更新日:2015年10月22日.全記事数:3,117件.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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錐体外路症状は薬が効いてる証拠?


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イライラするのは薬のせい?

抗精神病薬の副作用に錐体外路症状(EPS)というのがあります。

アカシジアやレストレスレッグス症候群などがありますが、イライラや不安を伴うことが多いです。

イライラや不安は統合失調症の精神症状でも出てくるものなので、薬の副作用なのか、病気の症状なのか、判断に苦しむことが多いです。

抗精神病効果と錐体外路症状はセット?

セロトニンやノルアドレナリンは1930年代に、ドーパミンは1950年代に発見された神経伝達物質ですが、抗精神病薬がこれらとどのような絡みがあるかがわかってきたのは、分子生物学的手法を用いた研究が盛んになる1980年代以降です。

定型抗精神病薬が開発されていた初期の時代は、新薬の開発方法といえばありとあらゆる類似薬物を投与して、精神症状に対する効果を判定するという手法でした。

ですから何らかの神経伝達物質の量を加減したり、その受容体を遮断するといった的を絞った設計思想がみえるものではなかったのです。

では、何を手がかりに「これは新しい抗精神病薬になる可能性がある」と判断していたのでしょうか。

当時、1つだけわかっていたことは、「抗精神病薬が精神症状に効果を発現するには服用から多少タイムラグがある」が、「副作用である錐体外路症状の発現は、それより早く認められる」ということでした。

ですから、新薬の開発において精神症状に効果が得られる薬は必ず錐体外路症状も発現するはず、という「抗精神病効果と錐体外路症状はセットである」という概念が出来上がり、これが「定型」とされたのです。

このような固定概念があったため、錐体外路症状の発現が少ない薬剤については、投与されても正確に評価されない事態が起きてしまいました。

1960年代初頭に欧州で臨床試験がはじめられた非定型抗精神病薬のクロザピンは、投与しても錐体外路症状が発現しなかったため、「抗精神病薬として役に立たない、期待を裏切られた」とがっかりされたといいます。

しかしそのうちこれらの薬剤の精神症状への効果が確認され、「抗精神病効果と錐体外路症状がセットでない」=「非定型」という分類が出来上がったのです。

ただ、今、定型抗精神病薬を服用している方は副作用が心配になると思いますが、錐体外路症状を効果の指標にするという考えは、ドーパミン受容体の遮断作用がどれくらいが適切なのかがわからなかった時代のものです。

定型抗精神病薬であっても、ドーパミン受容体の占拠率が適正な範囲におさまっていれば、抗精神病作用が得られ、かつ錐体外路症状のような副作用なしに治療を続けられます。

また、その後の研究や治療への導入後の臨床知見から、非定型抗精神病薬も高用量を投与すれば、同様に錐体外路症状が発現することがわかってきました。

非定型抗精神病薬であっても、投与量が過剰であっては意味がないのです。

EPSとは?

統合失調症でみられる身体合併症というと、錐体外路症状(EPS)が最も有名。

EPSとは、歩行障害や嚥下障害などが多面的に生じる、不随意運動を主とする運動障害のことです。

これが精神科においては抗精神病薬の副作用として発現してしまいます。

過去の精神科医療では、錐体外路症状が出たら、抗精神病薬の効果が出ているサインだと考えた時代もあったそうです。

この考えはneuroleptic threshold theory (抗精神病薬の閾値理論)と呼ばれており、これが定型、非定型の言葉の由来となりました。

つまり、EPSが出る薬物を定型としていたので、EPSが出現しなくても効果がある薬物は非定型になるわけです。

しかし当然ですが、EPSは抗精神病薬の作用ではなく、出ては困る副作用です。

近年、非定型抗精神病薬の使用が増え、EPSは減少すると思われていましたが、現実は必ずしもそうではありません。非定型抗精神病薬の単剤投与がまだ少ないからです。

ドパミン仮説とは?

コカインやアンフェタミンなどの麻薬は、幻覚・妄想を引き起こすことが知られています。

それは統合失調症でみられる幻覚・妄想とほとんど区別がつきません。

コカインやアンフェタミンの薬理作用はドーパミンの放出を促すことですから、ドーパミンの過剰と統合失調症の精神症状は間違いなく関連しています。

シーマンらの有名な研究結果に、「臨床的に用いられる抗精神病薬の量と、そのときのドーパミン受容体遮断作用は相関する」というものがあります。

すべての抗精神病薬はドーパミンD2受容体遮断作用があるといわれるように、ドーパミン受容体遮断が抗精神病薬の薬理作用なのです。

カプールらはPETを用いた研究で、抗精神病薬でドーパミン受容体を65%以上遮断すると治療効果として抗精神病作用があらわれ、72%以上でプロラクチンの上昇が認められ、78%以上遮断すると、副作用である錐体外路症状が出現することを示しました。

ドーパミンを適度に遮断することで抗精神病作用が得られるのですから、統合失調症の病態は、「ドーパミン過剰放出」が推測されるのです。

錐体外路症状が出たら中止?

PETを用いた脳内D2受容体の占拠率と臨床効果の関係の研究によると、D2受容体の占拠率65%以上で抗精神病効果が現れ、80%以上になると錐体外路症状が出現しやすいことが明らかになっています。
このことから65~80%の占拠率になるように用量設定を行うことで、錐体外路症状を防ぎながら治療効果を得ることができると考えられます。

統合失調症とドパミン仮説

統合失調症の原因説として、ドパミン仮説があります。
統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想など)は基底核や中脳辺縁系ニューロンのドーパミン過剰によって生じるという仮説です。
抗精神病薬の主な作用がドパミンD2受容体遮断作用であるため、脳内でドパミンの活動が過剰になっていることが異常の本態であり、ドパミンの神経伝達を抑制することが効果的な治療となると考えられてきました。
しかし、今日の理解では、ドパミン神経はストレスに対して重要な機能を果たしていると考えられるようになっており、統合失調症は、ドパミンの過剰放出によってその機能が失われ、ストレスに対する抵抗力が低下していることによって生じると考えられています。

受容体プロフィールとは?

受容体プロフィールの概念を説明しますと、世界で発売されているすべての抗精神病薬は、現在までのところすべてドパミンD2受容体を遮断して臨床効果を得ています。

古くはシーマンらが、ドパミン受容体が神経遮断受容体と言われていたころに、その神経遮断受容体を遮断する濃度で、お薬が効果を示すのだということを示しています。

最近ではカプールらが、脳の中のドパミンD2受容体を65%遮断したら臨床効果が得られて、72%以上遮断してしまうと副作用でプロラクチンが上がり始めて、78%以上遮断すると錐体外路症状が出るということを、PETを用いて証明しています。

受容体は適度にふさがなければならない?

カナダのKapurという研究者は、大脳の線条体において65~72%のドパミン受容体がふさがれたときに、副作用を起こさず、しかも抗精神病作用が得られるということを実験により示しました。

これ以下だと薬の効果がなく、これ以上だと望ましくない副作用が出るというのです。

非定型薬は定型薬に比べて錐体外路症状を引き起こしにくいですが、これは、非定型薬のほうが受容体にゆるく結合しているので、ドパミンが増加すると受容体から自然に離れていき、過剰な遮断を引き起こさないためではないかといった「緩い結合仮説」が考えられています。

65〜70%

脳内において、ドーパミン受容体の遮断率が65%になったとき(わかりやすくいうと、100個の受容体のうち65個の信号が抑えられたとき)に抗精神病作用、つまり治療効果が得られます。

それ以下では抗精神病作用が得られません。

しかしドーパミン受容体の遮断率を上げすぎてしまうと、今度は困った副作用が出てしまいます。

具体的にはドーパミン受容体遮断率が72%以上になるとプロラクチン値が上昇し、78%で錐体外路症状が出現するといわれている。

このように、精神症状に効果を示し、かつ副作用を発現させないという条件を満たす領域は65〜70%程度と非常に狭いので、その範囲におさまるよう微妙な調整をはかる必要があるのですが、定型抗精神病薬ではその調整が難しいのです。

脳内には、「中脳辺縁系」「中脳皮質系」「黒質線条体系」「漏斗下垂体系」という4つのドーパミン経路があります。

副作用を避けるためには、4つの経路すべてにおいて、ドーパミンを過剰に遮断するようなことは避けなければなりません。

しかしどのような薬であっても、薬というのは「この経路だけに選択的に作用する」という器用なことはできないため、定型抗精神病薬の作用は、ドーパミンの過剰が起きている中脳辺縁系だけでなく、他の3つの経路にも及びます。

そのために、次のような困った副作用を惹起させてしまうことがあるのです。

中脳皮質系:理由は解明されていないのですが、統合失調症を発症した人のこの経路では、ドーパミンの減少が起きており、
そのために陰性症状と認知障害が生じているといわれています。しかし定型抗精神病薬がこの経路においてもドーパミン受容体を遮断してしまうために、陰性症状と認知障害をさらに悪化させることがあるのです。

黒質線条体系:この経路のドーパミンの量は統合失調症を発症しても変化していないといわれています。しかし定型抗精神病薬がドーパミン受容体を遮断してしまうために、錐体外路症状を出現させることがあるのです。

漏斗下垂体系:この経路のドーパミンの量も変化していないといわれています。しかし定型抗精神病薬がドーパミン受容体を遮断してしまうために、高プロラクチン血症や性機能障害を出現させることがあるのです。

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