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調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

乳がん治療薬

乳がん治療薬一覧

分類医薬品名一般名適応
LH-RHアゴニスト製剤リュープリン酢酸リュープロレリン閉経前
ゾラデックス酢酸ゴセレリン閉経前
抗エストロゲン薬ノルバデックスクエン酸タモキシフェン閉経前後
フェアストンクエン酸トレミフェン閉経後
アロマターゼ阻害薬アリミデックスアナストロゾール閉経後
アロマシンエキセメスタン閉経後
フェマーラレトロゾール閉経後
黄体ホルモン薬ヒスロンH酢酸メドロキシプロゲステロン閉経前後
分類商品名一般名副作用効能効果
ホルモン製剤ノルバデックスタモキシフェンクエン酸塩白血球減少症、肝障害、消化器症状、頭痛、めまい
フェアストントレミフェンクエン酸塩
フェソロデックスフルベストラント注射部位の疼痛・硬結・搔痒感、ほてり、肝機能障害、血栓塞栓
カソデックスビカルタミド乳房腫脹、乳房圧痛、ほてり、勃起力低下
ヒスロンHメドロキシプロゲステロン酢酸エステル血栓症、過敏症、視覚障害、糖尿病悪化、黄疸、浮腫
プロセキソールエチニルエストラジオール血栓症、心電図異常、肝障害
エストラサイトエストラムスチンリン酸エステルナトリウム水和物血栓塞栓症、心筋梗塞、狭心症、血管浮腫
サンドスタチンLARオクトレオチド酢酸塩アナフィラキシー様症状、徐脈
オペプリムミトタン胃潰瘍、胃腸出血、紅皮症、認知症、妄想、副腎不全
ゾラデックスLAゴセレリン酢酸塩インポテンス、排尿障害、肝障害、発熱
リュープリンSR、PROリュープロレリン酢酸塩
イクスタンジエンザルタミド悪心、血圧上昇、ほてり、疲れ、便秘、下痢
ザイティガアビラテロン酢酸エステル血圧上昇、ほてり、顔・手足の浮腫、悪心、下痢、便秘、めまい
アーリーダアパルタミド疲労、皮疹、甲状腺機能低下、かゆみ、体重減少
ニュベクオダロルタミド
オダインフルタミド女性化乳房、食欲不振、下痢、悪心・嘔吐
プロスタールクロルマジノン酢酸エステル注射部位の疼痛・硬結・紅斑、ほてり、体重増加、発熱、高血圧、女性化乳房
ゴナックスデガレリクス酢酸塩
アロマターゼ阻害薬アリミデックスアナストロゾールほてり、めまい、肝障害、腎障害、性器出血、悪心・嘔吐、食欲不振、疲労感
アロマシンエキセメスタン
フェマーラレトロゾール
分類商品名作用機序特徴
ホルモン製剤ノルバデックスホルモン依存性の性器がんに対して、反対の性ホルモンの投与により増殖を抑制するノルバデックスを投与する前にエストロゲン受容体の有無を測定しておくことが望ましい。この受容体の有無により治療効果に差が出る。
フェアストン
フェソロデックス
ヒスロンHエストロゲンの作用を阻害して、がん細胞の増殖を抑制ヒスロンHは血栓症により死亡した例があるので、血栓症には用いない。エストラサイトはエストラジオール、ナイトロジェンマスタードに過敏症のある患者や、血栓塞栓障害、肝動脈疾患のある患者などには用いない
プロセキソール前立腺や精嚢の重量を減少させて、男性ホルモンであるテストステロンの値を低下させる
エストラサイト抗アンドロゲン作用によるがん細胞増殖抑制効果と細胞毒作用による殺細胞効果を相乗的に発揮する
サンドスタチンLAR血中VIP濃度や、カルチノイド症候群の患者におけるセロトニンの腫瘍代謝物である5-HIAAの尿中濃度、血中ガストリン濃度を低下させる作用がある血圧低下、呼吸困難、気管支痙攣、徐脈などの症状が出現したらただちに中止する
オペプリム選択的副腎皮質細胞毒作用、ステロイド合成阻害作用をもつ長期連続大量投与で脳の機能障害があるため、一定期間ごとに行動的・神経学的評価を行う
ゾラデックスLA精巣からのテストステロンの分泌を抑制して、前立腺がんを抑制する腹部に皮下投与、長期的な作用の持続を目的として4週ごとに投与
リュープリンSR、PROテストステロンの産生能を低下させて、前立腺がんを抑制する投与初期に、テストステロン値が上昇して骨性疼痛の一過性の増悪がみられることがある
イクスタンジ前立腺組織の男性ホルモン受容体に拮抗してがんの増殖を抑える比較的安全性は高いが、痙攣が生じる可能性があるので注意する
ザイティガ男性ホルモン合成に必要な必要なCYP17という酵素を阻害するプレドニゾロンとの併用が必要
アーリーダ前立腺組織の男性ホルモン受容体に拮抗してがんの増殖を抑える痙攣発作が起こることがあるので自動車などの運転に注意
ニュベクオ前立腺組織の男性ホルモン受容体に拮抗してがんの増殖を抑える
プロスタール性腺刺激ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト。精巣から男性ホルモンであるテストステロンの分泌を抑制する内分泌療法剤であるため、がんに対する薬物療法について十分な知識・経験のある医師のもとで使用すること
ゴナックス性腺刺激ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト。精巣から男性ホルモンであるテストステロンの分泌を抑制する
アロマターゼ阻害薬アリミデックスエストロゲン生成に関与するアロマターゼを阻害して、エストロゲン合成を抑える性器出血があれば検査を要する
アロマシン
フェマーラ

乳がん

乳がんは、乳房という局所のみの疾患ではなく、全身疾患として位置づけられています。
その理由は、診断時に既に、臨床検査では検出し得ない「微小転移」を伴っている可能性があるためです。
そのため治療は全身の乳がん細胞を根絶させることを第一義とし、患者さんの状態に合わせて、局所療法(外科治療)と全身療法(放射線療法、薬物療法)を組み合わせることを基本としています。
薬物療法は、化学療法薬、ホルモン療法(内分泌療法)薬、分子標的治療薬の3つに大別されます。

乳がん発見のきっかけは乳房のしこりであることが多く、確定診断を行うためには、しこりの視触診や、乳房を厚さ4~5cmまで圧迫してX線撮影するマンモグラフィー、超音波検査が必要となります。
さらに、がんの進行状態を調べるために、CT、核磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)などの画像検査が行われます。
また、センチネルリンパ節への転移の有無も進行状態を確認するうえで重要な指標となるため、センチネルリンパ節生検が行われることがあります。
なお、治療薬の選択の際しては、ホルモン受容体やヒト上皮成長因子受容体2(HER2)タンパクなどの発現の有無や、閉経状況も確認されます。

センチネルリンパ節

センチネルリンパ節は「見張りのリンパ節」とも訳され、がんの原発巣からリンパ管を介して最初に到達すると予想されるリンパ節を指す。つまり、センチネルリンパ節にがん細胞が見つかれば、他のリンパ節へもがん細胞が到達(すなわち転移)している可能性が考えられる。

乳がんの治療

■初期治療(術前薬物療法)
局所進行がんとされるステージⅢでは、手術の前に薬物療法を行う術前薬物療法(ネオアジュバント療法)が標準とされています。
早期であるステージⅠやステージⅡでも癌が小さい場合は、薬物療法そのものに毒性があることからも、むしろ不適となります。
術前薬物療法の目的は、手術時の侵襲を減らすためにあらかじめ病巣を縮小させることです。
さらに、長期的な再発予防効果もあるとされており、その効果は術後薬物療法と同等だと報告されています。
術前薬物療法で用いられる治療レジメンは、術後薬物療法で有用性が確立され推奨されているレジメンに準じます。

■初期治療(術後薬物療法)
術後薬物療法(アジュバント療法)とは、外科治療の後に、治癒と再発防止を目的として行われる薬物療法であり、その治療期間は5年前後と長期にわたります。
近年、欧米で乳がん死亡率が低下していますが、その背景には適切な術後薬物療法の普及があるとも言われています。

■転移まはた再発後治療
遠隔転移のある乳がんはステージⅣに分類され、治癒は非常に難しいと判断されます。
また、初期治療後に再発した癌は、初発時の病巣とかなり近い場所にできる局所・領域再発がんと、遠隔再発がんの2つに分けられます。
局所・領域再発がんは治癒を目指すことが可能ですが、実際の再発例では、治癒の難しい遠隔再発であるケースが多いと言えます。
再発乳がんの治療においては、獲得性の薬剤耐性を考慮すべきであり、初発時の初期治療(術前・術後薬物療法)に使用された治療薬の確認が重要です。
遠隔転移のある乳がん、再発乳がんともに、その治療目的は症状の緩和や延命となります。
初期治療と異なる点は、1つの治療薬や治療レジメンの投与期間は特に定められておらず、無効になる(副作用が重症化する、または、がんが大きくなる)まで、とされている点です。
有用性の高い治療薬や治療レジメンを、できる限り患者を苦しませることなく長く投与し続けるためには、副作用の管理が非常に重要となります。

■薬剤選択とバイオマーカー
乳がんは、固形がんの中でもバイオマーカーによる薬剤選択および薬物治療効果予測が最も進んでいるがんです。
現在、乳がんの薬剤選択や薬物治療効果予測に利用されているバイオマーカーには、ホルモン受容体であるエストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)、上皮成長因子受容体であるHER2が挙げられます。
さらに新たなバイオマーカーとして、HER2同様に細胞増殖マーカーとなる細胞周期関連核タンパク質のKi67も注目されています。
薬剤選択は、これらバイオマーカー発現の有無や閉経状況などから、化学療法薬、ホルモン療法薬、分子標的治療薬のいずれか最適であるかが検討されます。

■化学療法薬
細胞増殖にかかわるDNA、RNA、微小管などに作用して、細胞分裂を抑制し細胞死をもたらします。
ホルモン受容体や、HER2、Ki67発現の有無にかかわらず、すべての患者が投与対象となりえます。通常は、まずホルモン受容体やHER2の発現の有無を確認し、発現している受容体に合わせてホルモン療法薬や分子標的治療薬が選択されます。
一方で、ホルモン受容体とHER2いずれも陰性であった場合はトリプルネガティブ乳がんと呼ばれ、化学療法薬のみが有効となります。
化学療法薬はがん細胞だけでなく正常細胞にも作用するため、特に髪の毛や口、消化管などの粘膜、骨髄などといった新陳代謝が活発な細胞が影響を受けやすく、脱毛や口内炎、下痢、骨髄抑制など、薬剤ごとに幅広い副作用がみられます。
副作用がみられた際にはその症状の重さによって減薬・休薬や、薬剤の変更が必要となりますが、フッ化ピリミジン系薬(カペシタビン、S-1)による手足症候群、タキサン系薬(ドセタキセル、パクリタキセル)による末梢神経障害は、上手に対処することで副作用の発現や重症化を抑えながら継続投与することができます。

■ホルモン療法薬
女性ホルモンの働きを抑える作用などを持つ薬剤であり、ホルモン受容体の発現が確認された乳がん患者が投与対象となります。
術後薬物療法として使用する場合は、5年間の継続治療が目安となります。
副作用は、一般に化学療法薬と比較すると軽いと言われており、LH-RHアゴニスト(ゴセレリン酢酸塩、リュープロレリン酢酸塩)や抗エストロゲン薬(タモキシフェン、トレミフェンクエン酸塩、フルベストラント)によるほてりや発汗などの更年期様症状、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)による関節痛などが代表的です。
多くは治療を開始して数か月から数年後に治まります。

■分子標的治療薬
乳がんで現在承認されている分子標的治療薬はHER2阻害薬とVEGF阻害薬があります。
現在、日本で乳がん治療において承認されているHER2阻害薬は、トラスツズマブとラパチニブトシル酸塩水和物です。
このうち、トラスツズマブの効能効果は「HER2過剰発現が確認された乳がん」であり、初期治療(術前・術後薬物療法でも転移または再発後治療でも使用することが可能です。
一方、ラパチニブの効能・効果は「HER2過剰発現が確認された手術不能または再発乳がん」ですので、初期治療(術前・術後薬物療法)には使用できません。
VEGF阻害薬は、すでに進行大腸がんや進行非小細胞がんにおいて承認されていますが、2011年9月に転移性乳がんに対するパクリタキセルとの併用療法でベバシズマブが承認されました。
薬剤の開発コンセプトは「がんに特異的な因子を阻害すること」ですが、少なからず正常細胞にもHER2やVEGFが発現していることから正常細胞への影響もゼロではなく。トラスツズマブでは心毒性があり、ラパチニブは下痢や皮疹がみられます。
また、ベバシズマブは高血圧が最も多くみられます。

抗癌剤の副作用

①口内炎
化学療法薬による口内炎の発生メカニズムは、薬物による単純な粘膜への障害だけでなく複雑なものとされており、強い痛みとそれによる経口摂取困難をもたらします。
このため、口内炎治療は、痛みのコントロール、栄養サポート、口腔内の衛生状態の保持などからなります。
痛みのコントロール方法としては、リドカイン入りの口内洗浄液の使用や、生理食塩液による洗浄が挙げられます。
なお、クロルヘキシジンでの洗浄効果は証明されていないため、使用は推奨されません。もしも痛みが強いようであれば、鎮痛薬の投与も行われます。

②手足症候群
フッ化ピリミジン系薬のカペシタビンやS-1による手足症候群は、軽度のものを含めるとカペシタビンで50%以上、S-1で20%程度に発生するとされており、患者のQOLを下げ、治療スケジュールにも影響します。
確実な予防薬や治療薬はまだなく、減薬・休薬以外の対策としては、手足への刺激となるものを排除することがよいとされています。
また、カペシタビンによる手足症候群に対しては、保湿クリームが使用されることも多いですが、タンダム化比較試験によって尿素/乳酸系クリームの予防的使用には効果がないことが報告されていますので、注意が必要です。

③末梢神経障害
タキサン系のドセタキセル、パクリタキセルによる末梢神経障害は、用量依存的に発現します。
すなわち、投与を繰り返して総投与量が増していくに従い、末梢神経障害の発現頻度が高くなっていきます。
予防薬や治療薬はまだありませんが、服薬を中止することで症状が改善・消失するとされています。
ただし、改善・消失までに時間のかかる患者や、なかには改善・消失しない患者もいます。
対策としては、手足の先端への冷刺激などを避ける、手袋や靴下を身に着けて保温するなどが推奨されます。

④アロマターゼ阻害薬に関連した関節痛
アロマターゼ阻害薬では、関節のこわばりや痛みが高い頻度で発現します。
多くの場合、服薬開始後2か月以内に生じ、服薬を中止することで消失します。この関節症状は通常の炎症によるものではないとされています。
服薬中止以外の対策としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、オピオイド鎮痛薬などが比較的有効とされており、過半数の患者で効果が得られるとの報告があります。

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yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
好きな言葉:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。

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