更新日:2016年3月18日.全記事数:3,089件

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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コンプライアンスを向上させるべきか?


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クラウゼンのポリオ

「クラウゼンのポリオ」と言われている論文があります。
「低所得世帯の母親は、その多くがポリオについて無知であったにもかかわらず、ポリオワクチンの接種率が非常に高かった」
という逆説的な事実を分析した論文のことです。

なぜこのようなことが起こったのか。

良い母親として見られたい、という思いが、そのような行動を取らせていたのです。
日本ではもっとそのような感情は強そうです。
恥の文化です。

服薬コンプライアンスについても、同じような意識が働いている場合があります。
医師や薬剤師に良い患者と思われたいから、きちんと服薬している。
コンプライアンスの良い患者です。

でも、何のために薬を飲んでいるのかは理解していない。
コンプライアンスは良くても、アドヒアランスは良くない。
目指すべきは、患者さん自身が薬の必要性を理解して、いっしょに治療するという意識を育む、アドヒアランスの向上です。

コンプライアンスを向上させるべきか?

服薬指導の目的として、「コンプライアンスの向上」というものがある。
疑義照会などでも、添付文書の用法と違う場合に、「コンプライアンス向上のため…」一包化の目的も「コンプライアンス向上のため…」、と便利な言葉である。
個人的には、服薬コンプライアンスなんか悪いほうが医療費抑制につながって良いんじゃないか、と思う。こともある。
使い過ぎはダメですけど、飲み忘れは良いんじゃないかと。

薬局で患者に接していると、治療意欲の低い患者というのがたまにいる。
「もういつ死んでも良い」「薬なんか飲みたくない」という患者。

そもそも治療意欲の無い患者であれば病院には来ない。
薬剤師的には、薬が処方されている限りは、コンプライアンスを向上させるべく、治療の必要性を切々と説いていくしかないのだが、考えが覆る患者はいない。

そういう治療意欲の低い患者には医療を施さないほうが医療費抑制にはなりそうだけど、ねえ。

コンプライアンスとアドヒアランス

アドヒアランスという言葉はかなり普及してきたようですが、個人的にはコンプライアンスという言葉に慣れ親しんできたので、アドヒアランスという言葉に慣れない。

コンプライアンスとは、「従うこと」「協力」「服従」という意味です。
アドヒアランスは、「密着」「執着」「固執」「忠実」「支持」「堅持」などの意味です。
コンプライアンスは「指示されたことに従う」、アドヒアランスは「主体的に行動する」ということ。

従来、医療者は「医療者の指示に患者がどの程度従うか」というコンプライアンス概念のもと患者を評価してきました。
したがってその評価は医療者側に偏り、医薬品の服用を規則正しく守らない「ノンコンプライアンス」の問題は患者側にあると強調されていました。
しかし実際の医療現場では、コンプライアンス概念で乗り越えられない治療成功への壁が存在します。
そこで、患者自身の治療への積極的な参加(執着心:adherence)が治療成功の鍵であるとの考え、つまり「患者は治療に従順であるべき」という患者像から脱するアドヒアランス概念が生まれました。

例えば、処方せんの指示通りに薬を飲まない患者がいたとして、「処方せんの指示通り飲んでください」と頭ごなしに言うのはコンプライアンス向上のためであり、なぜ処方せんの指示を守れないのか、患者とともに考え、妥協点を生み出すような取り組みはアドヒアランス向上のためといえるのだろう。

コンコーダンスとアドヒアランス

最近、医療者と患者さんの関わり方を示すモデルとして、コンコーダンスという言葉が使われるようになりました。

これまでによく用いられたアドヒアランスは「患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること」を意味し、「患者さんは治療に従順であるべき」という患者像から脱する概念でした。

一方、コンコーダンスは「医療者と患者さんがパートナーシップの基盤に立ち、患者さんがもつ病気や治療についての経験や信念を重視し、一緒になって治療に関する意思決定を行うこと」を意味しており、治療を遂行しにくい問題があればそれを率直に話し合い、患者さんと医療者がともに解決していくという姿勢がさらに重要になっています。

医療者と患者さんは対等であり、医療者は患者さんの意思決定をサポートする役割を担います。

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