2018年3月28日水曜更新.3,289記事.5,378,270文字.

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尿酸は不要な物質か?

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尿酸は抗酸化物質?

痛風の原因物質として悪者扱いの尿酸ですが、少量の尿酸は体を守るような働きがあるのではないかといわれています。

実は体の中に尿酸が溜まるのは、哺乳類では霊長類といわれるヒトとチンパンジーだけです。
一般に哺乳類では尿酸をアラントインに分解するウリカーゼという酵素があるのですが、オラヌータンからチンパンジーに至る進化の過程でなくなってしまったのです。

ヒトとチンパンジーは、体の大きさと寿命とを考えた場合に他の哺乳類に比べて発がん率が低いため、尿酸には抗酸化作用があるのではないかといわれています。
ただ、そのためにはごくわずかな量の尿酸があれば十分です。
痛風を起こすほどの尿酸は必要ありません。

尿酸の下げ過ぎはよくない?

尿酸は抗酸化物質です。
抗酸化物質といえば、アンチエイジングの代名詞のような、体によさげな物質です。

老化防止作用や、最近では放射線被ばくに効くとかいう話も。

尿酸はビタミンCよりもはるかに強力な抗酸化物質であり、体内に一定量存在することにはおおきな意義がある。
しかし過剰な尿酸は血管に炎症をもたらすことが近年の研究で判明しており、高尿酸血症は放置すべきではないとの論調が主流を占めつつある。
尿酸 – Wikipedia

従来、高尿酸血症は痛風が発症しなければ積極的な治療対象ではありませんでした。

しかし、最近の研究でメタボリックシンドロームなど生活習慣病と尿酸が関連する可能性が示されたため、高尿酸血症と診断された時点で痛風がなくても、生活習慣の改善など治療を始めることが望ましいとされています。

痛風・核酸代謝学会の治療ガイドラインによると、高尿酸血症の診断基準は血中尿酸値7.0mg/dL以上。
すでに痛風がある場合は薬物療法に入る。6.0未満まで下げることが望ましい。
一方、痛風がない無症候性の高尿酸血症患者は、血中尿酸値8.0mg/dLから生活習慣の改善指導を、高血圧や慢性腎臓病(CKD)など合併症がある場合は、すぐに薬物療法に入る。データ不足で明確な結論は先送りされているが、こちらの暫定治療目標値も6.0未満。
痛風の有無によらず6.0未満に維持するとよいようです。

「Lower the Better~下げるほどよい」とされる血圧とは違い、下げ過ぎは好ましくありません。
というのも、尿酸は強力な抗酸化作用があるからです。
活性酸素は生体の老化や発がん性に関係する有害な物質で、さまざまな組織障害を引き起こす。
尿酸は活性酸素を掃除することで生体の組織を保護すると推測される。

しかし現代人の生活習慣では「低尿酸血症(基準値2.0mg/dL以下)」に陥る可能性は少ない。
そのため、尿酸の下がり過ぎを心配するよりも、高尿酸血症の治療を積極的に行った方が良いというわけだ。

尿酸による痛風発作のメカニズム

体内に細菌やウイルスが侵入すると白血球が戦いを挑みます。
その戦いの様を実感できるのが痛風発作です。決まって早朝の4時頃ピークに達する痛風発作の激痛。炎症で真っ赤に腫れた足の親指の付け根で何が起こっているのか。
血液中に溶けきれなくなった過剰な尿酸は、針状の結晶(尿酸塩結晶)となって関節組織に沈着します。そして、何らかの物理的刺激やストレスなどによる尿酸値の急激な変動によって尿酸塩結晶がはがれ落ち、関節腔内に放出されると、白血球などの炎症細胞が異物と認識して遊走してきます。
白血球は尿酸塩結晶を貪食し、蛋白分解酵素や炎症メディエーターを放出します。その際に起こるのが痛風発作の激痛なのです。

尿酸酸化酵素

尿酸は体内で合成されたプリン体や」食物から吸収されたプリン体の最終代謝産物です。
多くの哺乳類には「尿酸酸化酵素」が存在し、尿酸はアラントインに分解されます。さらに、硬骨魚類ではアラントイン酸に、両生類や軟骨魚類では尿素に分解されます。
しかし、ヒト、チンパンジー、ゴリラなどの大型類人猿と一部の旧世界ザル、鳥類、一部の爬虫類は、突然変異によって尿酸酸化酵素の活性が失われているため、尿酸を分解することができないのです。
この酵素遺伝子の研究から、大型類人猿では約1500万年前に、一部の旧世界ザルでは約900万年前に突然変異が起こったといわれています。
このように、比較的近い時期に独立して突然変異が起こったことは、何らかの自然選択が働いて尿酸酸化酵素を失ったことが示唆され、特に大型類人猿がこの酵素を失ったことは、進化学的にみて有利な突然変異であったといわれています。

尿酸の役割

霊長類の最大寿命と尿酸レベルの間に一定の関係がみられ、尿酸レベルが高いほど最大寿命が長いことが明らかになっています。
また、糖尿病患者や喫煙者に尿酸を投与(尿酸1000mgを静脈内に投与)して血清尿酸値を上昇させると、低下していた血管内皮細胞の機能が健常人レベルまで回復することも報告されています。
さらに、特発性腎性低尿酸血症患者では低尿酸血症そのものが運動後急性腎不全の発生促進因子といわれています。
これまで、尿酸は不要の物質とされ、その生理的意義はほとんど研究されてきませんでした。しかし、尿酸は活性酵素のスカベンジャーとして働き、ビタミンやポリフェノールなどより遥かに強力な抗酸化効果をもっていることが明らかになりつつあります。
そのため、血中の尿酸は腎で約90%が再吸収され、実際に尿中に排泄されるのはわずか10%に過ぎないのです。

参考書籍;クレデンシャル2013.4、調剤と情報2011.12

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コメント

  1. 今まで悪役だった尿酸の正当な働きが認められて嬉しい。さらなる事実が発見されれば、また、ご教示ください。

    Dr.K:2017/9/24

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