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歯磨きでビスホスホネートの顎骨壊死予防
公開. 投稿者:骨粗鬆症.この記事は約4分20秒で読めます.
2,891 ビュー. カテゴリ:歯磨きで顎骨壊死予防
ビスホスホネート製剤の重大な副作用の1つに、顎骨壊死(BRONJ)があります。
これは、BP製剤を投与されているがん患者や骨粗鬆症患者が、抜歯などの侵襲的な歯科治療を受けた後に、その創傷部が治癒せず、顎骨の露出や壊死を起こす病態です。
2003年に初めて報告されて以降、様々な議論があったが、現在では口腔管理を入念に行う、あるいは歯茎などの歯周組織や歯の根元の病変を除いておけば、発生を予防できることが明らかになっています。
BRONJ発生のリスク要因は、骨への侵襲的な歯科治療のほか、口腔衛生不良、歯周病、癌、糖尿病などがあり、発生頻度は、経口BP製剤で治療中の骨粗鬆症患者10万人当たり1.04~69人、静注投与では患者10万人当たり0~90人とされている。
高齢者は虫歯治療や歯周病などで抜歯が必要な場合も少なくありません。このためビスホスホネート製剤服用時には口腔内の清潔に加え、歯科を受診する際にその旨を主治医に相談するよう説明する必要があります。
特に口腔衛生状態の不良は局所リスクファクターとして挙げられるため、口腔内の清潔の重要性を認識してもらうことが大切になる。
ビスホスホネート製剤を使用中の患者には、歯科受診時に併用薬を伝えることと、毎日の歯磨きをしっかり行うことを注意として伝えたい。
BRONJとDRONJとARONJ
ビスホスホネートを使っている患者で、抜歯するときに中止するという話は薬剤師であれば誰もが知っている話。
で、中止しないこともあるという話も。
2016年に顎骨壊死検討委員会による「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理: 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016
」が発表され、抜歯前にビスホスホネートを中止しても、顎骨壊死のリスクが減るというエビデンスは見いだせず、現在では中止しないという選択が取られることが多いという。
しかしビスホスホネートの添付文書上では、以下のように書かれており、
ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に侵襲的な歯科処置が必要になった場合には本剤の休薬等を考慮すること。また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するように指導すること。
薬剤師的には、歯科医の判断を仰ぐよう患者には伝えておくべき。
ビスホスホネートによる顎骨壊死(がっこつえし)のことを、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw;BRONJ、ブロンジェイ)と言います。
しかし、骨粗鬆症治療薬で顎骨壊死を起こすのは、ビスホスホネートだけではありません。
プラリア(デノスマブ)の副作用にも顎骨壊死があり、ビスホスホネートと同様の注意事項が添付文書に書かれています。
つまりこれは、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死ではなく、デノスマブ関連顎骨壊死(denosumab-related ONJ、DRONJ、ドロンジェイ)なのです。
薬剤によって名称を変えるのも面倒だということで、これらの薬剤関連顎骨壊死をまとめて、骨吸収阻害薬関連骨壊死(Anti-resorptive agents-related ONJ、ARONJ、アロンジェイ)と呼ぶようになりました。
骨粗鬆症治療薬は骨吸収抑制薬と骨形成促進薬に大別される。
骨吸収抑制薬には、ビスホスホネートやデノスマブ、SERMが含まれる。骨吸収阻害薬関連骨壊死といっても、SERM(エビスタ、ビビアント)で顎骨壊死副作用を起こすことは無い。
骨形成促進薬には、活性型ビタミンD3製剤やビタミンK2製剤、カルシウム、副甲状腺ホルモン製剤(フォルテオ)が含まれるが、もちろんこれらでも顎骨壊死の副作用報告はない。
フォルテオで顎骨壊死を起こすことはない?
フォルテオ(テリパラチド)の主な副作用は、血中尿酸上昇、頭痛、悪心、筋痙縮などで、顎骨壊死や顎骨骨髄炎の報告はない。
フォルテオは副甲状腺ホルモン(PTH)製剤であり、PTHの活性部分であるN端側34残基のペプチドを遺伝子組み換えにより合成したもので、前駆細胞の分化促進などにより骨芽細胞を増加させて、骨形成を促進する。
ビスホスホネートで歯石予防?
ビスホスホネートはもともと水道管の水アカ(炭酸カルシウム)除去剤として使用されていました。
そのため、この系統の薬剤は骨の石灰化を抑制する作用があります。
ダイドロネルでは、骨石灰化障害が強いため、休薬期間が設けられていました。
フォサマック、ボナロン以降のビスホスホネートは骨石灰化をほとんど障害せずに骨吸収抑制作用を発揮します。
ビスホソホネートは、古くからピロリン酸と同様に炭酸カルシウムの沈殿を抑制する作用があるため水道管の水垢取りに、また骨ミネラルに親和性が高いこと
から歯磨きの中に入れて歯石防止剤として使用されてきました。
1960年代にFleischらはこの化合物が骨吸収を抑制することを見出しました。
その後、作用メカニズムの研究やビスホスホネートの基本構造であるP-C-P結合の炭素原子に結合する側鎖(R1、R2)の構造活性相関等の研究から、骨の石灰化抑制作用などの作用がなく、選択的に骨吸収抑制作用を有する新しいビスホスホネートの探索研究が進み、1990年代になって強力な骨吸収抑制作用をもつ薬が開発されて
きました。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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