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イメンドは遅発性の嘔吐にも効く?
公開. 投稿者:めまい/難聴/嘔吐.この記事は約3分60秒で読めます.
1,494 ビュー. カテゴリ:遅発性嘔吐とイメンド
癌化学療法によって引き起こされる悪心・嘔吐は、その発現時期により、24時間以内に発現する「急性悪心・嘔吐」、24時間以降に発現する「遅発性悪心・嘔吐」、次回投薬の直前に発現する「予測性悪心・嘔吐」の三つに大別されます。
悪心・嘔吐の対症療法には、セロトニン3(5HT3)受容体拮抗剤が広く使用されるほか、ステロイド剤、抗不安剤なども使用されます。
しかし、これらは「急性悪心・嘔吐」には有効ですが、「遅発性悪心・嘔吐」には必ずしも有効ではありません。
新しく発売された制吐剤のイメンドは、世界初の選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗剤です。
NK1受容体は、神経伝達物質サブスタンスPの受容体であり、サブスタンスPは、嘔吐や痛み、不安、喘息、膀胱炎、片頭痛などの発現に深く関与します。
イメンドは、サブスタンスPとNK1受容体との結合を選択的に遮断することにより、抗癌剤による悪心・嘔吐を抑制するものと考えられています。
従来の薬とは作用機序が異なることから、他の制吐剤と併用することで相乗効果が期待できます。
また、イメンドは、急性の悪心・嘔吐のみならず、従来薬では効果が不十分だった遅発性の悪心・嘔吐にも有効であることが確認されています。
添付文書の適応も、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」となっています。
悪心・嘔吐分類 | 発生時期 |
---|---|
急性 | 抗がん剤投与後24時間以内に生じる |
遅発性 | 抗がん剤投与後24時間以降に生じ、数日間持続 |
予期性 | 前治療による悪心・嘔吐の経緯など精神的要因により出現 |
遅発性悪心・嘔吐の発生機序はまだ完全に解明されていませんが、急性期悪心・嘔吐に比較し、セロトニンの関与は少なく、脳浮腫、胃や腸管の運動低下、および腸管上皮障害による腸管内の細胞分解産物の血中への移行などが考えられています。また、患者によっては精神的な要素も関連するといわれています。
抗癌剤による悪心・嘔吐の発生機序
抗癌剤が体内に入ると、小腸にあるクロム親和性細胞がダメージを受けてセロトニンを放出します。
このセロトニンを受けた5-HT₃受容体が、脳内の化学受容器引き金帯(CTZ)を介して延髄の嘔吐中枢を刺激し、嘔吐が起こります。同様に、サブスタンスP(タキキニンと呼ばれる神経伝達物質の一種)が放出されニューロキニンー1(NK-1)受容体に取り込まれ、延髄の嘔吐中枢を刺激して嘔吐が起こります。
選択的NK1受容体拮抗薬
イメンドは、遅発性嘔吐に有効性が確認された、世界初の選択的NK1受容体拮抗型制吐薬である。
イメンド(アプレピタント)は、サブスタンスPの受容体であるニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であり、抗悪性腫瘍薬投与に伴う遅発性の悪心・嘔吐の予防に有効で、わが国でも承認された。
高度催吐性リスク(AC療法など一部の中等度催吐性リスク含む)の抗がん剤に対する制吐療法として各種ガイドライン上で推奨されている。
催吐性リスク分類 | 急性期 | 遅発性 |
---|---|---|
高度催吐性リスク | 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン+アプレピタント | デキサメタゾン+アプレピタント |
中等度催吐性リスク | 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン | デキサメタゾン |
アプレピタントを服用する場合には、コルチコステロイド、ワルファリンとの併用に注意が必要となる。
特に糖尿病患者の場合はアプレピタントとコルチコステロイドを併用した際に、コルチコステロイドの血中濃度上昇により血糖上昇がみられることがあり、注意が必要である。
5-HT3受容体拮抗薬やアプレピタントでは、便秘傾向となりやすいため、抗がん剤による下痢の発生時期も考慮した排便コントロールへの配慮も欠かせない。
デキサメタゾンとイメンドの併用
デキサメタゾンがどのように制吐作用を示すのか、その機序は十分には解明されていませんが、他の制吐薬と組み合わせて使うことで作用が増強されるようです。ただし、アプレピタントとは「併用注意」です。デキサメタゾンはチトクロムP450(CYP)3A4で代謝されるのに対し、アプレピタントはCYP3A4阻害作用があり、デキサメタゾンの代謝が阻害されて血中濃度が高くなるためです。
デキサメタゾンの1日投与量は通常4~20mgですが、アプレピタントとの併用においては半量程度に減量して使用されることが多いようです。
マクロライド系抗菌薬やアゾール系抗真菌薬などCYP3A4が関与する薬剤では相互作用が考えられるため、デキサメタゾンの処方時は併用薬に注意が必要です。
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