2015年10月28日更新.記事数:3,207件.4,879,175文字.

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排尿障害の原因は動脈硬化?

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排尿障害の原因は膀胱の虚血?

最近では、慢性の膀胱虚血も蓄尿症状を発症させる機序の1つとして注目されています。

英国の解剖学者がBOOを伴うOAB患者の膀胱生検により採取した膀胱組織を観察したところ、コリン作動性神経の有意な減少が認められたと報告しています。

除神経を起こす原因として、神経にダメージを与える低酸素や虚血が考えられます。

実際にBOOが存在すると、膀胱壁の肥厚や組織圧の上昇から膀胱壁内の血管を圧迫し、膀胱血液量が減少することが閉塞膀胱の動物モデルでも証明されています。

また、BOOを有するBPH患者の膀胱では、非閉塞の患者よりも低酸素ストレスで活性化される低酸素誘導因子HIF-1α(虚血マーカー)の陽性細胞が多く認められており、閉塞膀胱では膀胱に慢性の虚血が起こっていることがわかってきました。

頻尿の原因は動脈硬化?

LUTS(下部尿路症状)発症には、動脈硬化症が関与している可能性があります。

2006年にLUTSと動脈硬化のリスクファクター(高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙)との関係を調べる疫学調査が行われ、男女ともに動脈硬化のリスクファクターが2つ以上ある場合はIPSSの合計点が有意に高くなることが示されました。

また、我々の研究で男性の頸動脈の内膜から中膜までの厚さを超音波画像から計測し、動脈硬化の進行度と蓄尿症状との関係を検討したところ、動脈硬化重症群ほど蓄尿症状が重症化していました。

動脈硬化症はもともと血管の閉塞性疾患であり、膀胱で起こった場合には膀胱血流量が減少し、膀胱虚血に至る可能性は十分に考えられます。

そこで膀胱動脈硬化ラットを作製し膀胱の血流量を測定したところ、動脈硬化ラットの膀胱血流量はコントロールラットに比べて有意に減少しており、さらに覚醒下にて膀胱内圧測定を行ったところ、膀胱動脈硬化ラットで排尿反射の明らかな促進が認められました。

排尿反射の促進が起こる機序については次のような仮説が提案されています。

虚血膀胱では排尿サイクルに従い虚血と再灌流が繰り返されるため、フリーラジカルが産生されやすく、酸化ストレスが膀胱壁内に生じていると推測されます。

酸化ストレスが発生すると除神経が起こり、その防御反応として膀胱壁内にNGFが産生されます。

NGFは求心性C線維の興奮性を高めるので、尿路上皮より放出されるACh、ATP、PGなどはC線維を介して排尿反射を誘発し、尿意切迫感に続いて排尿筋不随意収縮が起こるという仮説が立てられます。

一方、排尿症状が起こるメカニズムとして、長期間酸化ストレスや閉塞に伴う虚血に曝露されると、コリン作動性神経の除神経が進行するとともに、排尿筋自体もダメージを受けます。

その結果、排尿筋の収縮力が低下して排尿症状が起こるのではないかと考えられます。

このように排尿症状も蓄尿症状も、原因は膀胱の慢性虚血による酸化ストレスであり、その影響が軽ければ排尿筋過活動から蓄尿症状が、重ければ排尿筋低活動(膀胱収縮力低下)から排尿症状が生じるのではないかと考えられます。

α1遮断薬は蓄尿症状も改善する?

α1遮断薬は、膀胱虚血を改善する。

BPHの治療薬として用いられるα1遮断薬は、前立腺平滑筋のα1受容体をブロックして前立腺平滑筋の緊張をとり、尿道抵抗を下げることによって閉塞を緩和すると考えられています。

しかし、BPH/LUTS患者を対象とした臨床試験においてα1遮断薬であるタムスロシンは膀胱と前立腺の血流量を増加させることが報告されており、α1遮断薬の閉塞緩和以外の作用として、膀胱虚血を改善することにより下部尿路症状、特に蓄尿症状を改善する可能性も示唆されています。

α1受容体のサブタイプはいくつ?

BPH/LUTSの薬物治療ではまずはα1遮断薬が使用されますが、最近では5α還元酵素阻害薬や抗コリン薬も使われるようになってきました。

α1遮断薬に関しては、薬剤によってα1受容体の3つのサブタイプα1A、α1B、α1Dへの選択性も異なることから、どのサブタイプが排尿機能に関与するかの議論が盛んに行われてきました。

最初にBPH治療薬として登場したタムスロシンは比較的α1Aに選択性が高く、降圧薬として用いられていたα1遮断薬はα1Bへの親和性も高かったことから、「BOOに作用するのはα1A、血圧に作用するのはα1B」と、疾患による差別化が図られました。

次に登場したナフトピジルは、比較的α1Dに対する選択性が高く、蓄尿症状の改善効果が認められたことから、「排尿症状に関与するのはα1A、蓄尿症状に関与するのはα1D」という考え方が生まれました。

しかしその後、α1Aへの選択性が非常に高いシロドシンが登場することにより、その考えは覆されます。

シロドシンは開発当初、α1Aの選択性の高さから排尿症状、BOOは改善しても、蓄尿症状の改善はあまり期待できないと考えられていました。

ところが、第Ⅲ相臨床試験の結果では排尿症状だけでなく蓄尿症状にもプラセボに対して有意な改善効果を示し、しかも効果発現まで投与後わずか3、4日と速効性も認められました。

このようにシロドシンは蓄尿症状も著明に改善することから、α1AはOABの発症にも関与するのではないかと考えられています。

シロドシンには膀胱の血流障害を改善する効果が認められています。

また、動物実験で尿道内にPGE2を灌流させると排尿反射の亢進がみられますが、シロドシンを投与すると、PGE2による排尿反射亢進が抑制されました。

これらのことから、α1A遮断薬は膀胱の血流を改善することにより、あるいは尿道における尿道-膀胱促進反射を抑制することにより、蓄尿症状を改善するのではないかと考えられています。

一方、ナフトピジルは、排尿反射に促進的に働くセロトニンに対し拮抗作用を示すことが報告され、α1Dを介さずに蓄尿症状を改善するメカニズムが少しずつ明らかになっています。

今後、α1Dが本当に蓄尿症状に関与しているのかをもう一度考え直す必要が出てくるかもしれません。

参考書籍:KISSEI KUR Vol.5 No.2 2012

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コメント

  1. 初めまして、膀胱頸部硬化病は何の薬が効きますか=αブロッカーですか=管理人様、お願い申し上げます。

    足型研究員:2014/10/22

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