記事
食中毒の原因は?
公開. 投稿者:下痢/潰瘍性大腸炎.この記事は約1分26秒で読めます.
1,363 ビュー. カテゴリ:胃腸炎の原因は変な物を食べたから?
患者さんから病歴を取る時によくやってしまう間違った聞き方としては、「何か変な物を食べませんでしたか?」という聞き方があります。
このように聞いてしまう気持ちもわかるのですが、自分がそのように聞かれたら、何のことを聞いているのかなあと思いませんか?
変なものなんて食べませんよね。
以下の表を意識して「焼き肉や生魚(刺し身)を食べませんでしたか?」と聞くことが重要です。
原因微生物 | 食物 | 季節 |
---|---|---|
黄色ブドウ球菌 | ハム、鶏肉、卵サラダ | 夏 |
バシラス・セレウス | 嘔吐型:フライドライス 下痢型:肉、野菜 | 通年 |
ウェルシュ菌(クロストリジウム・パーフリンゲンス) | 牛肉、鶏肉 | 夏以外 |
カンピロバクター | 火が通っていない鶏肉、牛肉、低温殺菌されていない牛乳 | 春、夏 |
サルモネラ | 火が通っていない鶏肉などの肉、卵、爬虫類(特にカメ) | 夏、秋 |
腸管出血性大腸菌 | ひき肉、牛乳 | 夏、秋 |
赤痢菌 | 汚染された食物、水。卵サラダなど | 夏 |
ビブリオ | 海産物、特に生ガキ | 春、夏 |
エアロモナス | 魚、魚の卵など | 夏 |
ノロウイルス | 貝類(生ガキと言えばこれ) | 冬 |
感染の仕方 | ウイルス・細菌 | 特徴 | 潜伏期間 | 主な原因食品 | 症状 | 予防方法 |
---|---|---|---|---|---|---|
感染侵入型 細菌で汚染された食品を食べた後、細菌自らが腸管を攻撃し、症状が引き起こされる | サルモネラ菌 | ・多くの動物の体内に存在。 ・卵の場合、黄身や白身も汚染されていることがある。 | 12~24時間 | 卵、肉類、乳製品など | 発熱(主症状)、粘血便、腹痛など | ・食品は低温保存する ・よく熱を通し、生卵は生食用に限る ・加熱調理する |
カンピロバクター・ジェジュニなど | ・多くの動物の体内に存在。 ・増加傾向。 | 2~5日 | 鶏肉関連調理食品、牛生レバー、井戸水、湧水、ペット(イヌ、ネコなど)など | 下痢、腹痛、発熱、悪心など | ・調理時の充分な加熱 ・手をよく洗って調理する ・調理器具の充分な乾燥 |
|
ノロウイルス | ・秋(10月)ごろから冬(1、2月)流行。 ・増加傾向。 | 1~2日 | 貝類の生食、患者の糞便を介しての二次感染 | 吐気、嘔吐、下痢など | ・手をよく洗って調理する ・消毒(次亜塩素酸ナトリウムなど) ・85度以上で少なくとも1分以上加熱する |
|
感染毒素型 細菌で汚染された食品を食べた後、細菌が腸管で毒素を出し、その毒素によって症状が引き起こされる | 腸炎ビブリオ | ・海底の泥や魚介類に存在(塩分3~4%で発育する)。 ・熱に弱い。 | 10~18時間 | 海産魚介類(刺身、貝類) | 下痢、嘔吐、腹痛、発熱など | ・加熱調理する ・生食用は真水でよく洗い2時間以内に食べる ・保存温度5℃以下では翌日までが限度 |
病原性大腸菌(O-157) | ・少ない菌で感染。 ・「ベロ毒素」を出す。 ・子ども、高齢者では致死率が高い。 | 4~24時間 | 肉(牛、豚)、牛乳、汚染された水、患者の糞便を介しての二次感染 | 下痢、腹痛、血便など | ・手をよく洗って調理する ・熱をよく通す |
|
毒素型(生体外毒素型) 細菌が出した毒素によって汚染された食品を食べることで、症状が引き起こされる | 黄色ブドウ球菌 | ・ヒトの鼻や喉、皮膚に住みついている常在菌。 ・ヒトの傷口に特に菌が多い。 | 2~6時間 | 仕出し弁当、おにぎり、和菓子など人の手の加わったもの | 嘔吐(主症状)、下痢、腹痛など | ・傷口がある場合、調理に携わらない ・調理後は冷ましてから包装し、暑い所へ放置しない ・調理後4時間以内に食べる |
ボツリヌス菌 | ・熱に弱い。 ・死亡率が高い。 | 12~36時間 | 嫌気性食品(真空パック、缶詰など)、ハム、ソーセージ、ふなずし | 複視、発声障害、嚥下障害、呼吸障害など | ・缶詰などが膨張している場合は食べない |
食中毒は夏に多い?
食中毒には主に「細菌性食中毒」、フグやキノコなどが原因の「自然毒による食中毒」、「化学物質による食中毒」の3大原因があり、中でも発生件数が最も多いのが「細菌性食中毒」とのこと。
「腸炎ビブリオ」「サルモネラ」「ブドウ球菌」などの細菌は梅雨時から増え、8月にはピークに。
これらの細菌の多くは25度から40度、75パーセント以上の湿度で急激に増殖するため、高温多湿なこれからの季節には特に注意が必要。
冬にも食中毒はありますが、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性食中毒。
夏に流行する細菌性食中毒は、高温多湿で増殖する。
食中毒の変化
ほんの少し前までは、食中毒といえば夏、食品の腐敗、保存不良などがキーワードのように挙げられたが、冷蔵庫、冷凍庫などによる食品保存法の一般化、食材の多様化とその供給地域の拡大、国際化などから、いまや季節性は薄らぎ、夏に限ることなくいつでも食中毒は起こり得ると考えておく必要がある。
食の安全性はかつてに比べれば格段の進歩を遂げたが、食材・食品・調理などが1か所で大量に取り扱われる傾向、流通の拡大、そして消費者側の生食・グルメ志向などは、原因食品の多様化・複雑化を招くこととなった。
また、食中毒がいったん生ずると、広い地域で多人数に被害が及ぶ可能性が高くなるなど、過去と状況が変化してきていることも考慮しておく必要がある。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、【PR】薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。