2018年10月15日更新.3,348記事.5,690,241文字.

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高齢者のかゆみに抗ヒスタミン薬は効かない?

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乾皮症

高齢者に認められるかゆみの多くは、皮膚乾燥に由来する乾皮症のかゆみである。

ヒスタミンはよく知られる起痒物質であり、臨床現場では抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)が繁用されている。
しかし、乾皮症のかゆみは抗ヒスタミン薬で制御することが困難であるため、本疾患ではヒスタミン以外のかゆみ発生機序の存在が示唆される。

乾皮症のかゆみ

乾皮症のかゆみは、抗ヒスタミン薬が奏効しにくい場合が多い。
この原因として、ヒスタミン以外のかゆみ発現機序の関与が示唆されており、その一つに、表皮内知覚神経の稠密化によるかゆみ閾値の低下が推定されている。

実際に、高齢の乾皮症患者の皮膚では、健常者と比較し、神経線維が表皮内に侵入し、角層直下にまで伸長していることが観察された。

さらに、乾皮症は皮脂減少性湿疹、アトピー性皮膚炎と同様にドライスキンを呈する疾患でもある。

ドライスキンは、環境的要因(季節、湿度)や遺伝的要因(フィラグリン遺伝子変異)を背景に、角層の皮脂膜、角質細胞間脂質、天然保湿因子が減少し、角質水分量が低下することで起こる。

このような皮膚では、前述した神経線維の表皮内侵入とともに、バリア機能が低下し、物理、化学、生物学的な外部刺激に対し過敏である。
これら外部刺激は、表皮内神経(特にC-線維)を活性化させ、その興奮が脊髄-視床経路を通って脳に伝達され、かゆみとして認識される。
このかゆみ発現経路には、ヒスタミンが関与していない。

そのため、乾皮症を含む表皮内神経の稠密化が関与するかゆみには、抗ヒスタミン薬が奏効しにくいと考えられる。

高齢者の乾燥肌とアトピー患者の乾燥肌の違い

肌の乾燥状態は高齢者の多くにみられ、とくに冬季に悪化してかゆみの原因となります。
このような状態は老人性乾皮症といわれ、時に湿疹化して貨幣状湿疹などの治りにくい皮膚炎を併発します。

一方、アトピー性皮膚炎患者では乳幼児期から成人に至る比較的若年者にも肌が乾燥しており、湿疹病変とともに解決すべき大きな問題となります。
これらの2つの疾患における肌の乾燥は見た目には大きく変わりませんが、そのメカニズムは異なります。

老人性乾皮症においては皮脂腺からの皮脂の分泌量が低下し、天然保湿因子が減少しているために角質層の水分保持能が低下しています。

さらに角質層の蛋白質分解酵素の作用が弱いために角質層が厚く積み重なっています。
そこで乾燥した角質層にひび割れが生じやすく、外的な刺激因子が作用しやすくなっています。

一方、アトピー性皮膚炎では、角質層のバリア機能の主役を担う角質細胞間脂質のセラミドの含有量が低下しており、微生物やアレルゲンの侵入が起こりやすくなり、そのために皮膚炎が持続してさらに角質層のバリア昨日が低下する悪循環を形成しています。

いずれの疾患においても、肌の乾燥対策としてのスキンケアには入浴時の身体の洗浄方法と、入浴後の保湿剤の使用方法の2つの点が問題となります。
保湿剤は入浴後できるだけ早い時間のうちに上手に塗ることが大事です。

乾燥肌と入浴

入浴時に身体を石鹸で洗浄することは、皮膚表面に付着した微生物やアレルゲンとともに古い角質層を除去して皮膚を清浄に保つ有益な意義がある一方で、皮脂腺から分泌されて皮膚表面を保護している皮脂を除去し、角質細胞間脂質や遊離アミノ酸などの天然保湿因子の流出を促してしまうという、乾燥肌の悪化原因ともなり得ます。

そこで乾燥肌の人は入浴時に石鹸を使うべきでないという議論も成り立ちますが、現代のわが国の清潔観念や、治療として軟膏を塗布している患者さんの場合を考慮すると、たとえ乾燥肌の人にでも石鹸の使用を常識的には勧めて良いでしょう。

とくにアトピー性皮膚炎の患者さんは自己の汗に含まれるアレルゲンによって即時型反応を示すことが近年知られており、皮膚を洗浄することは治療上も重要です。

おもに身体を洗浄する石鹸の種類は固形であるか液状であるか、主成分である界面活性剤は何であるか、香料などの添加物は何が含まれるかなどが異なる種々の製品が市販されていますが、個々の製品間で洗浄力や乾燥肌に対する影響などを客観的に比較検討したデータはありません。

基本的にはどの種類を選んでも良いと思われますが、患者さんによっては添加物として含まれるラノリンや色素などにより過敏性を示す人もいますので、その点は十分注意が必要です。
少なくとも使用によりかゆみや皮疹の悪化がないものを選ぶことが重要です。

石鹸の種類よりも重要なのが、皮膚のこすり方です。
老人性乾皮症にしてもアトピー性皮膚炎にしても、身体を洗う際にはかゆみのために強くこすりがちです。
しかし皮膚を強くこすることは角質層の過度の剥離と水分喪失を引き起こし、皮膚炎を誘発してしまいます。
洗う道具としてはナイロン100%のタオルは使用せず、綿や麻の配合割合の高い生地のタオルが肌に優しいといわれています。
そのようなタオルでしっかりと泡立たせ、過度にこすらないように用心し、洗浄後は十分にすすぐことが重要です。

乾皮症

乾皮症には、皮膚の老化現象で生じるタイプと、皮膚の病気に伴って生じるタイプがあります。

前者の代表例が老人性乾皮症です。

後者の代表例としては、アトピー性皮膚炎(AD)患者に生じるアトピー性乾皮症があります。

老人性乾皮症

老人性乾皮症では、老化現象による表皮細胞の分裂増殖速度の低下や、蛋白質分解酵素の活性低下による角質層剥離の遅延のため、角質細胞が貯留し、角質層の層数が増加してきます。

その結果、角質層の弾力性がなくなり、外力により容易に微小な亀裂が生じ、皮膚が乾燥します。

また、老化現象に伴う皮脂腺からの脂質の分泌低下も、症状の増悪の原因となっています。

アトピー性乾皮症

一方、アトピー性乾皮症はADの患者さんに生じるもので、ADを発症しかけている皮膚の状態ともいえます。

アトピー性乾皮症では、持続的かつ軽微な皮膚炎刺激により、表皮細胞の分裂増殖速度が亢進しています。

その結果、機能的に不完全な角質層(細胞間脂質、とくにセラミドの含有量が少ない)が形成され、皮膚のバリア機能が低下し、皮膚が乾燥します。

老人性乾皮症とアトピー性乾皮症

老人性乾皮症もアトピー性乾皮症も、湿度が低下する冬季に増悪し、皮膚がカサカサし、かゆい、というおおまかな点では同じです。

しかし、細かい点で異なるところもあります。

老人性乾皮症は、下腿など皮脂腺が少なく、露出しやすい場所によく発症しますが、体幹部に生じることも多いです。

一方、アトピー性乾皮症については、外からの刺激を受けやすい四肢や顔面、肌着による刺激を受けやすい体幹部に発症します。

どちらの乾皮症も、皮脂腺が発達し剛毛で保護された頭皮や陰部、腋窩にはあまり発症しません。

また、老人性乾皮症では硬くなった角質層がひび割れて生じるため、外観は多少光沢を伴っており、部分的に亀裂が入っている像が肉眼的にも観察されます。

この亀裂部位に皮膚炎を生じた結果、かゆみを訴えることもしばしばです。

一方、アトピー性乾皮症では未成熟な角質層が形成されるため、皮膚の表面には、鳥肌のようなブツブツ、ザラザラや細かい鱗屑がみえ、時には粉を吹いたようになっていることもあります。

加えて微小な皮膚炎が持続しているためかゆいことが多く、時には軽度潮紅してみえることがあります。

老人性乾皮症には強いステロイド

アトピー性乾皮症の場合、角質層バリア機能の低下がみられるため、ステロイドの経皮吸収は正常より亢進していると考えられます。

したがって、弱いマイルドクラスのステロイド外用剤で効果が十分なことが多いです。

一方、老人性乾皮症の場合には、亀裂部位ではバリア機能は低下しているものの、亀裂していない部位では角質層の硬さのためステロイドの経皮吸収が良くないと考えられます。

したがって、アトピー性乾皮症に比べると、より強いクラスのステロイドが必要です。

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