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授乳中に薬を飲んじゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:授乳. 閲覧数:69回
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目次
授乳と薬
「授乳中にこの薬飲んでも大丈夫ですか?」
よく聞かれる質問です。
「母乳中に薬が移行することが認められていますので、薬の服用中は授乳を中止して下さい。」
しかし、一旦授乳を中止してしまうと、そのあと母乳が出にくくなってしまうこともあり、軽々しく「授乳を中止してください」と言うべきではありません。
国立成育医療センターのホームページには、授乳中に使用しても問題ないとされる薬剤の代表例のリストがあります。
これを見ただけでも、ほとんどの薬が大丈夫だとわかります。
薬の添付文書には薬の成分が母乳中に出る場合は、「授乳を避ける」と記載されているものが多いのですが、メーカー側は責任を取りたくないので、授乳婦や妊婦や小児に対する使用はあまりすすめません。
「できるだけ薬を飲む直前に授乳して下さい。」
「薬を飲み始める前に搾乳し冷凍保存しておくようにして下さい。」
こういう指導をする人もいますが、確かに母乳に移行する量は減らせますが、どのくらい効果のある方法なんだかよくわかりません。
授乳する時間とか量なんてコントロールできるものではありません。
授乳婦に禁忌の薬
一般的に母乳育児中に禁忌となる薬剤はごく一部で、免疫抑制剤、抗がん剤、放射性薬品です。
免疫抑制剤のシクロスポリンは、動物実験では投与量の2%が母乳中に移行し、ヒト母乳中にも移行することが報告されています。
抗がん剤は母親の血中濃度に関係なく母乳に移行し、乳児に影響があるとされています。
放射性薬品は母乳からも排泄されるため、曝露中の授乳は控えます。
授乳中止が必要な期間は放射性薬品の種類や使用量によって異なり、48時間~永久中止までです。
一般的に、半減期の5~10倍にあたる期間は授乳を中止することとされています。
母乳に移行しやすい薬の特徴
母乳に移行しやすい薬の因子として、
・脂溶性が高い
・分子量が小さい
・血清蛋白結合率が低い
・生物学的利用率が高い
・薬物血中濃度半減期が長い
・弱塩基性で薬剤解離定数が7.4より小さい
・分布容積が大きい
などが挙げられます。
母乳は急に止まらない
「薬を飲むなら、授乳は止めてください」とお母さんたちに言うことがあります。
しかし母乳は水道の蛇口のように急に止めたり、すぐに出したりできるものではありません。
母乳を飲ませられなかったら乳腺炎になることもあるし、母乳の分泌量が減ってしまいます。
薬を飲んでどのくらい経ったら授乳していい?
授乳を控える期間は、一般に血中濃度半減期の5~10倍であるとされています。
一般に服用した薬が血液中から消失するに、その薬(成分)の血中濃度半減期(t1/2)の4〜5倍の時間経過が必要とされます。
どうしても飲まなければならない薬の場合は、血中濃度半減期を確認し、その4〜5倍の時間経過後に授乳を再開すると影響がほとんどありません。
母乳中からの消失も血液中からの消失とほぼ同様と考えられます。
その間は粉ミルクを使用することを勧めます。
薬を飲む直前に授乳
薬を飲む直前は、最も薬の濃度が下がっているので、その時間帯に母乳を飲ませるといい。
と、説明する薬剤師がいる。
この説明で安心する母親もいるが、このアドバイスを負担に感じる授乳婦もいる。
体調がすぐれず授乳が大変だと感じている母親では、服薬時間や授乳時間を細かく決められることがストレスに感じる人もいる。
血中濃度が低い時間帯の方が母乳への移行量は少ないと考えられるが、そもそも、授乳中でも服用可能とされる薬は、最も血中濃度が高いときに授乳しても問題がなく、服薬と授乳のタイミングを考える必要はないはず。
より安全な時間帯だと思うことで安心する母親には伝えるのもいいが、科学的には大差ないことを分かった上で、患者の気持ちを十分考えて使い分けたい。
授乳中に使用しても問題にならない薬
授乳婦が服薬すると、ほとんどの薬剤が母乳中に移行すると言われています。
しかし実際には、母乳への薬物の移行量は極めて少ないことが知られています。
したがって、多くの場合、授乳を中止したり、授乳のために服薬を中止する必要はないと考えられています。
確かに、添付文書には「授乳中の婦人に投与することを避け」あるいは「やむをえず投与する場合には授乳を中止させること」等の記載がされていますが、その根拠となる情報の多くは動物実験によるものです。
国立成育医療研究センターでは、ホームページに授乳中に使用しても問題にならない代表的薬剤と授乳中に使用してはならない薬剤の代表例を掲載しています。
参考書籍:調剤と情報2012.8
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