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脂質異常症の勉強まとめ
公開. 更新. 投稿者:脂質異常症. 閲覧数:1124回
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分類 | 商品名 | 一般名 |
---|---|---|
スタチン系 | メバロチン | プラバスタチンナトリウム |
スタチン系 | リポバス | シンバスタチン |
スタチン系 | ローコール | フルバスタチンナトリウム |
スタチン系 | リピトール | アトルバスタチンカルシウム水和物 |
スタチン系 | リバロ | ピタバスタチンカルシウム水和物 |
スタチン系 | クレストール | ロスバスタチンカルシウム |
PCSK9阻害薬 | レバーサ | エボロクマブ |
PCSK9阻害薬 | プラルエント | アリロクマブ |
MTP阻害薬 | ジャクスタピッド | ロミタピドメシル酸塩 |
レジン(陰イオン交換樹脂) | クエストラン | コレスチラミン |
レジン(陰イオン交換樹脂) | コレバイン | コレスチミド |
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 | ゼチーア | エゼチミブ |
プロブコール | シンレスタール/ロレルコ | プロブコール |
フィブラート系 | リポクリン | クリノフィブラート |
フィブラート系 | ビノグラック | クロフィブラート |
フィブラート系 | ベザトールSR/ベザリップ | ベザフィブラート |
フィブラート系 | リピディル/トライコア | フェノフィブラート |
ニコチン酸系薬 | ペリシット | ニセリトロール |
ニコチン酸系薬 | ユベラN | トコフェロールニコチン酸エステル |
ニコチン酸系薬 | コレキサミン | ニコモール |
多価不飽和脂肪酸 | ロトリガ | EPA+DHA |
多価不飽和脂肪酸 | エパデール | イコサペント酸エチル(EPA) |
その他 | エラスチーム | エラスターゼES |
その他 | MDSコーワ | デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ18 |
その他 | ハイゼット | ガンマオリザノール |
脂質異常症
脂質異常症は、血液中の脂質(血清脂質)、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)が、正常範囲を超えて増加していたり、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低下している状態をいいます。
この状態が長く続くと、血管にコレステロールがたまり、動脈が狭く、もろくなり動脈硬化症に陥ってしまいます。
従来は高脂血症と呼ばれていましたが、LDLコレステロールは低く、HDLコレステロールは高いほうが望ましいのに、HDLコレステロールが低い状態を「高脂血症」に含めると紛らわしくなるため、脂質異常症と呼ばれるようになりました。
コレステロールや中性脂肪は身体になくてはならない栄養素で、細胞膜やホルモン、胆汁酸などの材料になったり、エネルギーの貯蔵庫になるなど身体機能を保つために大切な役割を果たしています。
脂質は水に不溶性であるため、血液中では表面に蛋白質(アポ蛋白)が存在するリポ蛋白という状態で運搬されます。
このリポ蛋白の代謝障害が起こることにより、高LDLコレステロール(LDL-C)血症や高トリグリセライド(TG)血症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症などが発症します。脂質異常症は、動脈硬化の主要な危険因子であり、動脈硬化性疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)の発症予防・進展抑制のためには、血清脂質を管理することが必要です。
LDLコレステロールは体内にコレステロールを運び、血管壁にコレステロールを蓄積させて動脈硬化を引き起こし、反対にHDLコレステロールは体内や血管にたまった余分なコレステロールを肝臓に戻し、動脈硬化を抑える働きがあります。そこでLDLコレステロールは悪玉とよばれ、HDLコレステロールは善玉とよばれています。
脂質に異常が生じるだけでは、ほとんど自覚症状がないため、放っておくことが少なくありません。すると、脂質が血管壁にたまって、血管を狭め、動脈が硬く、もろくなっていき、やがて心筋梗塞や、狭心症、脳卒中などを引き起こします。したがって、血液中の脂質の量を適正な値に調節することが動脈硬化の予防に重要です。
脂質異常症の原因としては遺伝子の異常などもありますが、多くは食べ過ぎや、脂肪分の多い食事、それに伴う肥満、そして運動不足などの生活習慣に影響されると考えられています。
また、遺伝子の異常とは別に、家族に脂質異常症の人がいるなど、脂質異常症になりやすい体質のひともいます。
一方、二次性脂質異常症といって、他の病気や薬が原因となり起こるものもあります。この場合は原因となっている病気を治療したり、可能なら薬を変更したり中止することで改善することができます。
リポ蛋白
リポ蛋白は、比重の低いものから順にカイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLの5種類に分類されます。
【比重低い、大きさ大】←カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL→【比重高い、大きさ小】
【カイロミクロン】
・小腸で合成され、食事由来の脂質を運搬するリポ蛋白である
・TGを末梢組織に、コレステロールを肝臓に運搬する
【VLDL(超低比重リポ蛋白)】
・肝臓で合成されるリポ蛋白である
・TGとコレステロールを肝臓から末梢組織に運搬し、その過程でIDLを経て、LDLに代謝される
【IDL(中間比重リポ蛋白)】
・VLDLやカイロミクロンが代謝される過程で生じるリポ蛋白である
【LDL(低比重リポ蛋白)】
・VLDLに由来するリポ蛋白である
・コレステロールを末梢組織に運搬する
【HDL(高比重リポ蛋白)】
・主に肝臓で合成されるリポ蛋白である
・コレステロールを末梢組織から肝臓に運搬する
脂質異常症と動脈硬化
動脈硬化は、病理学的に粥状動脈硬化(アテローム硬化)、中膜硬化、細動脈硬化の3つに分類されます。
脂質異常症は、粥状動脈硬化の形成に大きく関わります。
高LDL-C血症では、酸化などにより変性したLDL由来のコレステロールが血管壁に蓄積し、粥状動脈硬化を発症・進展させます。
一方、HDLは血管壁に蓄積した過剰なコレステロールを取り出し、粥状動脈硬化を抑制するとされています。
粥状動脈硬化
粥状動脈硬化は、大動脈や脳動脈、冠動脈などの比較的太い動脈に起こるとされ、血管内皮細胞の傷害に始まり、血管内膜への異常な脂質の沈着により粥腫が形成されます。
粥状動脈硬化による血管内膜の肥厚は、プラークと呼ばれます。
① 様々な危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙など)により血管の内膜表面を覆う内皮細胞が傷害されると、内膜に血液中の単球やリポ蛋白が侵入する
② リポ蛋白(特にLDL)は活性酸素などの影響を受けて酸化LDLなどへと変性し、内膜において単球からマクロファージへの分化を促進する
③ マクロファージは変性したLDLを取り込んで泡沫細胞に変化し、さらに内膜での平滑筋細胞の増殖と遊走が引き起こされる。泡沫細胞や平滑筋細胞は集簇し
て粥腫を形成する
脂質に富むプラークは、線維性被膜がきわめて薄く、破裂しやすい不安定なプラークです。冠動脈における不安定プラークの破裂は、血栓形成による血管内腔の狭小化や閉塞を引き起こし、不安定狭心症や心筋梗塞などの急性冠症候群(ACS)の原因となります。
近年、脂質低下療法は、プラークのコレステロール蓄積を抑制するだけでなく、厚い線維性被膜を形成してプラークを安定化させ、プラークを破裂しにくくすることで、冠動脈疾患の発症を抑制することが示されている。
脂質異常症の診断基準
LDLコレステロール(LDL-C)、総コレステロール(TC)、non-HDLコレステロール(non-HDL-C)、トリグリセライド(TG)が高いほど、また、HDLコレステロール(HDL-C)が低いほど冠動脈疾患の発症率が高いことが疫学調査で示されています。
日本における冠動脈疾患の絶対リスク(発症率や死亡率)は、欧米に比べるときわめて低いとされていますが、最近の生活習慣の欧米化に伴い日本人のLDL-C、TCが上昇している事実などにより、脂質異常症の管理は重要です。
そこで、冠動脈疾患発症予防重視の観点から、脂質異常症の診断基準値が設定されています。
脂質異常症診断基準(空腹時採血) | ||
---|---|---|
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL | 境界域高non-HDLコレステロール血症 |
家族性高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症(FH)は、きわめて冠動脈疾患のリスクが高い疾患で、その大部分は常染色体優性遺伝性疾患です。
FH患者では、小児期から動脈硬化の進行を認めるため、早期診断と厳格な治療に加え、家族スクリーニングを実施することが若年死の予防につながります。
家族性高コレステロール血症の3主徴 ①高LDL-C血症 ②早発性冠動脈疾患 ③腱・皮膚黄色腫
FHの主な原因は、LDL代謝に関わるLDL受容体、PCSK9などの遺伝子変異である。それぞれの遺伝子変異において、対立遺伝子の片方に異常を持つものが「FHヘテロ接合体」、双方に異常を持つものが「FHホモ接合体」である。
FHヘテロ接合体は、200~500人に一人の割合で存在する頻度の高い疾患であり、日本では30万人以上の患者がいると推定されています。
FHヘテロ接合体では、未治療の男性で30~50歳、女性で50~70歳の間に冠動脈疾患を発症することが多いとされています。
FHを診断する際には、家族歴の注意深い聴取が必要であり、特に患者が若年の場合は黄色腫などの身体所見が乏しいことにも留意が必要です。
また、FHホモ接合体は、FHヘテロ接合体の重症例と区別が困難な場合もあり、その確定診断には遺伝子解析による診断が必要です。
成人ではLDL-Cが250mg/dL以上の場合、FHを強く疑います。
家族性高コレステロール血症の治療
・FHはきわめて冠動脈疾患のリスクが高いことから、一次予防でも二次予防に相当すると考え、100mg/dL未満とすることが望ましいとされている。
脂質管理目標値の達成が困難な場合、未治療時の50%未満を目指すことも可とされている
・二次予防ではさらに高リスクと考えられるため、70mg/dL未満を目標としたより厳格な脂質管理を考慮する
●FHヘテロ接合体におけるLDL-C管理目標値と治療方針
FHヘテロ接合体の治療は、スタチンを中心とした巌格な脂質管理を行うことが推奨され、生活習慣の改善と同時に薬物療法を開始します。
・薬物療法ではスタチンが第一選択薬となる。スタチンの初期用量で十分な効果が得られない場合、スタチンの最大耐用量までの増量およびエゼチミブの併用を行う
・それでも効果が不十分な場合には、PCSK9阻害薬、レジン、プロブコールなどを用いる
・冠動脈疾患の診断が確定しており、生活習慣の改善および厳格な薬物療法によってTCが250mg/dL以下とならない場合、LDLアフェレシス治療(体外循環装置を用いて血漿からLDLを直接除去する治療法)を考慮し専門医に相談する
●FHホモ接合体におけるLDL-C管理目標値と治療方針
Hホモ接合体の特徴は、TC 600mg/dL以上、小児期からみられる黄色腫と動脈硬化性疾患、両親がFHヘテロ接合体であることです。
FHホモ接合体は、約16万人に一人の割合で存在すると報告されています。
・FHホモ接合体では、冠動脈疾患の発症・進展のリスクが著しく高いため、若年期より強力なLDL-C低下治療を必要とする。一次予防では100mg/dL未満、二次予防では70mg/dL未満であるが、達成困難な例が多い
FHホモ接合体の治療は、LDLアフェレシス治療などを施行してLDL-Cを巌格にコントロールすることが推奨され、生活習慣の改善と同時に薬物療法を開始します。
・薬物療法ではスタチンが第一選択薬となり、速やかに最大耐用量まで増量する
・それでも効果が不十分な場合には、エゼチミブ、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン、プロブコールなどを用いる
・スタチン、PCSK9阻害薬、レジンは、いずれもその主要な作用機序がLDL受容体の発現(活性)増強であるため、LDL受容体活性が完全に欠損しているタイプではLDL-C低下効果を認めない
・既存の薬物療法ではLDL-Cを十分に低下させることは困難であり、1~2週間に1回のLDLアフェレシス治療が必要な場合が多い
・上記すべての治療に抵抗性もしくは不耐性を示す場合には、肝移植を考慮する
脂質異常症治療薬
この薬はコレステロールの腸管からの吸収を抑えたり、コレステロールの合成を抑えたり、排泄を促進することで、血液中のコレステロールや中性脂肪の量を下げる薬です。
脂質異常症の薬物療法に使われる薬には、大きく分けると「悪玉コレステロール値を下げる薬」と「中性脂肪値を下げる薬」があります。
・LDL-Cの管理では、第一選択薬としてスタチンを考慮する(スタチンによるLDL-C低下療法は、動脈硬化性疾患の発症抑制に有効とされている)
・スタチンとエゼチミブおよびPCSK9阻害薬との併用は、動脈硬化性疾患の発症抑制に有効とされている
・高TG血症あるいは低HDL-C血症を合併する脂質異常症患者において、スタチンとEPA製剤およびフィブラート系薬との併用は、動脈硬化性疾患の発症抑制に有効とされている
・空腹時TGが著明に上昇している症例(500mg/dL以上)では、急性膵炎のリスクも考慮し、脂質制限や禁酒などの食事指導とともにフィブラート系薬などの投与を考慮する
・低HDL-Cについては、LDL-C、non-HDL-C、TGの管理を行った上で、基本的には生活習慣の改善で対処する(HDL-Cのみが低い場合には、冠動脈疾患のリスクにはならないとする報告もある)
分 類 | LDL-C | TG | HDL-C | Non-HDL-C |
---|---|---|---|---|
スタチン | ↓↓~↓↓↓ | ↓ | -~↑ | ↓↓~↓↓↓ |
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 | ↓↓ | ↓ | ↑ | ↓↓ |
陰イオン交換樹脂 | ↓↓ | ↑ | ↑ | ↓↓ |
プロブコール | ↓ | - | ↓↓ | ↓ |
フィブラート系薬 | ↓ | ↓↓↓ | ↑↑ | ↓ |
多価不飽和脂肪酸 | - | ↓ | - | - |
ニコチン酸誘導体 | ↓ | ↓↓ | ↑ | ↓ |
PCSK9阻害薬 | ↓↓↓↓ | ↓~↓↓ | -~↑ | ↓↓↓↓ |
MTP阻害薬 | ↓↓↓ | ↓↓↓ | ↓ | ↓↓↓ |
スタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
スタチンはメバロン酸経路の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素の働きを阻害することで、肝臓でのコレステロール生合成を低下させる。
その結果、コレステロール恒常性維持のため肝臓でのLDL受容体発現が上昇し、血液から肝臓へのLDLコレステロールの取り込みが促進される。
コレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を拮抗的に阻害する。
その結果、肝細胞内コレステロールプールは減少し、細胞質に存在する転写因子(SREBP-2)の核内への移行が促される。
次いでSREBP-2はLDL受容体の合成亢進をもたらす。
その結果、血中からのLDLの取り込みの促進が起こるので、強力なコレステロール低下作用を示す。
最近は血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、血小板などに対する作用を介する抗動脈硬化作用も注目されている。
現在わが国ではプラバスタチン(メバロチン)、シンバスタチン(リポバス)、フルバスタチン(ローコール)、アトルバスタチン(リピトール)、ピタバスタチン(リバロ)とロスバスタチン(クレストール)がある。
リバロ、リピトール、クレストールのコレステロール低下作用はより強力である。
スタチンには冠動脈疾患(CAD)に対する一次予防効果と二次予防効果があることが多くの大規模臨床(予防)試験で明らかになっている。
また最近は脳卒中の一次予防・二次予防効果も示されつつある。
・催奇形性を疑う報告があるため、妊婦または妊娠の可能性がある女性、妊娠を希望する女性、授乳婦への投与は禁忌である
【副作用】
・肝障害、CK上昇や筋脱力などのミオパチー様症状、さらに血中および尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症が稀ながら報告されている
・横紋筋融解症などのリスクは、スタチン代謝(CYP3A4、CYP2C9など)に影響を有する薬剤やフィブラート系薬、ニコチン酸誘導体などの併用で増加する
陰イオン交換樹脂
腸管内で胆汁酸と結合して脂質の吸収阻害とともに小腸での胆汁酸の再吸収を抑制し、便中への排泄を促進し、コレステロールから胆汁酸への異化を促進する。
その結果、肝細胞内コレステロールプールが減少しLDL受容体の合成促進、LDLの血中から肝への取り込みの亢進が起こる。
コレスチラミン(クエストラン)、コレスチミド(コレバイン)がある。
クエストランは粉末であり、コレバインは服用錠数が多いため服薬コンプライアンスが悪い。
両剤とも高TG血症には適さない。
冠動脈疾患(CAD)に対する一次予防試験を先駆けて行い、コレステロール仮説を立証した薬剤である。
・腸管内で胆汁酸を吸着しその排泄を促進することで、胆汁酸の腸肝循環を阻害し、肝臓でのコレステロールから胆汁酸への異化を亢進する。その結果、肝臓のコレステロールプールの減少と、その代償作用として肝臓でのLDL受容体の発現(活性)増強による血中LDLの取り込み亢進が生じ、血中LDL-Cが低下する
・肝臓でのコレステロール生合成亢進を伴うことがあり、スタチンとの併用は合理的である
・副作用などの理由でスタチンに忍容性がない患者や、妊婦または妊娠の可能性がある女性において、薬物療法が必要な場合の第一選択薬となり得る
・吸着が指摘されている薬剤の併用時には、服用間隔をあけるなどの服薬指導が必要である
・脂溶性ビタミン(A、D、E、K)、葉酸の吸収阻害が起こる可能性があるため、長期服用の際にはこれらの補給を考慮する
【副作用】
・主な副作用は消化器症状(便秘、腹部膨満感など)である
プロブコール
・作用機序として、主にコレステロールの胆汁中への異化排泄促進が考えられている
・LDL-C低下作用だけでなく、HDL-C低下作用も示す
・黄色腫の縮小や消失などの作用を示す
・抗酸化物質であり、かつ脂溶性であるため、リポ蛋白中に取り込まれて強力な抗酸化作用を示す
【副作用】
・主な副作用は消化器症状や肝障害、発疹などである
・重大な副作用として心電図上のQT延長に伴う心室性不整脈の報告がある
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
ゼチーアは小腸粘膜細胞に存在するNPC1L1経路を阻害して、小腸における食事及び胆汁中のコレステロール吸収を選択的に阻害する。
2007年4月に承認された。
小腸壁で食事性及び胆汁性のコレステロールの吸収を選択的に阻害する。
小腸からのコレステロール吸収の約半分がコレステロールトランスポーターであるNPC1L1により吸収され、本剤はNPC1L1を特異的に阻害することによってLDL-Cを中心とする脂質異常を改善する。
レジンと異なり体内に吸収され、腸肝循環を経たのち約78%が糞便中に排泄される。
コレステロール吸収を選択的に阻害するため、ビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンの吸収には全く影響を与えない。
また、インスリン抵抗性改善効果や脂肪肝改善効果が期待される。
ゼチーアとスタチン製剤を併用することによって、LDL値を下げる効果が大きくなることや、心血管疾患の発症抑制効果があることが知られています。
・小腸粘膜に存在する小腸コレステロールトランスポーター(NPC1L1)を阻害して、小腸での食事および胆汁由来のコレステロール吸収を抑制することにより、血中コレステロール低下作用を示す
・コレステロール吸収を選択的に阻害するため、脂溶性ビタミンの吸収には影響を与えない
・肝臓でのコレステロール生合成が代償的に亢進するため、スタチンとの併用により、血中コレステロールが相補的に低下する
【副作用】
・主な副作用は消化器症状(便秘、下痢、腹痛など)である
・スタチン同様、CK上昇や筋脱力などのミオパチー様症状、横紋筋融解症が稀ながら報告されている
単独でも有効であるが、スタチンとの併用で相乗的なLDLが得られる。
スタチンと同様、CRP低下作用も報告されているが、大規模試験による心血管イベント減少が確認されていない。
今後の報告が期待される。
スタチンで十分なLDL-C低下が得られない場合の併用薬として有用。
フィブラート薬との併用薬としてはスタチンより安全性が高い。
フィブラート系薬
核内受容体であるperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR)αのリガンドとして作用し、同受容体を活性化する。
この作用機序でフィブラート系薬の多様な薬理作用をほぼ説明できる。
リポ蛋白リパーゼ(LPL)、肝性TGリパーゼ活性を高め、カイロミクロン、VLDL、IDLの異化を促進し、肝において脂肪酸の合成を抑制し、脂肪酸酸化亢進によりTGの合成を抑制する。
またアポ蛋白A-ⅠとA-Ⅱの合成を亢進させHDL-Cを上昇させる。
フィブラート系薬についてはCADに対する一次並びに二次予防試験が行われ、その有用性が部分的に証明されている。
なお、フェノフィブラートには尿酸排泄作用があり、高尿酸血症を伴う高TG血症に適している。
スタチンとの併用でも横紋筋融解症の増加はみられなかった。
・核内受容体であるPPARαに結合してPPARαを活性化することで、脂質代謝に関わる種々の蛋白質の発現を調節し、TG低下やHDL-C増加などの作用を示す
・高TG血症に対して最も効果的な薬剤である
【副作用】
・重大な副作用の一つに横紋筋融解症がある。横紋筋融解症は、腎障害患者への使用やスタチンとの併用で起こりやすいため注意が必要である
VLDLの異化促進、合成阻害により、主にトリグリセリド(TG)が低下する。
新しい薬剤では総コレステロールも低下する。
type Ⅲの脂質異常症がよい適応。Ⅱbにも用いられる。
ニコチン酸との併用もよい。
主としてトリグリセリド低下薬である。
Ⅲ型ないしⅣ型脂質異常症や糖尿病に伴うⅡb型脂質異常症に有用である。
HDLコレステロール上昇作用もある。
消化器症状を生ずることがある。
胆石の発症を助長する可能性がある。
横紋筋融解を生ずることがあり注意を要する(特にスタチン類との併用で)。
腎機能低下症例(血清Cr≧2.0mg/dL)では使用を控える。
ニコチン酸誘導体
・ホルモン感受性リパーゼの活性化を抑制することにより、末梢脂肪組織での脂肪分解を抑制し、遊離脂肪酸の肝臓への流入を減少させる結果、肝臓でのリポ蛋白合成を抑制する。また、HDLの構成成分であるアポ蛋白 A-ᶗの異化を抑制することにより、HDL-C上昇作用を示す
・高LDL-C血症、高TG血症などに用いられる
【副作用】
・掻痒感や末梢血管拡張による顔面潮紅などが現れることがある
・インスリン抵抗性を悪化させる可能性があり、糖尿病の患者さんでは注意して使用する
多価不飽和脂肪酸
この薬は直接末梢の血管を拡げたり、血小板が固まるのを抑え血栓ができるのを予防したり、血管を柔らかく保つことで、末梢の血液の流れをよくする薬です。
肝でのVLDL合成を抑制し、TGを低下させる。
高純度の魚油からなるわが国独自の薬剤としてイコサペント酸エチル(エパデール)があるが、わが国で大規模臨床(予防)試験が行われ、CADに対する予防効果が証明された。
脂質異常症治療効果と抗血小板作用によるものと考えられる。
・EPAとDHAは、肝臓でのVLDL合成を抑制し、TGを低下させる
・主にTGが上昇する脂質異常症に用いられる
・抗血小板作用や抗炎症作用による動脈硬化予防も期待されている
【副作用】
・下痢などの消化器症状のほか、出血傾向に注意が必要である
【ロトリガ】
魚油由来のEPAとDHAの複合製剤(ロトリガ)がわが国でも2011年より発売されている。
海外の大規模臨床試験では、CAD予防効果が示されている。
植物ステロール
この薬は間脳視床下部および大脳辺縁系に直接作用し、この機能失調によって起こるいらいら、動悸、頭痛、不安、うつ(不定愁訴)等の症状を改善する薬です。
EPL
この薬は細胞内の酵素の働きを保ち、脂質などの代謝をよくすることで、肝臓の働きを改善する薬です。
PCSK9阻害薬(ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体薬)
・LDL受容体の分解活性を有する蛋白質であるPCSK9に結合し、PCSK9のLDL受容体への結合を阻害することで、LDL受容体の分解を抑制する。その結果、肝臓でのLDL受容体の発現(活性)増強による血中LDLの取り込み亢進が生じ、血中LDL-Cが低下する
・FH、または心血管イベントの発症リスクが高く、スタチン治療下でも効果不十分な高コレステロール血症に、スタチンと併用して用いられる
・スタチンはPCSK9の合成を増やすため、PCSK9阻害薬との併用は合理的である
・LDL-C低下効果は既存の薬剤のなかで最も強力である
【副作用】
・主な副作用は注射部位反応である
MTP阻害薬
・肝細胞や小腸上皮細胞に多く発現するミクロソームトリグリセライド転送蛋白(MTP)に結合して、肝臓でのVLDLや小腸でのカイロミクロンの産生を抑制することにより、血中LDL-CやTGの低下作用を示す
・適応は「ホモ接合体FH」であり、他の薬物療法が効果を示さない場合でも、LDL-Cを低下させることが報告されている
【副作用】
・脂肪肝や下痢が認められるため、脂質やアルコール摂取量の管理が必要である
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