2024年4月19日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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皮膚から薬が吸収されるのはなぜ?

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皮膚から薬が吸収される経路

薬剤が経皮吸収される経路は、角層を透過する経路と毛穴や汗腺などの付属器官を透過する経路に大きく二分されます。

一般的に、付属器官からの浸透は速やかで透過しやすいとされていますが、付属器官の面積が皮膚全体の約0.1%ときわめて少ないため、薬剤は主に角層を介した経路で吸収されます。

角層を透過する経路にも2種類考えられます。

すなわち、細胞内を透過する経路と細胞間を透過する経路ですが、現在では、主に細胞間経路を透過していると考えられています。

分子量と脂溶性

角層を透過できる薬剤には、一定の条件が求められています。

それは、分子量が500以下で脂溶性が適度に高いことです。

分子量が大きくなると、拡散性が低下し吸収性が落ちます。

また、角層は脂溶性が高い(脂っぽい)ため、脂溶性の高い薬の方が基剤から角層への移行がスムーズになります。

しかし一方で、真皮は脂溶性が低いため、脂溶性が高すぎると真皮に透過しにくくなり、毛細血管への移行がスムーズに行われません。

そこで、油水分配係数が1~4の薬剤が経皮吸収に適し、1~2が最も適しているといわれています。

実際、現在使用されている全身作用型外用剤の主剤の特性をみると、ツロブテロール(ホクナリンテープ)の分子量は227.7、油水分配係数は3.08、ニトログリセリン(ミリステープ、ニトロダームTTS)は同227.1、同1.62、エストラジオール(ディビゲル、エストラダーム、フェミエスト)は同272.4、同4.01となっています。

貼る点滴

表皮を通過しにくい薬剤、つまり角層のバリア機能によって効果発現に必要な量が吸収されない場合には、経皮吸収を促進させる技術を用います。

その技術には、化学的促進法と物理的促進法の2つがあります。

化学的促進法は外部からの力を使用せず、濃度勾配によって皮膚透過性を促進する方法です。

これらのうち、リモネンやメントール(テルペン類)は、経皮吸収促進剤として最もよく知られた物質で、これらは角層の構造を変化させることで透過性を促進させますが、特に細胞間脂質に影響を与えることが、近年明らかになっています。

また、イオン型化合物より分子型化合物の方が膜の透過性にすぐれていることが知られていますが、近年、イオン型を擬似的に分子型にすることで、透過性を向上させる試みが行われています。

さらに最近、盛んに研究されているのが活量のコントロールです。

活量とは基剤中における主剤の活動度のことで、活量が高いほど皮膚移行性が高いと考えられ、そのコントロール技術は次世代の経皮吸収促進法に応用できると期待されています。

一方、物理的促進法は電気や超音波といった外部からの力を利用する方法です。

このうち、現在最も期待されているのがマイクロニードル法で、角層のみを通過する超短針(10~20μm)で薬剤を真皮に直接送り込む方法です。

他の方法と比べると侵襲的ですが、神経まで針が到達しないので痛みは感じません。

また、定量的に薬剤を送り込めるイオントフォレシスと組み合わせると、「貼る点滴」が可能になると期待されています。

プロドラッグとアンテドラッグの違いは?

アンテドラッグとは、皮膚表面の患部で優れた作用を発揮した後、体内に吸収されると作用の弱い物質に分解されるという特徴を持った成分の総称です。

したがって、全身性の作用(副作用)が極めて少なく、有効性と安全性の両方が期待できます。

アンテドラッグの例
パンデル(酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン)
リドメックス(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)
マイザー(ジフルプレドナート)

飲み薬では副作用軽減のための「プロドラッグ」のほうがよく聞く。

皮膚で作用してほしい外用薬は「アンテドラッグ」のほうが都合がいい。

皮膚

・皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層で構成される。
・表皮と真皮は基底膜によって隔てられており、皮下組織は主に脂肪組織からなる。
・表皮に存在する細胞のほとんどが角化細胞(ケラチノサイト)であり、真皮には血管や神経、膠原繊維などの支持組織の他、汗腺(エクリン腺とアポクリン腺)などが存在する。
・皮膚には水分の喪失を防ぐ働きや発汗による体温調節、紫外線などの外的刺激から生体を守る働きなどがある。
・表皮は主に角化細胞(ケラチノサイト)で構成され、その他にはメラニン細胞(メラノサイト)、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞などがある。

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3 件のコメント

  • tetora のコメント
         

    メントールの経皮吸収で検索している途中でブログを拝見させてもらいました。
    美容室で「塗り薬などのメントールは脂肪に蓄積される」と言われたのですが事実なのでしょうか。
    細胞間を通過して毛細血管までたどり着けば問題ないように思うのですが、医学的な知識がないのでよくわかりません。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    脂溶性が高い=脂肪に蓄積される、ってことでしょうか。

    なるほど確かに。

    吸収されやすいわけだから。

    でも、体の中の脂肪も排泄されます。
    ウンコとともに。

    お腹まわりの脂肪を見てると、ずーっとそこにとどまっているような気がしますが。

    皮膚も新陳代謝されているわけで。

    最悪、メントール入りの脂肪を長期間お腹周りに抱えていたとしても、良い香りの人として好まれそうな気もします。

  • tetora のコメント
         

    回答ありがとうございます。
    脂肪も代謝していて、最悪、蓄積されたとしても害はないということですね^^
    確かにお腹周りの脂肪はずっと留まっているように感じます(笑)

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2023年09月14日発売

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