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痛み止めで胃に穴があく?
公開. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約5分29秒で読めます.
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痛み止めで胃潰瘍?
痛み止めというとNSAIDsですが、この薬はプロスタグランジンという物質の合成を阻害することで働きます。
このプロスタグランジンが胃の粘膜を保護する働きも担っているために痛み止めを飲むと胃を荒らすことになります。
胃潰瘍の原因のほとんどはピロリ菌ですが、2番目に多いのがこのNAIDs潰瘍。
アメリカではNSAIDsによる消化管障害で、年間に10万人以上が入院し、1万6千500人が死亡しているらしいです。
1ヶ月続けて飲むと10%くらいの人に胃に穴が開くらしいです。
頭痛や生理痛でそんなに長く飲むことはないと思いますが、関節リウマチや変形性関節症、腰痛などでは長く飲んでいる人が多いです。
1番多いNSAIDsの長期服用は血栓予防のための低用量アスピリンです。
痛み止めが処方されている人に「胃に穴が開くことがあります」とストレートに伝えてしまうと、ノンコンプライアンスに陥る可能性が高いのでオブラートに包んで伝える必要がある。「胃を荒らすことがあります」程度かな。
NSAIDsと胃薬
NSAIDsが処方されるとき胃薬もいっしょに処方されることが多いです。
ムコスタやセルベックスなどの胃粘膜保護薬が処方されることが多いと思いますが、ガスターなどのH2ブロッカー、AM散SM散などの消化酵素剤なんかも使われるようです。
タケプロンには「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の適応があります。
寝る前にNSAIDs?
痛み止めを飲んですぐに横になると、胃に薬が停滞するので胃を荒らす原因になります。
しかし、具合の悪いときは横になりたいものです。
私も頭痛で痛み止め飲むときには、すぐに横になってしまいます。
胃の弱い人は、しばらく起きてたほうがいい。
就寝中の痛みにNSAIDsを就寝前投与、あるいは夜間頻尿に対する処方でNSAIDsを就寝前投与なんてのもあるそうな。
できれば食後に飲んでほしいところですが、寝る前の食事はどうかとも思いますし、牛乳とかで代用しようにも夜間頻尿という処方目的だと、水分も摂らせたくはない。
NSAIDs潰瘍は見つかりにくい?
NSAIDsについては、かつて関節リウマチ患者に頻用されていた当時、消化性潰瘍(NSAIDs潰瘍)が頻発して問題になった経緯がある。
この場合、NSAIDsにより心窩部痛がマスクされることから、発見が遅れがちになることなどが問題視された。
NSAIDsによる消化性潰瘍により消化管出血を起こしているケースでは、鉄欠乏となりヘモグロビン値低下となることが多い。
処方箋に検査値が記載されている場合は、ヘモグロビン値にも注意することが必要だろう。
消化管出血を疑う場合は、便の色の変化も併せて確認したい。上部消化管出血があると黒色便を認める。
消化性潰瘍患者は痛み止め飲んではダメ?
潰瘍を起こす原因には、ピロリ菌のほか、痛み止めや解熱剤として使われている消炎鎮痛剤があります。
痛み止めは炎症が起こった所で大量に作られるプロスタグランジンという物質ができないようにして痛みを抑えます。
一方、プロスタグランジンは胃粘膜で常に作られ、粘液やアルカリ性物質の分泌を増やし、粘膜の血流を良くするなど胃粘膜を守る役割を果たしています。
痛み止めによってこの胃を守る仕組みが、うまく働かなくなり、潰瘍を起こすと考えられています。
関節リウマチの方が痛み止めを3ヶ月以上服用した場合、約16%の方が胃潰瘍に、約2%の方が十二指腸潰瘍となり、潰瘍による出血も5倍から6倍と高くなることが示されています。
ですから、潰瘍の患者さんで痛み止めを服用している場合には、直ちに服用を中止してください。
また、痛み止めのアスピリンの少量の服用は、血液が固まって血管が詰まるのを防ぐ作用があるため、脳梗塞や心筋梗塞の予防に使われていますが、少量でも潰瘍を起こすことが知られています。
胃潰瘍に使える痛み止めは?
ロキソニンなど、NSAIDsの添付文書には、禁忌事項に「消化性潰瘍のある患者」が一律に記載されている。
プロスタグランジン生合成阻害を機序とする薬剤であり、胃粘膜防御能の低下を引き起こすことから、禁忌の理由は明白である。
では、消化性潰瘍のある患者の痛みや発熱に対応するにはどうしたらよいのか。
一過性の症状であれば、薬を使用しなくとも、体を冷やしたり、湿布などの外用剤を使用したりすることで済むこともあるだろう。
しかし、関節リウマチのような慢性の炎症、痛みに対して、NSAIDsを全く使用しないというわけにはいかない。
痛みがひどく、ベッドから起き上がることもできない患者に対して、「胃が悪いから痛み止めは飲まないように」とは、とても言えない。
NSAIDsの服用期間が長くなれば、胃粘膜障害が引き起こされるリスクも大きくなる。
NSAIDsの必要性の高い患者ほど、消化性潰瘍を合併する率が高くなり、禁忌事項に抵触するということにもなる。
NSAIDsは消化性潰瘍の患者に禁忌です。
ソランタールも消化性潰瘍に禁忌となっています。
アセトアミノフェンも禁忌です。
何も使えませんね。
痛みは我慢してください。
痛み止めの坐薬なら胃にやさしい?
よく「坐薬のほうが胃に優しい」「食後に飲んだほうがいい」と言われますが、胃粘膜のプロスタグランジンが影響しているのであれば、あまり意味の無いことのようにも思えます。
NSAIDsによる胃粘膜障害機序は複数あります。
その一つに、NSAIDs自体による胃粘膜への直接障害作用があります。
NSAIDsは経口投与すると胃液中のH+と結合して細胞膜を通過し、胃粘膜上皮細胞に侵入して細胞内アシドーシスを惹起するとともに、NSAIDsが細胞内のミトコンドリアに作用して呼吸を抑制し、細胞死を惹起します。
それゆえに、NSAIDsが直接胃粘膜に触れないようにする方法は意味のあることだと言えるのでしょう。
坐剤は、胃・十二指腸粘膜への直接刺激作用を避けることができますが、プロスタグランジンの生合成阻害作用による胃腸障害は薬物の血中濃度が原因となるため、経口剤と同様に注意が必要です。
NSAIDsの投与経路別に胃粘膜病変の発生頻度を調べた結果、経口剤と坐剤ではその頻度に差が無かったという報告もあります。
坐薬であっても、直腸の静脈叢から吸収されたNSAIDsが血流を介して速やかに胃粘膜に到達し、経口剤と同様に、胃粘膜のPG量を低下させると考えられます。
低用量アスピリンなら胃潰瘍にはならない?
低用量アスピリンの処方は長期にわたりますが、低用量であるせいか、胃粘膜障害に対して厳重な注意がはらわれていないことも多いです。
内視鏡検査を行い消化性潰瘍と診断された患者の約4分の1がNSAIDs潰瘍であり、そのうち約4分の1が低用量アスピリンによるものだったという報告もあります。
たとえ低用量アスピリンであっても発現リスクは高く、予防対策は不可欠です。
低用量アスピリンによる胃粘膜傷害の発現頻度は、1年を通して服用している患者の1~2%と低いですが、処方量が膨大なだけに医療従事者が遭遇する機会も多いです。
自覚症状が少ないことが多いので、定期的な健診も必要となります。
低用量アスピリンでも潰瘍発症リスクは変わらない
アスピリンのCOX阻害作用については、胃のPGE2合成に関与し、胃粘膜傷害の発症に関わるCOX-1では低用量から阻害し、量を増やすと、炎症に関与するCOX-2も阻害するため、低用量や腸溶錠であっても潰瘍発症のリスクは変わらない、とされている。
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