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高齢者の多剤併用は危険
公開. 投稿者:相互作用/薬物動態.この記事は約1分28秒で読めます.
1,448 ビュー. カテゴリ:血漿蛋白結合率
高齢者がたくさん薬を飲んでいると危ない。
なぜ危ないのか。
相互作用が起こり得るから。
でも、添付文書上に書かれていないから良いんじゃないか。
併用注意レベルだから良いんじゃないか。
と、軽くみる医師もいる。
相互作用は、薬と薬の間の飲み合わせに焦点が当てられているので、たくさんの薬を飲んだ場合にどのような反応、相互作用を起こすかを予測・実証するのは難しい。
高齢者の多剤併用で起こり得る事態で、イメージしやすいのは血漿タンパクと薬の結合の変化だろう。
高齢になると、食事量の減少、低栄養状態、血漿アルブミン値の低下が見られる。
多剤併用すれば、血漿タンパクと結合できない薬が増えて、薬効が増強する可能性がある。
血漿蛋白と薬物動態
血液中に入った薬物は、アルブミンなどの血漿蛋白と可逆的に結合した形(結合型)で存在するか、血漿蛋白と結合しない形(遊離型)で存在する。
遊離型は分子量が小さいので細胞膜を通過し、組織に分布することで薬効を発揮できるが、結合型は分子量が大きく細胞膜を通過できないので、薬効を発揮することができない。
薬を投与しても、血漿蛋白との結合率などによって薬効の発現に関与する薬の量が変化するため、投与量の全てが作用を発揮するわけではない。
血漿蛋白結合による相互作用
添付文書で、血漿蛋白結合に関する相互作用の記載のある薬を調べてみた。
医薬品名 | 相互作用対象薬 | 理由 |
---|---|---|
アベマイド | NSAIDs | 血中蛋白との結合抑制[これらの消炎剤は蛋白結合率が高いので、血中に本剤の遊離型が増加して血糖降下作用が増強するおそれがある。] |
アマリール | NSAIDs | 血中蛋白との結合抑制[これらの消炎剤は蛋白結合率が高いので、血中に本剤の遊離型が増加して血糖降下作用が増強するおそれがある。] |
アルボ | 経口抗凝血剤 | 本剤は血漿アルブミンと高率に結合するので、血漿アルブミン結合率の高い薬剤と併用すると、血中に活性型の併用薬が増加し、その薬剤の作用が増強されるためと考えられている。 |
オイグルコン/ダオニール | NSAIDs | 血中蛋白との結合抑制[これらの消炎剤は蛋白結合率が高いので、血中に本剤の遊離型が増加して血糖降下作用が増強するおそれがある。] |
オステラック/ハイペン | クマリン系抗凝血剤(ワルファリン等) | 本剤のヒトでの蛋白結合率は,99%と高く,蛋白結合率の高い薬剤と併用すると血中に活性型の併用薬が増加し,その薬剤の作用が増強されるためと考えられている. |
オルケディア | ジギトキシン ジアゼパム 等 | 血漿蛋白結合率が高いことによる。 |
サインバルタ | 血漿蛋白との結合率の高い薬剤 ワルファリンカリウム等 | 本剤は血漿蛋白との結合率が高いため,併用により,本剤及びこれらの薬剤の血中遊離濃度が上昇することがある。 |
ジソペイン | スルホニル尿素系血糖降下剤(トルブタミド等) | 本剤のヒトでの蛋白結合率が高いので,血中に活性型の併用薬が増加し,併用薬の作用が増強されるためと考えられている. |
ソレトン/ペオン | クマリン系抗凝血剤(ワルファリン等) | 本剤のヒトにおける血漿蛋白結合率(in vitro)は98%と高く、血漿蛋白結合率の高い薬剤と併用すると、血中の遊離型薬剤の濃度が上昇するためと考えられている。 |
ソレトン/ペオン | スルホニル尿素系血糖降下剤(トルブタミド等) | 本剤のヒトにおける血漿蛋白結合率(in vitro)は98%と高く、血漿蛋白結合率の高い薬剤と併用すると、血中の遊離型薬剤の濃度が上昇するためと考えられている。 |
ナイキサン | ヒダントイン系抗てんかん剤(フェニトイン) | 血漿蛋白結合の競合的拮抗作用(本剤の蛋白結合率が高く、併用により作用が増強する。) |
ナイキサン | スルホニル尿素系血糖降下剤(クロルプロパミド、トルブタミド、グリベンクラミド) | 血漿蛋白結合の競合的拮抗作用(本剤の蛋白結合率が高く、併用により作用が増強する。) |
ニフラン | スルホニル尿素系血糖降下剤(トルブタミド等) | 本剤のヒトでの蛋白結合率が高いので,血中に活性型の併用薬が増加し,併用薬の作用が増強されるためと考えられている. |
バキソ | クマリン系抗凝血剤 ワルファリン等 | 本剤のヒトでの蛋白結合率が99.8%と高いため、ワルファリンの活性型が増加するためと考えられる。 |
ヒポカ | フェニトイン | 本剤の蛋白結合率が高いため、血漿蛋白結合競合により、遊離型フェニトインが上昇する。 |
フルカム | クマリン系抗凝血剤(ワルファリン等) | ピロキシカムのヒトでの蛋白結合率が99.8%と高いため、ワルファリンの活性型が増加するためと考えられている。 |
ペルジピン | フェニトイン | 本剤の蛋白結合率が高いため、血漿蛋白結合競合により、遊離型フェニトインが上昇する。 |
マイスタン | バルプロ酸 | バルプロ酸により、本剤の血漿蛋白結合率が低下することによると考えられる。バルプロ酸の血中濃度上昇の機序は不明である。 |
レグパラ | ジギトキシン ジアゼパム 等 | 血漿たん白結合率が高いことによる |
レリフェン | クマリン系抗凝血剤(ワルファリン等) | 本剤の蛋白結合率は高いので、これらの薬剤の血漿蛋白結合と競合し、それらの遊離型の血中濃度を増加し、作用が増強されるためと考えられている。 |
レリフェン | スルホニル尿素系血糖降下剤(トルブタミド等) | 本剤の蛋白結合率は高いので、これらの薬剤の血漿蛋白結合と競合し、それらの遊離型の血中濃度を増加し、作用が増強されるためと考えられている。 |
ロキソニン | スルホニル尿素系血糖降下剤 トルブタミド等 | 本剤のヒトでの蛋白結合率は、ロキソプロフェンで97.0%、trans-OH体で92.8%と高く、蛋白結合率の高い薬剤と併用すると血中に活性型の併用薬が増加し、その薬剤の作用が増強されるためと考えられている。 |
大体、NSAIDs、SU剤、ワーファリンといった感じ。
NSAIDsが血漿蛋白と結びつくと、SU剤やワーファリンが追い出され、効果増強してしまう。
SU剤やワーファリンは効果が強まるとリスクの高い薬なので併用注意として挙げられているのだろう。
SU剤やワーファリンを飲んでいる患者にNSAIDsが出たら注意。
NSAIDsの服用は控えることが出来る患者も多いので、副作用だけじゃなく、相互作用の点からも使い過ぎに注意するようアプローチしてみる。
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