更新日:2017年1月31日.全記事数:3,124件.

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血管性認知症とアルツハイマーの違いは?


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血管性認知症とアルツハイマーの違い

血管性認知症とは、広義には脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破れる脳出血などの脳の血管障害によって、脳に壊死部分が生じることで起こる認知症を意味する。

実際、かつて認知症は、変性疾患であるアルツハイマー病(AD)と、脳血管障害による血管性認知症(VaD)に大別され、片麻痺や言語障害などの神経症状を有していたり、CTなどの画像診断によって脳梗塞が発見されれば、症状がみられていなくても(無症候性の)血管性認知症と診断するなど、血管性認知症が過剰に診断される傾向にあった。

また、わが国の脳卒中死亡率が高かったことから、脳卒中を基盤とする血管性認知症の有病率がアルツハイマー病よりも高いと漠然と信じられていたために、血管性認知症が過大に診断されることに疑問が呈されなかった。

しかし、その後の研究によって、アルツハイマー病と診断された患者の病理所見には、アルツハイマー病の病理所見のみならず、脳血管病変(CVD)をあわせてもつ症例が認められる報告が相次ぎ、アルツハイマー病と血管性認知症の両方の特徴をあわせもつ「混合型認知症」という診断基準が盛り込まれ、現在アルツハイマー病と血管性認知症の関係は「アルツハイマー病(AD)」、「脳血管症状をもつアルツハイマー病(AD+CVD)」、「血管性認知症(VaD)」という概念が広く受け入れられるようになっており、脳血管障害をもつ認知症のすべてが血管性認知症というわけではないと考えられている。

従来、脳には粗大な病変がなく、高度の脳動脈硬化があり、それによる脳循環障害のために起こると考えられる認知症を動脈硬化性認知症とよんでいたが、現在では、脳の器質性病変なくして脳動脈硬化のみで認知症は起こらないと考えられているため、血管性認知症は脳の器質性病変(特に脳梗塞)に伴う認知症を指すようになっている。

血管性認知症は、①比較的太い脳血管の閉塞によって起こった、脳に大きな病変を有する梗塞巣を示す場合、②太い血管から分かれる分岐血管(branch)の閉塞による病変を有する場合、③Binswanger病あるいはBinswanger型脳血管性認知症とよばれる、小梗塞(ラクナ)が大脳半球の白質に無数に出現し、白質のびまん性の脱髄を示す場合、など、さまざまな病変で起こりうるが、一般には、多発性梗塞認知症と従来よばれていた多発性のラクナ梗塞巣をもつ③を指して血管性認知症と呼ぶことが多い。

「アルツハイマー病」
神経症状の有無:初期には少ない
年齢:75歳以上に多い
性別:女性に多い
経過:ゆっくり進行性に進む、症状の動揺は少ない
認知症の性質:全体的な能力の低下
病識の有無:ほとんどない
特徴的な傾向:徘徊や多動など落ち着きがない
人格の変化:変わることが多い
生活習慣病などの持病との関係:生活習慣病などの持病との関係は少ない

「血管性認知症」
神経症状の有無:手足の麻痺や痺れを訴えることが多い
年齢:60歳代からが多い
性別:男性に多い
経過:一進一退を繰り返しながら段階的に進む、症状に動揺性がみられる
認知症の性質:部分的な能力の低下(まだら認知症)
病識の有無:初期にはある
特徴的な傾向:感情失禁や易刺激性など、精神不安定なることが多い
人格の変化:ある程度保たれる
生活習慣病などの持病との関係:高血圧や糖尿病などの生活習慣病などの持病を持つことが多い

症状の出現の特徴は、アルツハイマー病の出現は75歳以上で女性に多いのに対し、血管性認知症の出現は65歳以上で男性に多い。
またアルツハイマー病の経過は、症状が進行性に増悪するのに対し、血管性認知症では、主な症状が階段状に増悪することが多いという特徴がある。
その理由は、変性疾患であるアルツハイマー病が脳の神経細胞の変性が連続的に徐々に進行するのに対して、血管性認知症は、ある大きさの梗塞巣の数が増加しながら進行するために、新しい梗塞ができて、ある容積の脳実質が急速に失われるたびに症状が増悪するという理由によるものである。

またアルツハイマー病では症状の動揺を示すことが少ない一方で、血管性認知症では、脳循環状態の変動に伴い、症状が一過性に改善したり増悪したりするといったように、症状に動揺性がみられることが多いことが特徴である。

そして、血管性認知症はアルツハイマー病と比べると、脳の知的機能障害の程度が不均一であり、加えて知能機能の低下の割りに人格や感情が比較的保たれているため「まだら認知症状」であることが特徴的である。

病識はアルツハイマー病では発見されたときにはすでになくなっていることが多いのに対して、血管性認知症では初期にはあることが多い。
またアルツハイマー病では、徘徊や多動、失見当識、無関心などがみられるのに対し、血管性認知症では感情失禁や易刺激性などが特徴的に認められる。
人格の変化はアルツハイマー病では多くみられるのに対し、血管性認知症では比較的保たれる。

その他、従来は脳血管障害の既往や、高血圧や糖尿病や心疾患といった脳血管障害の危険因子をもっていることが多いことが特徴といわれてきたが、最近ではこれらの因子をもっているというだけでは血管性認知症の特徴とはいえないと考えられている。

脳血管障害とアルツハイマーの混合型

MRIやX線CTで多発性のラクナ(小脳梗塞巣)の所見がある場合、多発性脳梗塞後遺症として診断する傾向があるために、ラクナなどの脳血管障害を発見した場合、ADと診断されないことがある。

実際は、脳血管障害を伴うAD(AD with CVD)はAD患者の約半数を越えるという報告がある。

AD with CVDの治療に関しては、基本的には、抗認知症薬を用いて治療を行い、シロスタゾール(プレタール)などの抗血小板剤の併用投与を行う。

また、海外では、AD with CVDに対してガランタミンが有用であるとの報告がある。

血管性認知症の主な症状

血管性認知症の主な症状は、大きく2つに分けられる。

一つは、日常生活に支障を来すような記憶障害と、言葉や動作、認知、計画立ててものごとを行う能力などが障害される認知機能障害などである。

これらはアルツハイマー病などの他の認知症を来す疾患と大きな違いはない。

もう一つは、障害を受けた脳血管の支配領域の神経症状を呈することである。

たとえば、中大脳動脈領域の梗塞の場合には、失語症や視空間失認の要素が著しく、またその一部の各回が障害されると流暢性の失語、失読、失書、失計算、左右失認指失認、構成失行などの典型的な症状を呈する。

後大脳動脈の領域の梗塞の場合には、相貌失認、皮質盲、視覚物体失認などの症状を呈する。

前大脳動脈の領域の梗塞の場合には、寡黙状態や超皮質性運動失語などが生ずる。

帯状回、視床に病変を有する場合には意欲低下が特に強く、海馬の病変を有する場合には記憶障害が高度である。

このように歩行障害や手足の麻痺、呂律不良、パーキンソン症状、転倒しやすい、頻尿、尿失禁などの排尿障害、抑うつ、感情失禁、夜間せん妄などの症状が早期からみられることもしばしば認められる。

参考書籍:調剤と情報2012.2

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