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尿路結石に使う薬は?適応のある薬・ない薬の違い
公開. 更新. 投稿者: 48 ビュー. カテゴリ:腎臓病/透析.この記事は約7分56秒で読めます.
尿路結石に使う薬

尿路結石の患者に処方される薬には、ウロカルンやウラリットなどがあります。
一方、タムスロシンなどのα1遮断薬が尿管結石の排石目的で使われることもあります。
しかし、
「尿路結石に使われている薬=尿路結石の適応がある薬」
とは限りません。
さらに、尿路結石の薬といっても、
- 痛みを抑える
- 結石を排出しやすくする
- 結石を溶けやすくする
- 新しい結石ができるのを防ぐ
というように目的がまったく違います。
尿路結石に使われる薬を、「何のために使うのか」「尿路結石に対する適応があるのか」という視点から整理します。
尿路結石に使われる薬の一覧
代表的な薬を大まかに分類すると次のようになります。
| 薬剤・薬効群 | 主な目的 | 尿路結石に関係する直接的な適応 |
|---|---|---|
| ウロカルン(ウラジロガシエキス) | 排石促進 | あり |
| α1遮断薬(タムスロシンなど) | 排石促進 | なし |
| ウラリット(クエン酸K・Na) | 尿アルカリ化 | 「尿路結石」としてはなし |
| チオラ(チオプロニン) | シスチン濃度低下 | シスチン尿症にあり |
| サイアザイド系利尿薬 | 尿中Ca低下・再発予防 | なし |
| アロプリノール | 尿酸産生抑制 | 尿路結石としてはなし |
| NSAIDs | 疼痛緩和 | 製剤による |
この中で、最もわかりやすく「結石そのもの」に適応を持っているのがウロカルンです。
ウロカルンは「腎結石・尿管結石の排出促進」に適応がある
ウロカルン錠225mgの成分はウラジロガシエキスです。
添付文書の効能・効果には、
「腎結石・尿管結石の排出促進」
と明記されています。通常は1回2錠、1日3回投与されます。
つまり、尿路結石の排石目的でウロカルンを処方するのは、添付文書どおりの使用です。
作用機序としては、結石発育抑制作用や溶解作用、抗炎症作用、利尿作用などによって排出を促進すると考えられています。
ただし、ここで「適応がある=最もエビデンスが強い」と考えてはいけません。
α1遮断薬には適応がないのに、ガイドラインでは推奨されている
タムスロシンやシロドシンなどのα1遮断薬は、基本的には前立腺肥大症に伴う排尿障害などに使用する薬です。
例えばタムスロシンの効能・効果は、
「前立腺肥大症に伴う排尿障害」
であり、尿管結石の排出促進という適応はありません。
ところが、尿管にもα1受容体が存在します。
α1受容体を遮断して尿管平滑筋を弛緩させれば、尿管内の結石が通過しやすくなると考えられます。
実際、「尿路結石症診療ガイドライン2023年版」では、尿管結石患者に対する排石促進薬としてα1遮断薬の投与が条件付きで推奨されています。
エビデンスの確実性は「中等度」とされています。
一方、日本では尿路結石の排出促進に対してα1遮断薬の保険適用はありません。
つまり、
ウロカルン
→ 尿路結石の排出促進の適応あり
α1遮断薬
→ 適応はないが、排石促進について比較的しっかりしたエビデンスがある
という、一見すると逆転したような関係になっています。
ガイドラインでも、α1遮断薬以外のウラジロガシエキス、抗コリン薬、Ca拮抗薬、漢方薬などについては、十分なRCTがないことから推奨文には採用されていません。
「保険適用の有無」と「エビデンスの強さ」は別に考える必要がある好例でしょう。
ウラリットは「尿酸結石」の適応ではない?
尿酸結石の患者でよく使われるのがウラリットです。
ウラリットはクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤で、尿をアルカリ化します。
尿酸は酸性尿では溶けにくく、尿pHが低くなると結晶化しやすくなります。
そこで、
酸性尿
↓
ウラリットを投与
↓
尿pH上昇
↓
尿酸が溶けやすくなる
↓
尿酸結石の形成を抑える
という治療が行われます。
尿酸結石は、尿を適切にアルカリ化することで既存の結石を溶解できる可能性があることも、カルシウム結石との大きな違いです。
ところがウラリットの添付文書を確認すると、効能・効果は、
「痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善」
「アシドーシスの改善」
です。
「尿酸結石の溶解」や「尿路結石の再発予防」と直接書かれているわけではありません。
そのため、「ウラリット=尿酸結石治療薬」と単純に覚えるより、
尿酸結石の背景にある酸性尿を改善する薬
と理解したほうが、添付文書上の位置付けもわかりやすいでしょう。
なお、尿をアルカリ化しすぎるのもよくありません。ウラリットの添付文書には、リン酸カルシウムはアルカリ側で不溶性になるため、結石防止の観点から過度の尿アルカリ化を避けるよう注意されています。
「結石予防のために尿pHを上げれば上げるほどよい」というわけではありません。
チオラはシスチン結石に使う
比較的まれな結石としてシスチン結石があります。
シスチン尿症では、尿中に大量のシスチンが排泄され、溶解度を超えるとシスチン結石を形成します。
この場合に使用されるのがチオプロニン(チオラ)です。
チオラには明確に、
「シスチン尿症」
という効能・効果があります。
ただし、最初からチオラを使用するわけではありません。
添付文書でも、飲水療法と尿アルカリ化療法を行っても尿中シスチン濃度を飽和溶解度未満に維持できない場合に、チオラの使用を検討することとされています。
したがって、
十分な飲水
+
尿アルカリ化
↓
それでもシスチン濃度が高い
↓
チオプロニン
という順番で考えるとわかりやすいでしょう。
カルシウム結石なのにサイアザイドを使う?
尿路結石で最も多いのはカルシウムを含む結石です。
高カルシウム尿症が背景にある場合、再発予防目的でサイアザイド系利尿薬が使われることがあります。
サイアザイドには、尿細管でのカルシウム再吸収を促し、尿中カルシウム排泄を減らす作用があります。
一見すると、
「利尿薬を使ったら尿中カルシウムも増えるのでは?」
と思ってしまいますが、サイアザイドでは逆に尿中Caが低下するのがポイントです。
しかし、例えばヒドロクロロチアジドの効能・効果は、高血圧症や各種浮腫などであり、尿路結石や高カルシウム尿症による結石再発予防という適応はありません。
したがって、結石再発予防目的での使用は適応外となります。
アロプリノールは尿酸結石の薬?
尿酸が関係する結石では、アロプリノールなどの尿酸生成抑制薬が使用されることがあります。
ただし、アロプリノールの効能・効果は、
「痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の是正」
などであり、「尿酸結石」という適応が直接設定されているわけではありません。
また、「尿酸結石だからアロプリノール」と単純に考えるのも適切ではありません。
尿酸結石では酸性尿が重要な形成因子であるため、尿アルカリ化が重要になります。
一方、尿中への尿酸排泄量そのものが多い場合には、尿酸生成を抑える治療が意味を持ってきます。
さらに、尿酸は尿酸結石だけでなく、シュウ酸カルシウム結石の形成にも関与することがあります。
つまりアロプリノールは「石を溶かす薬」というより、高尿酸血症・高尿酸尿という結石形成の背景を改善する薬と考えると理解しやすいでしょう。
結石の種類によって薬は変わる
尿路結石をすべて同じ病気として考えてしまうと、薬の使い分けがわかりにくくなります。
例えば、
シュウ酸カルシウム結石
→ 高カルシウム尿ならサイアザイドなどを検討
尿酸結石
→ 尿アルカリ化が重要。高尿酸血症・高尿酸尿の状態によって尿酸生成抑制薬などを検討
シスチン結石
→ 大量飲水+尿アルカリ化、必要に応じてチオプロニン
というように、結石の成分や代謝異常によって治療が変わります。
したがって「尿路結石の薬」という1つのカテゴリーではなく、
①今ある石を出す治療
②痛みを抑える治療
③溶かせる石なら溶かす治療
④新しい石を作らせない治療
に分けて考える必要があります。
適応がある薬=エビデンスが強い薬、ではない
尿路結石治療薬を調べていて興味深いのは、保険適用とエビデンスが必ずしも一致していないことです。
典型的なのが排石促進療法です。
ウロカルンには「腎結石・尿管結石の排出促進」という明確な適応があります。
一方、2023年版ガイドラインで排石促進について条件付きで推奨されているのはα1遮断薬ですが、日本では尿路結石に対する保険適用がありません。
また、ウラリットは尿酸結石で重要な薬ですが、添付文書上の効能は「痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善」などです。
このため薬剤師が処方を見るときには、
「この薬は何のために処方されているのか?」
と同時に、
「その目的は添付文書上の適応なのか?」
を分けて考えることが重要です。
尿路結石は、その違いが非常にわかりやすく表れる疾患の一つといえるでしょう。
まとめ
尿路結石の薬物療法は、「結石を溶かす薬」だけではありません。
ウロカルンのように結石の排出を促す薬、α1遮断薬のように適応外ながら排石促進のエビデンスがある薬、ウラリットのように尿の性質を変える薬、チオラのように特定の結石形成物質に働きかける薬、サイアザイドや尿酸生成抑制薬のように再発の原因となる代謝異常に介入する薬があります。
特に覚えておきたいのは、
「尿路結石に使われる」ことと「尿路結石の適応がある」ことは同じではない
という点です。
処方された薬だけを見るのではなく、結石の種類、尿pH、尿中カルシウム、尿酸、シスチンなどを考えることで、「なぜこの患者にこの薬が選ばれたのか」が見えてきます。



