施錠設備のある倉庫・薬品庫等のほかロッカー・金庫等の保管設備のことです。
(2) ロッカー・金庫等を保管設備として使用する場合は、次によってください。
① 保管庫は容易に破られない材質のものであり、かつ堅固な錠が付いていること。
② 保管庫が容易に持ち運びできる場合にあっては、床にボルト等により固定するこ
と。
③ 保管庫は、できるだけ人目に付かない場所であって、施錠設備のある室内に設置
すること。
※1 病院等の病棟で保管する場合も同様の保管設備が必要です。
※2 保管庫は、覚せい剤原料専用とすることが望ましいです。ただし、専用保管庫でない場合には、他のものと区別して保管して医薬品である覚せい剤原料と他のものと間違えるなどの事故に十分気をつけてください。
※3 麻薬保管庫には一緒に保管できません。
私の薬局では、覚せい剤原料は専用の鍵付き引き出しに保管していますが、覚せい剤原料以外の薬が入っていても違法ではない。
ただ、「覚せい剤原料専用とすることが望ましい」。
毒薬・劇薬の管理
毒薬・劇薬の管理については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」略して「医薬品医療機器等法」さらに略して「薬機法」に以下のように記載されている。
第四十八条
業務上毒薬又は劇薬を取り扱う者は、これを他の物と区別して、貯蔵し、又は陳列しなければならない。
2 前項の場合において、毒薬を貯蔵し、又は陳列する場所には、かぎを施さなければならない。
劇薬は他の医薬品と区別してあればよいが、毒薬は覚せい剤原料と同様の鍵付きの保管場所に保管する必要がある。
区別してあれば、専用の引き出しでなくても良いのだろうが、こちらも毒薬専用が望ましいであろう。
向精神薬の管理
向精神薬の管理については、「麻薬及び向精神薬取締法施行規則」に以下のように記載されている。
第四十条
向精神薬取扱者は、その所有する向精神薬を、その向精神薬営業所、病院等又は向精神薬試験研究施設内で保管しなければならない。
2 前項の保管は、当該向精神薬営業所、病院等又は向精神薬試験研究施設において、向精神薬に関する業務に従事する者が実地に盗難の防止につき必要な注意をする場合を除き、かぎをかけた設備内で行わなければならない。
麻薬、覚せい剤原料、毒薬については、常に施錠が必要ですが、向精神薬については、日中の業務中において部外者の侵入などに注意している間は、常に鍵を施す必要はない。
要指導医薬品・第一類医薬品の管理
要指導医薬品・第一類医薬品の管理については、「薬機法施行規則」に以下のように記載されている。
(医薬品を陳列する場所等の閉鎖)
第十四条の三 薬局開設者は、開店時間のうち、要指導医薬品又は一般用医薬品を販売し、又は授与しない時間は、要指導医薬品又は一般用医薬品を通常陳列し、又は交付する場所を閉鎖しなければならない。
2 薬局開設者は、開店時間のうち、要指導医薬品又は第一類医薬品を販売し、又は授与しない時間は、要指導医薬品陳列区画(薬局等構造設備規則第一条第一項第十一号ロに規定する要指導医薬品陳列区画をいう。以下同じ。)又は第一類医薬品陳列区画(同項第十二号ロに規定する第一類医薬品陳列区画をいう。以下同じ。)を閉鎖しなければならない。ただし、鍵をかけた陳列設備(同項第十一号イに規定する陳列設備をいう。以下同じ。)に要指導医薬品又は第一類医薬品を陳列している場合は、この限りでない。
3 薬局開設者は、薬剤師不在時間は、調剤室を閉鎖しなければならない。
私の薬局でも、鍵をかけた陳列設備に置いてあります。販売時に鍵を外して取り出して販売する。
ついでに帰宅時には、調剤室の鍵もかける必要がある。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。