更新日:2017年1月29日.全記事数:3,136件.

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プロトピック軟膏で皮膚がんになる?


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プロトピック軟膏と紫外線

プロトピック軟膏の警告欄に、「マウス塗布がん原性試験において、高い血中濃度の持続に基づくリンパ腫の増加が認められている。また、本剤使用例において関連性は明らかではないが、リンパ腫、皮膚がんの発現が報告されている。本剤の使用にあたっては、これらの情報を患者に対して説明し、理解したことを確認した上で使用すること。」とあります。

そのため、「本剤使用時は日光への曝露を最小限にとどめること。また、日焼けランプ/紫外線ランプの使用を避けること。」となっており、顔に塗ることが多い薬ですが、紫外線はなるべく避けなければいけません。

しかし、マウスによる塗布試験をそのままヒトにあてはめることはできません。
マウスによる塗布試験は2年間行われ、これはヒトのほぼ一生に相当する期間です。
マウスはヒトよりも皮膚が薄いため薬物の吸収率が高いです。
マウスの悪性リンパ腫の自然発症率は20%前後と、もともと高いです。

日本皮膚科学会の見解では、皮膚癌の発生頻度は自然に起こる確率と比べて差はないという見解です。

プロトピック軟膏で皮膚がんになる?

日本でも販売されているアステラス製薬の「プロトピック」(一般名・タクロリムス水和物)など2種類のアトピー性皮膚炎治療薬を使った米国の子どもが、2004年1月~09年1月の5年間に計46人、白血病や皮膚がんなどを発症し、このうち4人が死亡したと米食品医薬品局(FDA)に報告されていることが21日分かった。米でアトピー薬使用後にがん 5年間で子ども46人 – 47NEWS(よんななニュース)

プロトピック軟膏を処方する際の最大の障壁は、何といっても皮膚がんやリンパ腫についての説明義務であり、とくに小児科医にとって重大なネックとなっています。
小児かいと皮膚科医が協力して説明義務の項の撤廃を厚生労働省へ働きかける動きもみられるなか、小児を含む293295人のAD患者の大規模調査や、5000人へのアンケート送信の調査などによって、リンパ腫や皮膚がん発生のリスク増加は認められないことが2007年に報告され、その内容は最新の日本皮膚科学会ガイドラインでも取り上げられています。

また、紫外線については添付文書で、軟膏外用中は曝露を最小限にとどめるよう指示されていますが、日常浴びる程度の紫外線については、刺激感のぶり返しさえ気にならなければ問題となるものではありません。
癌についての説明もそうですが、「軟膏を塗って紫外線を浴びると皮膚がんができますよ」というような過剰な指導が薬局から行われると、それによって患者さんのコンプライアンスは低下してしまい、小児科医のせっかくの努力が水泡に帰する可能性もあることを十分に理解する必要がある。

プロトピック軟膏Q&A

Q.プロトピック軟膏使用時はどの程度日光を避ければ良いですか。紫外線対策はどうしたら良いですか。

A.日常生活での外出は問題ありませんが、強い紫外線(海水浴、スキーなど)に塗布部位を長時間さらさないよう患者さんにご説明をお願いします。
やむを得ず長時間強い紫外線のもとで過ごす場合には、帽子をかぶったり日光を遮る服装をするなどの紫外線対策をするか、外出前の外用は控え、帰宅してから使用するようご説明をお願いします。
日焼け止めを使用される場合は担当医師に相談の上、使用するようご説明をお願いします。

Q.プロトピック軟膏の「重要な基本的注意」の「日光への曝露を最小限にとどめること」「日焼けランプ/紫外線ランプの使用を避けること」の記載理由を教えてください。

A.紫外線を照射すると皮膚がんになる特殊なマウスに、紫外線照射と並行してプロトピック軟膏を塗ると皮膚がんの発生時期が早まることが報告されているためです。
しかし、ヒトではプロトピック軟膏の使用と皮膚がん発症の関連性は明らかではありません。

マウスの皮膚は薄い

プロトピック軟膏はマウス塗布癌原性試験において、高い血中濃度の持続に伴うリンパ腫の増加が認められています。
マウス塗布癌原性試験とは0.03%および0.1%プロトピック軟膏100μLをマウス体表の約40%に1日1回、2年間塗布し、発がん性を評価する試験です。

この試験におけるリンパ腫の発生率は0.03%製剤群では25%、0.1%製剤群では71%であり、0.1%製剤群は高い血中濃度の持続がみられています。
一方、アトピー性皮膚炎患者に0.1%製剤を塗布した場合の血中濃度曲線下面積(AUC)は、マウスでリンパ腫発生の増加を示した群の約30分の1であり、この一因として、マウスの皮膚はヒトより薄く、経皮吸収が100~200倍であり、血中濃度が上昇しやすいことが考えられます。

マウスのリンパ腫の自然発生率は約20%と高く、ヒトではプロトピック軟膏を適正に使用した場合、高い血中濃度が持続する可能性は低いことから、リンパ腫発現の危険性も低いと考えられます。

プロトピックは皮膚から吸収されない?

一般に皮膚からの薬物吸収は分子量500以上では難しいと考えられています。
タクロリムス(プロトピック)の分子量は822.03で、健常皮膚からはほとんど吸収されないことが推測されます。

そのため、ヒトにおいて高い血中濃度が長期に続く可能性は極めて低いことが指摘されています。
一般にヒトの経皮からの薬物の吸収は分子量が500Daltonを超えると難しいと考えられています。
実際にアレルゲンと考えられている物質の分子量も500以下です。

また、TTS製剤に使用されている薬物もニトログリセリンは227、ニコチンは162、フェンタニルは336といずれも500以下となっています。
また、タクロリムスは分子量が822と500を超えていますが、アトピー性皮膚炎に使用されています。

これはアトピー性皮膚炎患者の皮膚のバリアー能が低下しているためです。
そのため、症状が改善するとともに、吸収率は低下します。
シクロスポリンが皮膚外用剤として製品化されないのは分子量が1202と大きすぎるからです。

プロトピックで皮膚がんの発生率は高まらない

プロトピック軟膏は2008年1月現在、世界60カ国以上で発売されており、少なくとも540万人が使用しているといわれています。
米国において、本剤との因果関係が否定できないリンパ腫および皮膚がんの発生はそれぞれ3例報告されていますが、リンパ腫および皮膚がんの自然発生率はそれぞれ0.02%および0.53%であり、本剤によるリンパ腫および皮膚がんの発生率は自然発生率を超えるものではありません。

日本においてもリンパ腫、皮膚がんの発現が報告されていますが、本剤との関連性は明らかではありません。
以上のことから、プロトピック軟膏を適正に使用した場合、リンパ腫および皮膚がんが発生する危険性は低いと考えられます。

わが国でもアトピー性皮膚炎患者の調査などにおいて安全性が示されており、日本皮膚科学会ガイドラインに記述されているので指導の参考となります。
これらのことをよく理解し、患者さんい不安や混乱を与えないようにすることが大切です。

服薬指導では、皮膚がん発生の危険因子はおもに紫外線と考えられるため、外出時は帽子などの紫外線対策を忘れず、長時間の日中の外出は避けるように指導することも必要です。

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