2018年12月15日更新.3,344記事.5,773,881文字.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

認知症の勉強まとめ

スポンサーリンク


分類商品名一般名
コリンエステラーゼ阻害薬アリセプトドネペジル塩酸塩
コリンエステラーゼ阻害薬レミニールガランタミン臭化水素酸塩
コリンエステラーゼ阻害薬イクセロン/リバスタッチリバスチグミン
NMDA受容体アンタゴニストメマリーメマンチン塩酸塩

認知症

認知症は、記憶障害などの認知機能障害を中核症状とする慢性あるいは進行性の疾患です。
また、幻覚や妄想、徘徊、暴力などの行動・心理症状(BPSD:behavioral and psychological symptoms of dementia)を周辺症状として伴うことも多く、社会生活や日常生活に支障をきたし、患者のみならず介護者への負担も大きいことが問題とされています。

●中核症状(脳の器質的障害により生じる)
記憶障害:物事が思い出せない、新しいことを覚えられない
遂行機能障害:物事を計画し、順序立てて行動できない
見当識障害:時間、場所、人など、自分を取り巻く状況がわからなくなる
失語:言葉を忘れる、話がまとまらない
失行:慣れた動作・操作ができない
失認:物や人を識別できない

●周辺症状(心因性・環境因性に生じる)
心理症状:幻覚・妄想、不安・抑うつ、易怒性など
行動症状:徘徊、暴力、暴言など

記憶障害

記憶は、①記銘(情報を覚える)、②把持(情報を蓄える)、③想起(情報を思い出す)の3つの過程から成り立つとされています。
加齢による物忘れでは、脳の生理的な機能低下によって想起が障害されており、一時的に物事が思い出せない程度にとどまります。
一方、認知症では、初期には主に記銘が障害されるため、「食事をした」「どこかへ出掛けた」などの少し前の出来事(近時記憶、エピソード記憶)を忘れてしまうことが多くみられます。
なお、発症する以前に長期間かけて形成された記憶(意味記憶、手続き記憶など)は比較的維持されることが多いですが、症状の進行に伴い次第に障害されます。

 加齢による物忘れ認知症
忘れ方物忘れは一時的であとで思い出す出来事自体を忘れ思い出せない
物忘れの自覚ある(気にする)ない
見当識年や日時はわかる年や日時、場所がわからない
進行あまり変化しない徐々に悪化する

認知症の種類

認知症や認知症様症状を示す疾患は多岐にわたりますが、主要な認知症疾患としてアルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症(DLB)、血管性認知症(VaD)などが知られています。
高齢者においては、複数の認知症疾患を合併していることが多く、多様な臨床像が認められます。

アルツハイマー病(AD)

ADは、最も頻度の高い認知症であり、65歳以上の認知症患者の約60%を占めるとされています。
一般に、記憶障害を中心として、緩徐に症状が進行します。
ADでは、海馬を含む側頭葉内側の脳萎縮や、頭頂葉・側頭葉などの血流低下がみられます。
脳内にはアミロイドβを主成分とする老人斑の沈着や、リン酸化タウ蛋白の蓄積による神経原線維変化がみられます。

【海馬】記憶の中枢
【頭頂葉】運動機能、皮膚の感覚、外界の認識、空間把握などに関与
【側頭葉】聴覚、記憶、発語などに関与
【後頭葉】視覚などに関与
【前頭葉】意欲、感情、 思考、実行機能などに関与

アルツハイマー病の症状
□進行性の記憶障害がみられる(初期から認められる)。
 「食事をしたこと自体を忘れる」「慣れ親しんだものを思い出せない」など
□進行性の見当識障害があらわれる。
 「道に迷う」「今が何時かわからない」「人が識別できない」など
□行動・心理症状があらわれる。
 「怒りっぽくなる」「ものを盗られたと妄想する」「徘徊する」など
□日常生活動作に支障をきたし、介助が必要となる。
 「道具が使えない」「服が着られない」「会話ができなくなる」など

レビー小体型認知症(DLB)

DLBは、ADと同様に認知機能低下を中心として緩徐に症状が進行しますが、特徴的な症状として注意や覚醒レベルのムラ、幻視、パーキンソニズムなどを示します。
DLBでは、大脳皮質や海馬における軽度の脳萎縮や、頭頂葉・後頭葉の血流低下がみられます。
脳内にはαシヌクレインを主成分とするレビー小体の沈着がみられます。

レビー小体型認知症の症状
□進行性の記憶障害がみられる(初期には目立たないことも多い)。
□注意や覚醒レベルにムラがあり、認知機能が顕著に変動する。  
 「頭がハッキリしているときと、ぼーっとしているときを繰り返す」など
□具体的な内容の幻視(人、小動物、虫など)が、繰り返しあらわれる。
□誘因のないパーキンソニズムがあらわれる。           
 「筋肉が動かしづらい」「歩行が障害され転倒しやすい」など 

血管性認知症(VaD)

VaDは、脳卒中などの脳血管障害により生じる認知症です。主な症状として、記憶障害や遂行機能障害、意欲・自発性の低下などがあらわれますが、その程度や進行は脳血管障害の生じた部位や重症度に応じて多様です。

VaDでは、認知症症状の要因となる脳血管障害(梗塞、出血、低灌流など)がみられます。
約半数を占める病型である皮質下性VaD(小血管病変性認知症)では、ラクナ梗塞が脳の広範囲にわたって緩徐に生じます。
認知症は主に前頭葉の病変によるものとされており、前頭葉の血流低下がみられます。

血管性認知症の症状
□記憶障害は、急速に発症・進行することがある。
□記憶力は低下するが、病識や判断力は比較的保持される。
□言語能力が障害される(文法理解力は一般に低下しない)。
 「復唱・呼称できない」「用語が思い出せない」など 
□感情や行動が障害される。
 「行動が遅れる」「うつや不安が強い」など 
□自律神経症状があらわれる。
 「排尿症状が生じる」「便秘になる」「起立性めまいが生じる」など

アルツハイマー病の原因

【コリン仮説】
アセチルコリン(ACh)は興奮性神経伝達物質であり、神経細胞上のACh受容体を刺激することで神経細胞を活性化させ、認知機能に関与しています。
ADでは、前脳基底核から大脳新皮質(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)や海馬に投射するコリン作動性神経の変性・脱落に伴い、脳内のACh濃度が低下しているため、認知機能が障害されると考えられています
【グルタミン酸仮説】
グルタミン酸は興奮性神経伝達物質であり、神経細胞上のNMDA受容体を刺激することで神経細胞を活性化させ、学習や記憶の形成に関与しています。
ADでは、NMDA受容体が過剰に活性化されており、過剰なCa2+流入により器質的な神経障害が生じると考えられています。また、過剰なCa2+流入は正常な神経伝達シグナルを妨害し、記憶の形成を阻害すると考えられています。

認知症治療薬

非薬物療法の効果が不十分な場合や症状が進行している場合には、抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬)を中心とした薬物療法を併用します。

抗認知症薬は、中核症状の進行を緩和・抑制する薬剤です。これらを使用する際は、副作用に注意して低用量から投与を開始し、維持量まで漸増します。
非薬物療法や抗認知症薬による治療によって改善されない周辺症状に対しては、抗精神病薬や抗てんかん薬、抗うつ薬、漢方薬などの併用が考慮されます(いずれも保険適用外)。認知症患者の多くは高齢者であるため、使用に際しては肝・腎機能、合併症、併用薬を考慮し、低用量から投与を開始するなどの注意を払います。

NMDA受容体拮抗薬

NMDA受容体拮抗薬は、NMDA受容体に結合しCa2+の流入量を正常に近づけることで、神経保護を促すと考えられています。
脳内の興奮性刺激を制御するため、興奮・攻撃性の周辺症状の予防・改善に有効とされています。

脳内の神経細胞の障害は過剰なグルタミン酸が脳内のグルタミン酸の受容体(NMDA受容体)に結合することによりカルシウムイオンが神経細胞に流入し、神経細胞にダメージをあたえると考えられています。
この薬は興奮性の神経伝達に関与するNMDA受容体に結合して、過剰なグルタミン酸がNMDA受容体に結合するのを抑え、多くのカルシウムイオンが神経細胞に流入するのを防いで神経細胞を守り、物忘れ・自分のいる場所や時間がわからなくなる(見当識障害)・反抗的・ウロウロ歩き回る(徘徊)などのアルツハイマー型認知症症状の軽減や進行を遅らせる薬です。

NMDA受容体拮抗薬

グルタミン酸受容体サブタイプの1つであるN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗を作用機序とするアルツハイマー型認知症の治療剤である。
NMDA受容体拮抗薬のメマンチンは、中等度~重症アルツハイマー病患者に対する認知、日常生活動作、臨床全般評価の改善が報告されている。
しかし、軽度~中等度の患者に対する治療効果は境界線上にあると報告されている。
ドネペジルをすでに内服している中等度~重症患者に対するメマンチン併用療法は、認知、日常生活動作、全般評価、行動の改善効果が報告されている。

コリンエステラーゼ阻害薬

コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬は、アセチルコリン(ACh)を分解する酵素を阻害することで脳内のACh濃度を上昇させると考えられています。脳内の神経伝達が活性化するため、抑うつなどの周辺症状にも有効とされています。
この薬は記憶に関連して、脳内神経に刺激を伝達する物質(アセチルコリン)を分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ)の働きを抑え、アセチルコリンを増やして神経の刺激の伝達をよくし、脳内の神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体に結合して受容体の働きをよくし、物忘れ・自分のいる場所や時間がわからなくなる(見当識障害)・反抗的・ウロウロ歩き回る(徘徊)などのアルツハイマー型認知症症状の軽減や進行を遅らせる薬です。

脳循環代謝改善薬

この薬は脳の血管を拡げ、脳の血流量を増加するとともに、血液の流れや代謝を改善することにより、脳細胞への酸素や栄養の供給を促し、脳の働きを活発にし、頭痛、頭重、めまい、しびれ、意欲低下などの症状を改善する薬です。

シンメトレル

この薬は脳内神経に刺激を伝達する物質(ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)の働きを調節して脳の働きを活発にし意欲を高め、自発性を改善する薬です。

周辺症状に使われる薬

●抗精神病薬
・抗精神病薬は鎮静作用があり、幻覚、妄想、不安、興奮などの心理症状のほか、暴力などの行動症状にも効果が期待される。ただし、抗精神病薬の投与は副作用のリスクを伴うことから、易怒性や興奮などの激しい周辺症状により患者自身や周囲に危険が及ぶ場合などに限って使用することが望ましい。
・錐体外路症状などの副作用が少なく、比較的安全性の高い非定型抗精神病薬が主な選択肢となる。
・抗精神病薬を使用する際は、過鎮静、転倒、骨折、起立性低血圧、認知機能の低下などに注意する。

●抗てんかん薬
・一部の抗てんかん薬は気分安定作用があり、感情の起伏の激しい周辺症状に効果が期待される。
・バルプロ酸やカルバマゼピンなどの抗てんかん薬を使用する際は、薬物相互作用や中毒症状などに注意が必要であり、定期的なモニタリングを行う。

●抗うつ薬
・抗うつ薬は、抑うつなどの低活動な周辺症状に対して効果が期待される。
・認知機能への影響を考慮し、抗コリン作用の弱い選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が主な選択肢となる。
・抗うつ薬を使用する際は、投与初期における消化器症状や、急激な休薬による離脱症状に注意する。

●漢方薬
・易怒性、興奮、攻撃性などの激しい周辺症状には、抑肝散が考慮される(より虚弱な患者には、抑肝散陳皮半夏を用いることもある)。
・抑うつには加味帰脾湯、無気力や倦怠感には補中益気湯、これらに伴う食欲不振には六君子湯などが考慮される。
・上記の漢方薬は甘草を含むため、偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、浮腫など)やミオパチーなどに注意する。

スポンサーリンク

コメントを書く

カテゴリ

プロフィール

IMG_0670
名前:yakuzaic
職業:管理薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
勤務地:さくらんぼ県
好きな言葉:三流の自覚持って社会人失格の自覚持ってプロの仕事しましょう
follow us in feedly

最新の記事

人気の記事

最近のコメント

  • 11/27 デパス0.25mg? (ジョン) 0.25役に立ってます。 過眠症でモディオダール服用し、副...

検索

スポンサーリンク

リンク

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ