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せん妄と認知症の違いは?
公開. 投稿者:認知症.この記事は約3分7秒で読めます.
1,762 ビュー. カテゴリ:せん妄とは?
せん妄とは、幻覚や妄想、興奮などの精神症状を伴う、軽度から中等度の意識障害のことである。
症状は突然現れ、一過性のことが多い。
一日の中でも意識レベルに変動があり、日中は比較的軽く、夜間に悪化することが多い。
せん妄と認知症の違い
せん妄は突然の意識障害であり、原因の改善により回復することが多い。
一方、認知症は脳の解剖学的変化によるものなので、進行は緩やかであっても回復することは困難である。
せん妄 | アルツハイマー型認知症 | |
---|---|---|
発症様式 | 急激(数時間~数日) | 潜在性(数カ月~数年) |
経過と持続 | 動揺性、短時日 | 慢性進行性、長時間 |
初期症状 | 注意集中困難、意識障害 | 記憶障害 |
注意力 | 障害される | 通常正常である |
覚醒水準 | 動揺する | 正常 |
誘因 | 多い | 少ない |
せん妄の原因
せん妄は様々な疾患や中毒、および薬物により引き起こされるが、そのメカニズムは完全には解明されていない。
しかし、主な機序として、コリン作動性およびドパミン作動性の神経伝達の変調が密接に関与していると考えられている。
例えば、何らかのストレスがかかるとノルアドレナリンやドパミン、グルココルチコイドなどの分泌亢進や活性亢進が起こり、交感神経の緊張が亢進する。
すると、コリン作動性機能は過剰に抑制され、バランスが崩れる。
これがせん妄の一因とされている。
せん妄は、興奮や幻覚などが主体となる「過活動型」と、無気力で日中でももうろうとしているような「低活動型」がある。
これらの症状の違いは、トリプトファンの代謝異常が関与しているといわれている。
トリプトファンは、睡眠や認知、情動に大きな役割を果たしているセロトニンやメラトニンの材料である。
いずれにしてもアセチルコリンやドパミン、セロトニン、γアミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸などによる作動性神経系は相互にネットワークを構築し、その上で神経伝達機能が正常に制御されている。
脱水症でせん妄?
せん妄の原因は様々です。
身体面の不調、薬剤によるものの他、環境因、心理的な要因などなど。
電解質異常も原因となります。
血液中のカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの電解質の濃度が異常値になると、神経細胞の代謝活動が妨げられて、せん妄が起こります。
電解質の異常は、利尿薬の使用、脱水、あるいは腎不全や癌の広範な進展で起こります。
高齢者の脱水は気付きにくいので、せん妄の原因は脱水症ということもよくあります。
術後せん妄
手術後にはせん妄が起こりやすく、おそらく手術によるストレス、手術中の麻酔薬の使用、手術後の鎮痛薬の使用などが理由と考えられています。
術後せん妄とは、手術をきっかけにしておこる精神障害で、手術の後いったん平静になった患者さんが1~3日たってから、急激に錯乱、幻覚、妄想状態をおこし、1週間前後続いて次第に落ち着いていくという特異な経過をとる病態をいいます。
高齢の方に起こりやすく、術後の回復期に起こるため、術後の看護、ケアーの妨げになります。
一度発症すると、生命維持に重要な管を抜いてしまう、夜間大声を上げて暴れるなど、看護スタッフによるケアーが困難になり、周囲の患者さんにも迷惑がかかります。
さらに転倒・転落の危険も増大し、術後の大きな問題となってきます。
せん妄の治療薬
せん妄に対する薬物治療は、症状の程度によって3段階に分かれる。
第1段階は抗精神病薬の頻用。
第2段階は抗精神病薬の定時服用。
第3段階は、抗精神病薬とベンゾジアゼピン系薬との併用療法となる。
従来は、ハロペリドールやクロルプロマジン塩酸塩などの定型抗精神病薬が使用されることが多かった。
これらの薬剤は、興奮は抑えられるものの、流涎、斜頸、過鎮静などの有害作用も多く、低用量を慎重に投与する必要があった。
近年は、非定型抗精神病薬であるリスペリドンやオランザピンなど錐体外路症状の少ない薬剤を使用することが多くなった。
ルーランとせん妄
最近は、ペロスピロンがその使いやすさからせん妄治療に使われるようになっている。
ペロスピロンの特徴は、Tmaxが比較的短く、効果が速やかに現れること、さらにT1/2が他の抗精神病薬に比べて短いことから、翌日への持ち越しが少なく、朝方の覚醒に影響を与えにくいことである。
また、α1受容体拮抗作用が弱いため、高齢者で問題になる起床時のふらつきや転倒の危険性が少なく、日中に過鎮静に陥る心配も少ないとされている。
さらに5-HT1A受容体の活性化作用が他の非定型抗精神病薬より強いため、抗不安作用、抗うつ作用に加え、認知機能の改善にも役立つと考えられている。
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