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腎機能が低下したら糖尿病治療薬はどうする?―減量・中止・注意が必要な薬一覧
公開. 更新. 投稿者: 39 ビュー. カテゴリ:糖尿病.この記事は約11分7秒で読めます.
腎機能と糖尿病治療薬

糖尿病患者では、糖尿病性腎症をはじめさまざまな理由で腎機能が徐々に低下していくことがあります。
そして糖尿病治療薬には、腎機能の影響を受ける薬が少なくありません。
薬局でも、
「昔から同じ糖尿病薬を飲んでいるけれど、最近eGFRが30台まで下がっている」
という患者を見かけることがあります。
このとき確認したいのは、
「この薬は今の腎機能のまま、この用量でよいのか?」
という点です。
ただし、腎機能低下時の対応は薬によってかなり違います。
糖尿病治療薬と腎機能
| 薬剤・薬効群 | 腎機能低下時の基本的な考え方 |
|---|---|
| メトホルミン | 明確な減量・禁忌あり |
| イメグリミン | eGFRに応じた明確な減量あり |
| シタグリプチン | Ccrに応じて減量 |
| アログリプチン | 腎機能に応じて減量 |
| サキサグリプチン | 中等度以上で2.5mgへ減量 |
| トレラグリプチン | 腎機能に応じて減量 |
| オマリグリプチン | 腎機能に応じた用量調節あり |
| リナグリプチン | 原則として腎機能による減量不要 |
| テネリグリプチン | 原則として腎機能による減量不要 |
| SU薬 | 明確な一律減量より低血糖に注意 |
| グリニド薬 | 薬剤差あり。低血糖にも注意 |
| SGLT2阻害薬 | 「減量」より適応・腎機能・目的を確認 |
| GLP-1受容体作動薬 | 多くは一律減量不要だが薬剤差あり |
| チルゼパチド | 原則として腎機能による用量調節不要 |
| α-GI | 多くは一律の腎機能別減量規定なし |
| ピオグリタゾン | 腎機能そのものより浮腫・心不全に注意 |
| インスリン | 腎機能低下で必要量が減ることがある |
ここから、実務上重要なものを順番に見ていきます。
メトホルミンはeGFR 45と30を覚える
メトホルミンは腎機能低下時に最も注意する糖尿病治療薬の一つです。
腎機能が低下するとメトホルミンの排泄が低下し、乳酸アシドーシスのリスクが問題になります。
電子添文では、腎機能に応じた1日最高投与量の目安が設定されています。
| eGFR(mL/min/1.73m²) | 1日最高投与量の目安 |
|---|---|
| 60以上 | 通常の範囲内 |
| 45以上60未満 | 1,500mg/日 |
| 30以上45未満 | 750mg/日 |
| 30未満 | 禁忌 |
したがって薬局では、
eGFRが45を切っている+メトホルミン1,000mg以上
といった処方は特に確認したいところです。PMDAの現行電子添文でも、eGFR 30以上45未満では750mg/日、45以上60未満では1,500mg/日が目安とされています。
また、eGFRだけではありません。
脱水、発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良、心肺機能低下などが加われば、乳酸アシドーシスの危険性はさらに高くなります。
イメグリミンは2025年に大きく変わった
イメグリミン(ツイミーグ)は、今回の記事で特に押さえておきたい薬です。
現在の用量は次のようになっています。
| eGFR(mL/min/1.73m²) | ツイミーグの投与方法 |
|---|---|
| 45以上 | 1回1,000mg、1日2回 |
| 15以上45未満 | 1回500mg、1日2回 |
| 10以上15未満 | 1回500mg、1日1回 |
| 10未満 | 投与は推奨されない |
つまり500mg錠で考えると、
4錠/日 → 2錠/日 → 1錠/日
と腎機能に応じて段階的に減量します。
電子添文では、eGFR 10以上15未満では「治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与」、eGFR 10未満では透析患者を含め投与非推奨とされています。
これは薬局ではかなりわかりやすいチェックポイントです。
例えば、
eGFR 35なのにツイミーグ1,000mg×2回
であれば、用量確認が必要になります。
DPP-4阻害薬は「腎機能で減量する薬」と「しない薬」がある
DPP-4阻害薬は、同じ薬効群でも腎排泄率の違いが大きく、処方鑑査では非常に重要です。
シタグリプチン
ジャヌビア・グラクティブの通常量は50mgを1日1回です。
しかし中等度以上の腎機能障害では減量します。
| Ccr | 通常投与量 | 最大投与量 |
|---|---|---|
| 50mL/min以上 | 50mg/日 | 100mg/日 |
| 30以上50未満 | 25mg/日 | 50mg/日 |
| 30未満・末期腎不全 | 12.5mg/日 | 25mg/日 |
PMDAの2026年6月改訂電子添文でも、この用量設定が明記されています。
つまり、
ジャヌビア12.5mgを見ると「かなり腎機能が低い患者かもしれない」
と想像できます。
逆に高度腎障害患者に50mgが処方されていたら確認したいところです。
アログリプチン
ネシーナも代表的な腎排泄型DPP-4阻害薬です。
通常25mg/日ですが、中等度以上の腎機能障害では用量を減らします。PMDAの電子添文でも、腎機能に応じて25mg、12.5mg、6.25mgという規格を使い分ける設計になっています。
実務的には、
25mg → 12.5mg → 6.25mg
と覚えておくとわかりやすい薬です。
サキサグリプチン
オングリザは通常5mgを1日1回ですが、
中等度以上の腎機能障害では2.5mgに減量
します。これは「考慮」ではなく、現行電子添文では「2.5mgに減量すること」とされています。
したがって、
オングリザ5mg+中等度以上の腎障害
なら用量を確認します。
リナグリプチンは腎機能で用量を変えない
トラゼンタは、DPP-4阻害薬の中でも腎機能の影響を受けにくい薬です。
通常、
5mgを1日1回
で、腎機能に応じた減量規定はありません。現行電子添文でも用法・用量は5mg/日であり、腎機能障害者の薬物動態データも記載されています。
このため、CKDを合併する患者では比較的使いやすいDPP-4阻害薬です。
テネリグリプチンも腎機能による減量規定なし
テネリアも、
通常20mgを1日1回、効果不十分なら40mg/日まで
という用法で、腎機能による用量調節規定はありません。
したがって、
トラゼンタ、テネリアは「腎機能によって機械的に減量しないDPP-4阻害薬」
として覚えておくと便利です。
ただし、
用量調節不要=腎機能を確認しなくてよい
という意味ではありません。
患者全体の低血糖リスクや併用薬は確認します。
週1回DPP-4阻害薬にも注意
週1回製剤だからといって腎機能を気にしなくてよいわけではありません。
トレラグリプチン(ザファテック)は通常100mg週1回ですが、中等度以上の腎機能障害では減量が必要です。現在は25mg、50mg、100mgの規格があります。
オマリグリプチン(マリゼブ)も通常25mg週1回ですが、腎機能障害患者では用量調節が必要になるDPP-4阻害薬です。PMDAの再審査資料でも、25mgと12.5mg製剤が確認できます。
つまりDPP-4阻害薬は、
「DPP-4阻害薬だから安全」ではなく、薬剤名まで見る
必要があります。
SU薬は「何mgまで」より低血糖が問題
SU薬には、
グリメピリド、グリクラジド、グリベンクラミド
などがあります。
腎機能が低下すると薬剤や活性代謝物の影響が長く残り、低血糖が起こりやすくなります。
とくに問題なのは、
CKD+高齢者+SU薬
です。
腎機能が徐々に低下しているのに以前と同じSU薬の用量を続けていると、
「最近、朝方に低血糖が増えた」
といった形で表面化することがあります。
DPP-4阻害薬のような単純な腎機能別換算表というより、
腎機能低下に合わせてSU薬そのものの必要性・用量を再評価する
薬と考えたほうがよいでしょう。
グリニド薬も一括りにできない
速効型インスリン分泌促進薬には、
ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド
があります。
これらも腎機能の影響は薬剤ごとに違います。
そして腎機能低下そのものによって低血糖リスクが上昇するため、
「短時間作用型だから腎障害でも安全」
とは言えません。
CKD患者では少量から使用するなど慎重な対応が必要になる場合があります。
SGLT2阻害薬は「腎機能が悪いから中止」と考えない
SGLT2阻害薬は、このテーマで最も誤解しやすい薬です。
ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジンなどは、腎臓でブドウ糖再吸収を抑制します。
そのため腎機能が低下すると、
血糖降下作用そのものは弱くなります。
しかし現在は、SGLT2阻害薬には、
心不全抑制やCKD進行抑制
という役割があります。
したがって、
eGFRが低い=SGLT2阻害薬をやめる
とはなりません。
例えばカナグリフロジンでは、2型糖尿病目的では高度腎機能障害・透析患者には血糖降下作用が期待できないため投与しない一方、2型糖尿病を合併するCKDという別の適応があります。CKD目的ではeGFR 30未満からの新規投与をしないという規定があります。
エンパグリフロジンでも、2型糖尿病目的では高度腎障害患者に血糖コントロール目的で投与しない一方、心不全やCKDでは別の考え方になります。
つまりSGLT2阻害薬では、
「腎機能はいくつか?」
だけでなく、
「何のために処方されているのか?」
まで確認する必要があります。
これは他の糖尿病治療薬とはかなり違うところです。
GLP-1受容体作動薬は多くが機械的な腎機能別減量をしない
セマグルチド(オゼンピック、リベルサス)などでは、メトホルミンやシタグリプチンのような、
「eGFR○○なら半量」
という用量設定は基本的にありません。
リベルサスでは、軽度から重度、さらに透析を必要とする腎機能障害被験者について薬物動態が検討されています。
ただしGLP-1系では別の問題があります。
悪心、嘔吐、下痢、食欲低下などが強く出ると、
脱水 → 急性腎障害
につながることがあります。
デュラグルチドについても、重度の下痢・嘔吐から脱水を続発し急性腎障害に至った症例を踏まえた添付文書改訂が行われています。
したがって、
「腎排泄型ではないから腎臓を気にしなくてよい」
という薬ではありません。
チルゼパチドも基本的には腎機能で減量しない
マンジャロの有効成分チルゼパチドについても、通常は腎機能に応じて機械的に投与量を減らす薬ではありません。
一方でGLP-1作用を持つため、悪心・嘔吐・下痢などによる脱水には注意します。
CKD患者や高齢者で消化器症状が続いている場合、
「薬剤が腎臓から排泄されるか」だけでなく「脱水で腎機能を悪化させていないか」
を見る必要があります。
α-GIは一律の腎機能別減量規定は少ない
アカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどでは、メトホルミンのような明確なeGFR別投与量表は一般的ではありません。
ただし薬剤によって腎機能の影響は異なり、とくに高度腎障害では慎重な判断が必要になります。
そのため、
「α-GI=腎機能を完全に気にしなくていい」
と考えるのも適切ではありません。
ピオグリタゾンは「腎排泄」より「浮腫・心不全」
ピオグリタゾンでは、腎機能低下によって単純に半量にするという薬ではありません。
しかしCKD患者では、
浮腫、体液貯留、心不全
を合併していることがあります。
ピオグリタゾン自体にも体液貯留作用があります。
したがって、
「腎機能が悪いけれど腎排泄型ではないから問題ない」
ではなく、
「このCKD患者に体液貯留を起こして大丈夫か?」
という視点が必要です。
インスリンは腎機能低下で効きすぎることがある
インスリンには、
「eGFR 30以下なら20%減量」
のような全製剤共通ルールはありません。
しかし腎臓はインスリンの分解・クリアランスにも関係しています。
そのため腎機能が低下すると、
今までと同じ量でもインスリン作用が強く・長く出る
ことがあります。
とくに、
高齢者、食事量低下、CKD進行
が重なると低血糖リスクは大きくなります。
したがって、
「最近低血糖が増えた糖尿病患者」では腎機能低下も疑う
必要があります。
腎機能低下時の糖尿病薬は4パターンに分ける
薬局実務では、次の4分類にするとかなり整理しやすいと思います。
| 分類 | 主な薬 |
|---|---|
| ① 腎機能に応じて明確に減量・中止 | メトホルミン、イメグリミン、シタグリプチン、アログリプチン、サキサグリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチンなど |
| ② 用量表より低血糖に注意 | SU薬、グリニド薬、インスリン |
| ③ 原則として腎機能による用量調節不要 | リナグリプチン、テネリグリプチン、多くのGLP-1系・チルゼパチドなど |
| ④ 腎機能だけでなく「治療目的」を見る | SGLT2阻害薬 |
この分類のほうが、
「腎機能が低下したらどの薬を何mgにするか」
という単純な表より実際の処方鑑査には使いやすいと思います。
eGFR 60・45・30・15・10で見ると覚えやすい
個人的には、糖尿病治療薬を見るときに、
60 → 45 → 30 → 15 → 10
という数字を頭に置いておくと便利です。
eGFR 60未満
CKDとして糖尿病薬全体を再確認するきっかけ。
eGFR 45未満
メトホルミン、イメグリミンなどの用量を特に確認。
eGFR 30未満
メトホルミンは禁忌。DPP-4阻害薬の種類・用量、SU薬やインスリンによる低血糖にも要注意。
eGFR 15未満
イメグリミンはさらに減量。各薬剤の末期腎不全・透析時の扱いを確認。
eGFR 10未満
イメグリミンは投与非推奨。
というように見ていくことができます。
ただし、これはあくまでスクリーニングです。
eGFRとCcrは同じではない
ここは処方鑑査上かなり重要です。
糖尿病治療薬の添付文書を見ると、
eGFRで規定されている薬
と、
Ccr(クレアチニンクリアランス)で規定されている薬
があります。
例えば、
メトホルミンやイメグリミンではeGFRが非常に重要ですが、
シタグリプチンではCcrが用量調節の基準として記載されています。
したがって、
eGFR 30=Ccr 30
とそのまま置き換えることはできません。
高齢者や低体重患者では、とくに両者の乖離に注意します。
まとめ
糖尿病患者では、腎機能が低下してくるほど糖尿病治療薬の処方鑑査が重要になります。
ただし、
「腎機能が悪い→全部減量」
ではありません。
まず覚えたいのは、
メトホルミン
→ eGFR 45未満で投与量に注意、30未満禁忌
イメグリミン
→ eGFR 45未満で減量、15未満でさらに減量、10未満は投与非推奨
DPP-4阻害薬
→ シタグリプチンなどは減量するが、リナグリプチン・テネリグリプチンは原則減量不要
SU薬・グリニド・インスリン
→ 腎機能低下に伴う低血糖に注意
SGLT2阻害薬
→ 腎機能だけでなく、糖尿病・CKD・心不全のどの目的で使っているかを見る
という違いです。
腎機能低下患者の糖尿病処方では、
「この薬は腎排泄されるか?」
「蓄積するか?」
「低血糖が増えるか?」
「腎機能による明確な減量規定があるか?」
「そもそも血糖を下げる目的で処方されているのか?」
という順番で考えると整理しやすいでしょう。
とくに最近は、腎機能が低いから避ける薬と、腎機能が低い患者だからこそ使う薬が同じ処方箋上に並ぶようになっています。
糖尿病治療薬と腎機能の関係は、単なる「腎排泄薬の減量」という話ではなくなっているのです。
※本記事は2026年9月時点の日本の電子添文等をもとにした整理です。実際の投与可否・投与量は製品、適応症、腎機能評価法などによって異なるため、処方鑑査時には最新の電子添文を確認してください。



