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前立腺肥大症の勉強まとめ

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分類分類商品名一般名
排尿障害治療薬α1遮断薬ハルナールタムスロシン塩酸塩
排尿障害治療薬α1遮断薬フリバスナフトピジル
排尿障害治療薬α1遮断薬ユリーフシロドシン
排尿障害治療薬α1遮断薬ミニプレスプラゾシン塩酸塩
排尿障害治療薬プロスタールクロルマジノン酢酸エステル
排尿障害治療薬パーセリンアリルエストレノール
排尿障害治療薬パラプロストL-グルタミン酸+L-アラニン+グリシン
排尿障害治療薬セルニルトンセルニチンポーレンエキス
排尿障害治療薬エビプロスタットオオウメガサソウエキス+ハコヤナギエキス+セイヨウオキナグサエキス+スギナエキス+精製小麦胚芽油
排尿障害治療薬PDE5阻害薬ザルティアタダラフィル
排尿障害治療薬5α還元酵素阻害薬アボルブデュタステリド

前立腺肥大症

前立腺肥大症は、中高齢男性にみられる進行性疾患で、様々な尿トラブルを引き起こし、患者のQOLを著しく低下させます。
前立腺肥大症による死亡率は高くありませんが、加齢に従って有病率が増加するため、高齢化が顕著な我が国ではとくに注目が集まっています。

前立腺肥大症は、前立腺の移行領域に腺腫が発生・増大し、それにより尿道が圧迫され、尿流出抵抗が増し排尿障害を発生する良性疾患である。
下部尿路の閉塞については、前立腺腫大そのものによる機械的閉塞と、腺腫内で増加したα1受容体にノルアドレナリンが結合し、前立腺平滑筋を収縮させる機能的閉塞がある。

α1受容体は前立腺以外にも、前立腺部尿道、膀胱頸部に存在し、前立腺肥大症では特に密に分泌している。
α1受容体にはA、B、Dのサブタイプがあり、前立腺に存在するタイプはα1A>α1D>α1Bの順となり、主にα1Aが存在する。
一方、血管に豊富に存在するのはα1Bなので、α1Aに親和性の高いα1遮断薬は血管への影響が少なく、低血圧によるめまいや立ちくらみの出現が少ないといわれている。

前立腺肥大症は、前立腺腫大(BPE)、下部尿路障害(LUTS)、下部尿路閉塞(BOO)の3つが構成要因であり、これらが混在して起こる症候群である。
LUTSは、畜尿症状(頻尿、尿意切迫感、尿失禁)と排尿症状(排尿開始の遅れ、排尿時にいきみを要する、尿流の細さ、尿線のとぎれ、尿の切れの悪さ)に大別される。

排尿症状は、肥大した前立腺が尿道を圧迫し尿道閉塞を起こすことによる。
畜尿症状は、尿道閉塞のために排尿しきれなかった尿により、膀胱機能が変化し二次的に生じるものである。
尿道の圧迫が続くと、尿を出そうとして膀胱に負担がかかり、膀胱排尿筋の機能異常や下部尿路閉塞による求心性の神経伝達亢進が起こり、その結果、過活動膀胱(OAB)になる。

前立腺

前立腺は、尿道を囲むように存在する男性特有の生殖器官です。
成人男性における正常な前立腺は20g前後のクルミ大の大きさで、辺縁領域、中心領域、移行領域の3つの腺構造領域と、腺構造を持たない前部線維筋性間質の4つの領域から構成されています。
前立腺の詳しい働きは明らかになっていませんが、精液の一部となる前立腺液の分泌、畜尿のための括約筋様の作用、射精などに関与していると考えられています。

前立腺は、膀胱の出口のところに尿道を取り巻くように存在していて、精液の一部である前立腺液を分泌し精子の活動を活発にしている。
また、前立腺内の平滑筋が収縮することで、尿を漏らさないようにコントロールしている。

前立腺は男性ホルモンにより刺激され、分化を繰り返し、成人では約15gで栗の実大の大きさになる。
その構造は内腺(中心領域と移行領域)と外腺(辺縁領域)に分かれ、肥大するのは通常、中心領域と移行領域であり、前立腺がんは辺縁領域から発生することが多いとされている。

畜尿と排尿のメカニズム

排尿に関する末梢神経は3種類に大別され、胸髄中枢から下腹神経(交感神経)が膀胱、尿道、前立腺に分布し、仙髄中枢から骨盤神経(副交感神経)が主に膀胱体部に分布している。
陰部神経(体性神経)は仙髄中枢から外尿道括約筋に分布している。

交感神経α1受容体は、尿道平滑筋や前立腺に密に分布し、畜尿期には交感神経末端から分泌されるノルアドレナリンによって活性化され、細胞内Caイオン濃度を上昇させて平滑筋を収縮させる。
β受容体は、膀胱平滑筋に密に分布し、畜尿期にはノルアドレナリンによって刺激されアデニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内ATPをcyclicAMPに変換させ、平滑筋を弛緩させる。
膀胱平滑筋組織中にはβ3受容体が強く発現している。

膀胱体部組織中にはムスカリン受容体が多く存在し、排尿期では副交感神経末端から分泌されるアセチルコリンによって活性化され、膀胱が収縮する。
膀胱に多く存在するのはM2とM3タイプであるが、機能的にはM3タイプを介する収縮が主と考えられている。

下部尿路症状

前立腺肥大症の臨床症状としては、下部尿路症状があらわれます。
これらの症状は前立腺肥大症に固有のものではなく、他の泌尿器疾患、神経疾患など様々な疾患・病態においてもみられます。

主な下部尿路症状には、排尿症状、畜尿症状および排尿後障害があります。
【排尿症状】
主に尿が出にくくなる症状をさし、排尿期にみられる。
・尿勢低下(尿の勢いが弱い)
・尿線分割、尿線散乱(排尿中に尿線が分割・散乱する)、尿線途絶(尿線が1回以上途切れる)
・排尿遅延(排尿開始まで時間がかかる)
・腹圧排尿(排尿の開始や維持に力がいる)
・終末滴下(排尿終了が遅延し、尿が滴下する程度まで尿流が低下する)

【畜尿症状】
主に尿が溜めにくくなる症状をさし、畜尿期にみられる。
・昼間頻尿(日中の排尿回数が多い)、夜間頻尿(夜間に尿意のため起きてしまう)
・尿意切迫感(急に生じる強い尿意)
・尿失禁(尿が不随意に漏れる)、膀胱知覚

【排尿後症状】
排尿直後にみられる症状をさす。
・残尿感(排尿後に膀胱が完全に空になっていない感じがする)
・排尿後尿滴下(排尿直後、不随意に尿が漏れる)

PSA

血清前立腺特異抗原(PSA)測定は、前立腺癌の診断感度が高い検査であり、前立腺癌を診断するためには必須の検査です。
血清PSA値は前立腺体積と正の関連性があり、また、前立腺肥大症の進行や症状の発現などと関連しています。
そのため、前立腺癌との鑑別や前立腺体積の推定に有用であり、前立腺肥大症の基本評価として測定されることが推奨されています。
【基準値】4.0ng/mL以下
【留意点】
・前立腺肥大症では軽度上昇がみられるが、特異度は低い為、PSA値だけでは前立腺癌との鑑別はできない
・5α還元酵素阻害剤、抗アンドロゲン薬の投与により、血清PSA低値を示すため、これらの薬剤を投与した場合は、実測値の2倍値を目安に評価する
・血清PSA値を低下させる薬剤を服用中に、血清PSA値が低値であっても持続的に上昇する症例は、前立腺癌や服薬不順守を疑う必要がある

前立腺肥大症と前立腺癌

前立腺癌は、尿道から離れた辺縁領域に好発します。
前立腺癌の発生部位は尿道から遠いため、初期には臨床症状はほとんどみられませんが、腫瘍体積の増加に伴って、排尿困難、頻尿、残尿感などの前立腺肥大症に類似した下部尿路症状を生じます。
前立腺癌は、前立腺肥大症の好発年齢とほぼ一致し、また癌特有の症状がないことから、臨床症状からの鑑別は困難とされています。
なお、前立腺癌は、癌の進行に伴って骨やリンパ節などへ浸潤・転移しますが、前立腺肥大症は転移せず、悪性腫瘍に進行することはないと考えられています。

前立腺肥大症治療薬

前立腺肥大症治療薬には、①α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)、②5α還元酵素阻害薬、③抗アンドロゲン薬、④その他の薬(植物エキス、アミノ酸製剤、漢方薬など)があります。
前立腺肥大症に対する最も一般的な薬剤であるα1遮断薬に加え、5α還元酵素阻害薬も有効性を支持する根拠が十分にあることから推奨されています。

α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)

α1遮断薬は、前立腺による機能的閉塞を減少させ、症状を軽減させます。
α1遮断薬は症状の改善が比較的早くからみられ、薬物療法の中心薬剤として用いられます。

【作用機序】
前立腺および膀胱頸部に分布するα1受容体を遮断する⇒前立腺および膀胱頸部の平滑筋を弛緩させ、尿道抵抗を減少させる
【特徴】
タムスロシン、ナフトピジル、シロドシンはα1A受容体を選択的に阻害するため、前立腺特異性が高く、起立性低血圧などの血管作動性の副作用が起こりにくい。
テラゾシン、ウラピジル、ブラゾシンは血管のα1受容体にも作用するため、高血圧症への適応があある。
【α1受容体】
交感神経系のα1受容体は全身に分布しており、眼、血管、消化管、膀胱、前立腺などの収縮に関与しています。
α1アドレナリン受容体は、α1A、α1B、α1Dのサブタイプにわかれており、組織によって高発現しているサブタイプが異なります。
前立腺平滑筋には、α1A受容体が多く発現していることが確認されています。
【術中虹彩緊張低下症候群】
α1遮断薬を服用中または過去に服用経験のある患者さんにおいて、白内障の手術中に術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)が観察されたとの報告があります。
IFISは縮瞳症候群の一種で、瞳孔拡張が不十分になると手術操作の障害となり、白内障手術中の合併症を増加させる恐れがあります。
これはα1遮断薬が、虹彩散大筋に発現するα1A受容体にも作用するために生じると考えられています。
対処としては、投薬時に白内障手術を控えているかを確認し、必要に応じて眼科医へその旨を伝えるよう指導することが大切です。

5α還元酵素阻害薬

5α還元酵素阻害薬は、前立腺を縮小させ機械的障害を改善します。
前立腺体積30mL以上の明らかな前立腺腫大がみられる場合は本剤を単独投与し、比較的重症な症例に対してはα1遮断薬との併用が考慮されます。
【作用機序】
テストステロンを活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)へ変換する5α還元酵素を阻害する
【特徴】
投与初期から改善がみられる場合もあるが、治療効果を評価するために通常は6か月間の治療を要する
前立腺がんの存在下であっても、投与6か月後に血清PSA値を約50%減少させる。なお、血清PSA値は本剤投与中止後、6か月以内に投与開始前の値に戻る
【主な副作用】
性欲減退、乳房障害(女性化乳房、乳頭痛など)、勃起障害、射精障害など

前立腺はアンドロゲンの標的臓器であり、主に精巣で産生されるアンドロゲンの1つであるテストステロンは、前立腺、精嚢、外性器などで5α還元酵素により、さらに活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換される。
テストステロンは脳下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)の刺激によって、精巣のライディッヒ細胞で産生され、以下の3つの経路を介して作用を発揮する。
①遊離テストステロンがアンドロゲン受容体(AR)に結合して作用
②5α還元酵素によりDHTに変換され、ARに結合して作用
③アロマターゼ酵素によりエストラジオールに変換され、エストロゲン受容体に結合して作用
生理作用としては、男性の性分化および男性思春期の変化を引き起こし、性欲、エネルギー、筋肉量、筋・骨強度に寄与するといわれる。
精巣で産生されたテストステロンは、前立腺の細胞に取り込まれ、細胞質にある5α還元酵素によりDHTに代謝される。
DHTはテストステロンより高親和性にARに結合、複合体を形成してより効率よく遺伝子発現を活性化する。
この複合体がDNAと結合、転写されmRNAの合成を促す。
その結果、前立腺の増殖や機能発現に関与するタンパク質の産生が促され、テストステロンの作用が発現する。

5α還元酵素にはⅠ型・Ⅱ型の2つのアイソザイムが存在し、前立腺にはその両方が発現している。
Ⅰ型は主に非生殖組織と男女両方で生殖器の皮膚に存在する。
デュタステリドは5α還元酵素の両アイソザイムを阻害し、前立腺組織内のDHT濃度を低下させることにより、前立腺容積を減少させる。
その結果、尿流が改善し頻尿や残尿感などの下部尿路症状が軽減される。

抗アンドロゲン薬は、精巣でのテストステロン生合成を抑制するとともに、血液中のテストステロンが前立腺細胞に取り込まれるのも抑制する。
そのため、血清テストステロン値を低下させるので、高頻度で勃起障害や性欲低下などの性機能障害の副作用がみられる。
これに対しデュタステリドは、血清のテストステロン値は低下させないので、性機能障害の副作用は少ないといえる。
前立腺肥大症患者に6か月間経口投与したとき、血清中テストステロン濃度は18.8%増加したとの報告がある。

抗アンドロゲン薬

抗アンドロゲン薬は合成黄体ホルモンを主成分とします。
抗アンドロゲン薬は前立腺肥大症に対する有効性を支持する根拠が十分ではなく、また高頻度で性機能障害を生じるため、慎重な症例選択と観察を要します。
【作用機序】
テストステロンの分泌、テストステロンの前立腺細胞への取込、DHTの男性ホルモン受容体への結合などを阻害する
【特徴】
投与期間は16週を基準とし、効果不十分の場合は漫然と使用を継続しない
【主な副作用】
性欲減退、女性型乳房、勃起障害、射精障害など

前立腺肥大症と健康食品

健康食品の多くは、費用が保険適応とならず、患者さんの負担が大きいとされています。
また、有効成分を複数含む配合剤が多く、その有効性や安全性の影響も不明です。
前立腺肥大症診療ガイドラインでは、健康食品の摂取は勧められていません。

【前立腺肥大症に対する効果が検討されている健康食品】
ビタミンE、セレン、亜鉛、イソフラボン、ノコギリヤシ

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