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長引く咳はマイコプラズマ?
公開. 投稿者:結核/肺炎.この記事は約5分25秒で読めます.
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マイコプラズマ肺炎は「元気な肺炎」
発熱、全身倦怠、頭痛などの初発症状から3~5日後に乾性の咳が出始め、解熱しても3~4週間咳が続くマイコプラズマ肺炎。
昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で状態も悪くないことが特徴とされてきたが、時に重症化することもある。
咳止めや総合感冒薬などのOTC薬はあまり効果がない。
元気な肺炎
最近私の家族も長引く咳に悩まされている。
マイコプラズマ?と疑ってはいますが、まあ、咳以外は元気なので、医療機関を受診することもなく。
そもそも私は病院嫌いなので。
子供たちは受診したようですが、咳止めを出されて終わり。
クラリスかジスロマックあたり出すかと思いましたが。
全身状態が良ければ、抗生物質を飲む必要もないか。
マクロライド耐性マイコプラズマも増えているし。
この程度の咳でオゼックスとか使うのもどうかと思うし。
そもそも医療機関におけるマイコプラズマの診断が正しいのかどうかも疑わしいし。
実はマイコプラズマの検査は、私のよく言うアレルギー検査と一緒だと思います。クラス2以上がアレルギーの原因と判断されて、過剰な除去を指示されている患者さんがあまりにも多くて困っています。マイコプラズマの迅速検査も「疑陽性」が多いと言われています。検査は陽性という結果なのに、マイコプラズマではないことが意外に多いとされているのです。以前、他院でマイコプラズマと診断されていた患者さんに採血の必要があり、マイコプラズマの抗体を調べさせて頂いたことがありました。結果は陰性で、やはり検査の上でもマイコプラズマは否定されました。
ある文献によるとマイコプラズマにかかってから半年から1年は、迅速検査が陽性になると書いてありました。つまり、以前かかっただけなのに、今回無関係な“マイコプラズマ”と診断される可能性があるということです。それなら、誤解して短期間に何度もマイコプラズマと診断されてしまうのも理解できなくはありません。
トピックス | 小児科 すこやかアレルギークリニック
咳が1か月以上長引いたり、悪化したりするようなら医療機関を受診するけど。
そうじゃなければ、マイコプラズマでもほっときゃ治る。
小児の肺炎マイコプラズマ感染症は、通常であれば自然治癒する疾患であり、抗菌薬投与は必ずしも必要としない。
オリンピック病
マイコプラズマ肺炎は4年周期で大きな流行があり、ちょうど夏季オリンピックの開催年になるたびに流行することから、「オリンピック病」と呼ばれています。
近年はこの傾向も薄れつつあるようですが。
なぜ4年ごとに流行るのか?という理由については不明です。
季節ごとに流行る感染症はわかりますが、4年ごとというのは何でしょうね。
マイコプラズマ肺炎に罹ったら出席停止?
マイコプラズマ、流行ってます。
学校に行かせてもいいですか?はよくある質問です。
急性期が過ぎて、全身状態が改善すれば登校・登園は可能。
第3種学校伝染病のその他の伝染病として、
「学校で流行が起こった場合にその流行を防ぐため、必要があれば、校長が学校医の意見を聞き、第三種の伝染病としての措置を講じることができる」
ともされています。
出席停止の措置がとられる可能性もあります。
肺炎の原因は肺炎球菌だけではない
肺炎の原因菌の約2~3割が肺炎球菌、約2割がマイコプラズマやクラミジアなどの非定型病原体が占めるといいます。
病原微生物は、65歳以上の患者では肺炎球菌が最も頻度が高く、それにインフルエンザ菌、マイコプラズマが続く。
60歳未満の患者では、肺炎球菌に次いでマイコプラズマが多い。
一方、脳血管障害を起こした高齢者に頻度の高い誤嚥性肺炎では、口腔内常在菌や嫌気性菌が原因となる。
ペニシリン系やセフェム系は肺炎球菌には効きますが、マイコプラズマやクラミジアには効きません。
マイコプラズマやクラミジアに効果的なマクロライド系やテトラサイクリン系は、肺炎球菌には効きが弱いです。
そのため、肺炎球菌にもマイコプラズマにもクラミジアにも効くニューキノロン系の抗菌薬が好まれて使われます。
肺炎の診断
咳症状で最も多い原因はウイルス性気管支炎ですが、それと肺炎の区別の仕方は医療機関ではどのようにしているのでしょうか?
理想は実は直接気管支や肺から組織を取ってきてそこに炎症があるかないかを確認する必要があるのですが、そんなことをしている医師はいません。
では何をもって気管支炎、肺炎と区別しているのか。
臨床的な気管支炎と肺炎の違いは何でしょうか?
多くの臨床医は次のような法則で判断しています。
気道症状+レントゲンに影がない=気管支炎
気道症状+レントゲンに影がある=肺炎
さて、ここが難しいところです。
本来ならば、先ほども述べたように直接気管支や肺から生検で組織を取ってきて判定する必要があります。
しかし、臨床的にそれは現実的ではないため、代用としてレントゲンを利用しているのでこのような判断基準になります。
しかし、この代用のレントゲンでは限界があります。
レントゲンに影があるかないかの議論は現場では意外に難しいことがあり、レントゲンを過信して影がないと思っていたら肺炎だったということもあり、抗菌薬が必要な患者さんを見逃すことにもつながります。
レントゲンではっきりとした浸潤影がなくても、臨床的に強く肺炎を疑う経過・所見があって、痰のグラム染色をすると明らかに優位な菌+貪食像を見ることはよく経験します。
では、ここまで細菌性を疑う痰の所見があるにもかかわらず、何故に肺炎の影がはっきりしないことがあるのでしょう?
そこを考えると肺炎かどうかの判断がわかってきます。
このレントゲンの限界を限界を知るだけでも臨床の幅は広がります。
実際、脱水が強いと浸潤影は出にくいとされます(脱水では痰も出にくく、入院して点滴して痰が出始めるということはよく経験します)。
また浸潤影が小さいためにレントゲンでは見逃していただけということも現実としては多いでしょう。
実際レントゲンで見えるのは全肺の70%と言われています。
ではCTを撮ればいいであろうと思うかもしれませんが、このカテゴリーで受診される方にCTを撮るとなるとかなりの数で撮らなくてはいけなくなりますし、肺炎を多く診るクリニックでのCTは現実的ではありません。
つまり、医療現場でレントゲンなどを駆使しても、肺炎かどうかの判断は難しいことが多々あるのです。
マクロライド耐性マイコプラズマが増えている?
マイコプラズマ肺炎が流行しているが、治療に用いる抗菌薬であるマクロライド(ML)の耐性菌が小児に多く見られる。
耐性菌は、リボソームの23SrRNAドメインVに点突然変異が生じ、マクロライド系抗菌薬が結合できなくなっている。
ただし、蛋白質を作る重要な器官であるリボソームに変異が生じたことで、耐性菌の増殖力は感受性菌よりも低い。
また、M.pneumoniaeの菌体内ではプラスミドやトランスポゾンのような外来遺伝子が機能しないため、他の菌で問題になるリボソームのメチル化や薬剤排出ポンプなどの耐性機構が存在しない。
これらの理由から現在の耐性菌は、必ずしも臨床的脅威にはならないとみられている。
耐性マイコプラズマに何使う
ガイドラインでは、マイコプラズマ肺炎にマクロライド系抗菌薬を適切に処方しており、かつ患児の服薬アドヒアランスにも問題がないにもかかわらず、症状改善が認められない場合、トスフロキサシン(オゼックス)、あるいは8歳以上ではミノサイクリン(ミノマイシン)の投与を考慮するとしている。
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